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VRMMOで妖精さん  作者: しぇる


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181/3635

181:親近感を抱こう。

「エリちゃん、皆にお茶を淹れてあげてくれるかな?」


「いえすまーむ」


「いや、普通に返事してくれて良いから」


「あいあいさー」


「それは普通なのかな…… まぁ良いや」


 ログインしてすぐにぐったりしてるアヤメさんのために、お茶をお願いする。

 返事については突っ込むたびに色んなパターンで返されそうなのでスルーしよう。

 何通りあるのかちょっと気にはなるけど。



 お湯を沸かすのも時間がかかるし、昨日更地にしたところは建設予定地だから使わないでおこう。

 という訳で今日も湯気に苦戦しつつ、やかんをお湯で満たしていく。


「うー、あっつい」


「雪ちゃん、それって【座標指定】でやかんの上から発動するようにしたら良いんじゃないの?」


「はっ…… あー、うん、そうだね……」


 うぅ、そういえば【座標指定】するために【空間魔法】の申請したんだったよ……

 私の熱気との戦いは完全に無駄だった。




「ふー。ありがと、少しは落ち着いたよ」


 おっ、お茶の力で復活したか。

 めーちゃんにお水を上げるのを切り上げ、お礼に手を振って応えながらテーブルに戻る。


「いやー、お疲れさま」


「もう、ほんとなんなんだあの人……」


「エリちゃん、教えてあげなかったの?」


「いやー、教える暇も無かったんだよねー」


「挨拶してついポロッと『凄い体ですねぇ』って言ったらショータイムの始まりだよ……」


「いやもう、本当にお疲れさま……」


 その程度で始まるなら私も結構ギリギリだったっぽいな……

 まぁあのタイミングだと、始まってもすぐにライカさんに止められそうだけど。




「あ、そうだ雪ちゃん。スキルは見た?」


「まだ。見ようと思ったら外が騒がしかったから出てきたんだよ」


「悪いね…… いや、あれ私悪くないよな、うん」


「どう考えても被害者側だと思うよ。さてと」


 とりあえず召喚獣パネルから…… あ、契約数が二つと同時召喚数が一つ増えてる。



「契約の空きが二つと一緒に呼べる数が一つ増えてたよ」


「へー。あ、それじゃ新しい種族とか出てないかな?」


「今から見るとこー」


 という訳で契約ボタンをポチっとな。


 >パサーハーピー

 >アオオビアラクネ


 おおう、なんかいきなり魔物っぽくなった。

 一つ前がハムスターだったのに何だこの変わり様は。

 とりあえず広げて皆に見せてみよう。



「おー、なんか今までと違うねー」


「でもさ、これ普通のハーピーとかじゃないんじゃないか?」


「開発側もだんだんと隠す気が無くなってきている気がしますね」


「嫌な事言わないでよー。解っててスルーしてるんだから」


 私だってまともに強い魔物が呼べるなんて、もう思ってないやい。



「パサーとアオオビ、ですか。まぁ呼んでみれば解る事ですわね」


「そーそー。案ずるより産むが易しって言うじゃん? ズルッと産んじゃいなよー」


「いや、別に産む訳じゃないけどさ……」


 まぁどちらにせよ呼んでみる事には変わりないので、サクッと進めてしまおう。

 えーと、とりあえずパサーハーピーからだな。


 ん、名前ー、名前かー。んー、どうしよ。

 ……よし、決めた。「ぴーちゃん」で。


「よーし、召喚っと」


 ぽちっと決定すると、ふわっと光が集まって来て人間くらいのサイズに纏まっ……

 たと思ったらヒュンっと私に近いサイズまで縮んだ。

 うん、だろうね。素直に喜ばせてはくれないよね。




「わー、かわいー!」


「いや可愛いっていうか、威圧感が凄いんだけど……」


 光が収まると、私と同じ縮尺で私より十センチほど背の低い女の子が立っていた。

 丁度私とカトリーヌさんの間くらいかな?

 ハーピーって言うだけあって肩の所から先が羽になってて、膝から先も鳥っぽい足だ。


 女の子っていうか見た目の年齢は私より上っぽいな。

 大体お姉ちゃんと同じくらいに見える。


 で、アヤメさんが言ってるのは目つきの事かな?

 全体的な雰囲気は物静かで大人しいお姉さんって感じなんだけど、なんていうか目つきだけが尋常じゃなく鋭い。



「えー、可愛いじゃない。現実の雪ちゃんによく似てるよー」


 あ、私に似てるって言われたらちょっとだけほわっとなった。

 喜んでくれてるのかな。


「何、本物の白雪ってこんな怖いの? こんなのが向かいから歩いて来たら、ビビッて道の端に寄っちゃいそうなんだけど」


「うぅ、おかげ様で道が歩きやすいよ……」


 学校の廊下を歩いてたら端に寄られて、更に目を伏せられるオプション付きだよ。

 申し訳なくて自分が端っこを歩く癖が付いちゃったくらいだ。

 ……両側の端に居たのが片方に寄るだけなんだけどね。



「パサー、パサー…… あぁ、そうでした。スズメの学名が確かそんな感じでしたね」


「あー、確かに…… あ、ありがとね。うん、色とか柄がスズメっぽいね。ついでにサイズもだけど」


 レティさんの言葉を聞いたお姉ちゃんが良く見ようと顔を近づけたら、よく見える様にバサッと羽を広げて見せてあげるぴーちゃん。

 さっき褒められたっていうか似てるって言ってもらえたお礼かな?


 あぁ、確かにスズメってこれくらいの大きさだっけ。

 でもそれじゃ普通の人間サイズのハーピーが居なくなるんじゃ……

 いや、多分他のハーピーはそんなの関係無く普通の大きさなんだろうな。




「ところで雪ちゃん、この子のお名前は?」


「ぴーちゃん」


「えっと、それは呼び名とかじゃなくて?」


「うん、ぴーちゃん」


 召喚獣の名前が表示されたパネルをグイッと広げて見せる。



「ほんとだ…… うん、まぁ雪ちゃんだしね。私はミヤコって言うの。よろしくね、ぴーちゃん」


 どういう意味だ。いや解ってるけどさ。

 いいじゃん可愛いじゃん。


 差し出されたお姉ちゃんの指を、両方の羽で挟んで握手を交わすぴーちゃん。

 同じ様にレティさん、アヤメさん、エリちゃんも続く。


 カトリーヌさんはどうしたのかと思ったら、少しだけ離れた所に居た。

 あー、皆と違って同じサイズだからなぁ。

 あ、でもあれ怖がってるんじゃないな。むしろそれを悦んでぞくぞくしてる感じだ。

 ……私に似た目つきでああなられると、ちょっと複雑だな。



「カトリーヌさーん?」


「あっ、はい。よろしくお願いしますわね、ぴー様。私はカトリーヒッ!?」


 どうしたカトリーヒさん。

 名乗る途中に怯えた様な声を出すからおかしな感じになったぞ。

 あ、なんかぴーちゃんが少しむすっとしてる。



「お、おい、なんでいきなり凄い殺気を放ち始めたんだ……?」


「えっ? ちょっとむっとしてるだけだと思うよ? 雪ちゃんが怒ったらもっと怖いもん」


「最後がちょっと気になるけど、お姉ちゃんの言う通りだね。えーと、多分『私の名前はぴーじゃなくてぴーちゃんだもん』って感じかな?」


「ぴっ」


 あ、鳴けるんだ。

 まぁポチや珠も鳴けるんだし、不思議では無いか。

 いや、逆に言葉じゃなくて鳴き声なのが不思議ではあるけど、そういう物なんだろう。

 それは置いといて、私の言葉に頷いたので呼び名に不満が有ったので間違いないらしい。



「そうらしいよ、カトリーヌさん。名前を勝手に縮めたのが不満だったみたい」


「も、申し訳ございません、ぴーちゃん様…… どうかお許しを……」


 いや、ちゃん様って。そうなる様な名前を付けたのは私だけどさ。

 しかしそんなに怯えなくてもなぁ。

 ぴーちゃんのつま先に触れそうなくらいの距離でカタカタ震えながら土下座してる。


 しかしカトリーヌさんにしては珍しい反応だな。

 許容範囲を振りきっちゃったのか? ちょっとへこむんだけど。


 あ、でも何気に余裕は残ってそう。

 あわよくば踏みつけられようとしてそうな位置取りだし。

 もしくは足でもなんでも舐めますって意思表示か?

 でもそっちだと怯えてるのかいつも通りなのか判りづらいな。



「いや、ぴーちゃんも別に怒ってる訳じゃないから。ほら、平伏してないで起きよう」


 むしろカトリーヌさんの反応にちょっと落ち込んでる気がするよ。

 この子、私と同じ空気を感じるぞ。


 カトリーヌさんの肩に手を添え、引っ張って無理矢理起き上がらせる。


「は、はい。……あぁ、今ほどこのゲームの仕様に感謝したことは有りませんわ」


「え、いきなりどうしたの?」


「いえ、今は替えの下着を持っておりませんので。仕様次第では洗って乾かしてこねばならなくなる所でしたわ」


 ……なんでちょっと誇らしげな顔で言うんだ。

 あぁほら、ぴーちゃんが余計に落ち込んじゃうじゃないの。



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