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184:引かれよう。

 あ、そうだ。

 この糸で布を織れば、私達でも問題無い肌触りの物が出来るんじゃないかな?

 今着てる服も十分に滑らかなんだけど、流石に人間用の布だけあって少しだけ気になる事もあるし。


 というか今更だけどこの布地、買ったらいくらするんだろ……

 うん、気にしないでおこう。忘れよう。



「よしラキ、めーちゃんにも挨拶して…… って自分じゃ行けないか。おいで、連れてってあげる」


 いや、行けなくも無いだろうけどね。

 なんせクモだし、木の表面を登っていくくらい余裕でこなすだろうし。

 あ、でも上半身で重心が高くなってそうだけど、その辺はどうなんだろ。


 地面に垂直な壁とかに貼り付いてると、落ちなかったとしても上半身がすっごいのけ反っちゃいそうだ。

 ……ちょっとどうなるか見てみたい気もするけど、とりあえず今は止めておこう。



 レティさんの手の上から私の手に移ってもらい、めーちゃんの肩の上まで運ぶ。

 おお、めーちゃんの上に置いてみたらもっと小っちゃく見えるな。

 めーちゃんから見れば、お米の幅と同じくらいしか無いんじゃないか?


「わー、ちっちゃーい。んー、うん、よろしくねー」


 あ、やっぱり見えるんだ。

 【視力強化】のおかげかな。


「そうだ、巣、作るー? んー、そっかー」


 なんでそう自分に巣を作らせようとするんだ。

 【樹人】特有の親愛の証か何かなのか。

 まぁ断られたみたいだけどさ。



「んー、そうなんだー。うん、うん。それじゃ、これから頑張ってねー」


 だからなんで会話出来るんだ。

 いや、本当に出来てるのかさえ全然判らないけどさ。


 挨拶が終わったラキが元気に私の足元に駆け戻ってきたので、そっと手に乗せてテーブルに戻る。

 よくできました的な感じで頭をそっと撫でてあげよう。

 私より小っちゃいんだから力加減に気を付けないと…… ってあれ?


 なんか指先でそっと撫でたけどラキの首が微動だにしない。

 っていうか「なにー?」って振り向いた動きで、私の指が普通に押し戻された。

 ちょっと待って、もしかしてラキちゃん私よりよっぽど頑丈なんじゃない?



 元々このサイズで普通に生きてる生物なんだし、当然なのかな……?

 んー、でもお腹をぷにっとつついてみたらサイズ相応の滑らかなお肌だ。

 ……押してみても全くへこませられないけど。


 「あはは、くすぐったいよー」って感じでニコニコ笑いながら指に抱き着いてきた。

 うーん、力も私よりかなり強くない?


 あ、でも確かにそれなりの強度が無いとあの加減速は出来ないか。

 私があのスピードで動いたら多分どこか折れるし。

 私が気を遣わないといけない様な柔らかさだと、走っただけで腰が折れて下半身の上に横たわっちゃうよね。



 私の指に抱き着いたままなので、少し持ち上げてプラプラ揺らしてみる。

 よく解んないけどなんか楽しそうだな。腰大丈夫?


 一応落ちてしまわない様に手の上で揺らしつつ移動して、テーブルに着いたのでそっと降ろしてあげる。

 よーし、存分に走り回っていいぞー。

 カップとかに潰されない様に気を付けるんだよ。




「さて、それじゃスキルの方も見て…… おはようございます、モニカさん」


 いつの間にかテーブルの端から顔の上半分だけ出して、ふんすふんすと鼻息荒くラキとぴーちゃんを見つめているモニカさんが居た。

 ……今テーブルに戻ってきた時には居なかったと思うんだけど。


 あ、めっちゃラキに威嚇されてる。

 うーん、今度は大丈夫だよーって気軽に言えないな……

 相手が相手だけに、本当に大丈夫か怪しい所だし。



「おはようございます白雪様。あのあの、こちらの方々は」


「新しい召喚獣のぴーちゃんとラキですよ。はいはい、ラキちゃん怯えてますから離れましょうね」


「う、申し訳ございません……」


 ラキちゃんの頑張って威嚇する姿に流石に申し訳なくなったのか、大人しく一歩下がるモニカさん。

 ほらほら、ちゃんと引いてくれたから威嚇は止めてあげようね。

 ぴーちゃんもあんまり睨まないの。でもちっちゃいラキを守ってあげるのは良い子だぞ。


 しかし凄いな。

 カトリーヌさんの時と違って、今度は軽くだけどちゃんと睨んでるのにモニカさんは全く動じてない。

 経験の差なのか、小さい物好きを拗らせすぎてるのか……



「はいぴーちゃんラキちゃんご挨拶。……ほらラキ、ちゃんと挨拶しなきゃダメだよー」


 私の言葉にしぶしぶと頭を下げるラキ。

 シルク、ちゃんと挨拶したんだからラキの後ろから忍び寄るのは止めてあげようね。


「モニカと申します。よろしくお願いします。うぅ、いつまでも見ていたいくらいですが仕事に行かなければ……」


「あ、後でまた呼ばせてもらいますのでその時はお願いしますねー」


「はい。たとえどの様な作業をしていても、即座に中断して駆け付けます」


「いえ、区切りの良い所までやってくれて良いんで。というかやってくれないと困るんで」


 庭師なんだし、あくまでも庭園の状態を第一に考えないと駄目だろう。

 私達のお手伝いなんておまけみたいな物なんだから。

 まぁモニカさん的には逆なんだろうけどさ。




「さて、それじゃ気を取り直してスキルを見てみようか」


「いつの間に来てたんだろうねぇ…… うん、何か出てるかな?」


 ぱぱぱっと一通り確認してみる。

 あ、なんか【妖精魔法】に新しい魔法が出てる。

 他のスキルの魔法もいくつか出てるけど、特に目新しい物は無いな。

 そろそろ【空間魔法】にも何か出て欲しいけど、あんまり使ってないし仕方ないか。



「えっと、なんか【妖精魔法】が増えてたよ」


「お、今度は何をやらかすんだ?」


「いや、【妖精魔法】の効果自体は割とまともなのが殆どだったじゃない。【自爆】以外だけど……」


 あ、【流星】もか。

 でもあれ多分流れ星を光らせるだけの魔法だよね。

 迂闊に連射したらごく稀に本当に降ってきそうだから試さないけど。



「それもそうか。で、何だった?」


「んーと、【白の誘惑(フェアリーダスト)】と【紡ぐ者(ノーブルストリング)】って名前だね」


「……なぁ、一つ目からヤバい気配がビンビン感じられるんだけど」


「いや、うん…… 無かった事にしたい気もするんだけど、新しい魔法が出たら役場で見せるって約束してるしなぁ……」


「どちらにせよ知っておいた方が良いでしょうし、見るしか無いのでは?」


「そーそー。もしかしたら良い物かもしれないじゃん?」


「うん、仕方ないか。それじゃぽちっと」



──────────────────────────────

 【白の誘惑(フェアリーダスト)】 [ON]/ OFF

  発動中、翅の表面に水溶性の粉末を生じさせ続ける。

  自動的に発生する粉末は特別な効果は持たず、体内に取り込んでも害は無い。

  MPを消費する事により特殊効果を持つ粉末を追加で発生させることができ、量、効果の種類と数、効果の強弱や部位の指定などの調整が可能。

──────────────────────────────



「……昨日の翅から零れる光が鱗粉みたいだと思ってたら、本当になんか出てたみたい……」


「鱗粉じゃなくて粉末ってなってるよ?」


「鱗粉は文字の通り鱗状になっているので、こちらはそうではないという事でしょうね。水溶性とありますので水を弾く為でもないのでしょうし」


「ほほー。んー、普通に出るのは無害だけど、なんか効果も付けられるみたいだねー」


「なんか『効果の種類』の所だけ色が違うし、押してみたら一覧が出るんじゃないか?」


「うぅ、嫌な予感がするから見たくないんだけど…… そうもいかないよねぇ」



──────────────────────────────

 【鎮痛】【鎮静】【興奮】【集中】【発汗】【止汗】

 【睡眠】【魅了】【幻覚】【麻痺(弛緩)】【麻痺(硬直)】

 【盲目】【沈黙】【失聴】【腐敗】【石化】

──────────────────────────────



 ……うん。うん? うん、これ駄目な奴だ。


「雪ちゃん、見せて見せてー」


「あ、こら、消そうとするなよ。どうせろくでもないのは解ってるんだから、大人しく見せてみろって」


「まーカトちゃんの嬉しそうな顔からして猛毒だったんだろうけどねー」


 ……諦めて引き延ばし、レティさんに手渡す。



「……これは酷い」


「わー…… 種類と()ってあったし、単体でも酷いのに複合できるんだよね、これ……」


「ま、まーお薬にもなるみたいだしー……」


 くそぅ、エリちゃんですら引き気味にフォローし始めたよ!



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