表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRMMOで妖精さん  作者: しぇる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

175/3633

175:解散しよう。

 呆れて見ていると突然室内にズゾッという音が響く。

 驚いて何の音かと振り向くと、恥ずかしそうに口元に手を当てて頬を染めながら口をもむもむと動かすソニアさんが居た。


 えーっと……

 カトリーヌさんの頭を潰した後、せっかくだから残りも食べちゃおうと思ってちゅるっと啜ろうとしたら、思った以上に脆くて吸い込みで崩れて、空気と一緒に吸い込んで音が出ちゃった?

 うん、多分大体そんな所だろう。


「んぅ……」


 こくんと飲み込み、やっちゃったとばかりに小さく唸る。

 恥ずかしそうだし触れないでおいてあげよう。

 別にそこまで恥ずかしがるほど、おかしな事をやった訳じゃないしね。


 いやその、啜ろうとして音が立つって事はだけど。

 何を啜ったかはこの際置いておこう。




 そうこうする内にコレットさんが角を拭き終わり、カトリーヌさんを全て拭い取ってライカさんに鏡を渡す。


「おぉー、良いねぇ良いねぇ。こりゃぶつけたりして汚さない様に気を付けちゃうねぇー」


「ふふっ。お前がその様な事を気にしていたら、部下達に何か悪い物でも食べたのかなどと言われるのではないか?」


「うーん、まぁあいつらなら言うだろうねぇ……」


 ほー、軽口叩けるくらいには職場の雰囲気良いんだな。

 ……流石に本気で言われる訳じゃないよね?

 綺麗になった角を見れば、すぐに察せるだろうし。

 いや、角を綺麗にしてるって所でも言われるのかもしれないけど。


 しかし、ぼやきながらも表情は嬉しそうなままだ。

 そんなに喜んでもらえれば、カトリーヌさんも嬉しいだろうな。



「工事中に土で汚れない様に、即席のカバーを作りましょうか?」


「おぉ、そいつは嬉しいね。今までは適当に拭いておしまいだったから、そういうのは持ってないんだよねぇ。頼むよ、モニカちゃん」


 そういえば、こんな立派な角が有ったらヘルメットとか被れないよね。

 まぁそういう種族向けの兜とかが作られてるか。

 角付きの種族だけ頭の防具無しって事は無いだろうし。



 モニカさんが抱きしめられない様に警戒しつつ、角の採寸に向かう。

 うーむ、ライカさんはかなり脚が長い方だけどあの身長差だからな。

 座っててもモニカさんの顔の前に頭があって、丁度測りやすそうな高さだ。


 採寸した数値をメモに取り、角の形状をササッとスケッチして奥の部屋に向かう。

 おー、一瞬で書いてたけど大体あってたな。

 私は絵とか描けないから、ああいうのって尊敬しちゃうなぁ。




「さて、まぁ完成までそうかかるまいが、もう良い時間だ。じきにライカの部下達も来るだろうし、我々は役場へ戻るとしよう」


 うん、始めたのも暗くなってからだったしね。

 っていうか私も一度抜けてご飯食べないと。

 後片付けも含めるとそこまでのんびり出来なさそうだな。


「ソニア、棺桶に入りたまえ。図書室まで運んであげよう」


「は、はい…… お願い、します……」


 ライカさんのお膝から降り、もそもそと棺桶に戻っていくソニアさん。

 可愛い子が離れていって、ライカさんが凄い残念そうな顔してるな。

 まぁいつまでもそうしてる訳にも行かないだろう。



 棺桶の中から蓋を持ち、本体にはめ込むように乗せている。

 ん? 閉まったけどなんか片方がちょっと浮いてるな。

 あ、浮いてたのがパタッと落ちた。


 ……中から「うぅ……」って聞こえる。またちょっとどこかを挟んだのか。

 暗闇での体の強度から考えると、挟んでも別に痛くはないだろうに。


 蓋を閉め終えた棺桶をコレットさんがそっと持ち上げ、肩に担ぐように乗せる。

 ほっそりしたコレットさんの肩に、まるで軽い張りぼての様な気安さで大きな棺桶が乗ってて凄いアンバランスな絵面だなぁ。



「それでは、また会おう」


「雪さん、ありがと、ね…… お部屋、出来たらまた、よろしく……」


 ライカさんに手を振り庭に出て、改めて別れの挨拶をする。

 コレットさんは無言で頭だけを下げている。

 今は肩に棺桶が乗ってるし、普段通りに下げたらソニアさんが大変な事になるもんね。



「はーい。有難う御座いましたー…… って待って待ってアリア様。太郎を一緒に連れて行かないでください」


「ちぃ、バレたか」


 頭に太郎を乗せたまま庭から出て行こうとするアリア様を引き止め、シルクに抱っこさせて回収する。

 人んちの子を攫っていっちゃいけません。


 太郎ももうちょっとこう、何か自己主張しようよ。

 連れて行かれちゃうよって鳴き声上げてみたりさ。


 でも間違ってもアリア様の頭に攻撃したりしちゃいけないよ。

 いや、多分しようとした瞬間にコレットさんに排除されるんだろうけど……



「さて、それじゃ私もお風呂入ってログアウトしよっかな」


「ほいほい。そんじゃ私も一旦撤収しますかねー」


 庭のテーブルに戻ってエリちゃんと一息つく。

 シルクが机に降ろした太郎をつんつんしつつ返事をするエリちゃん。

 こら、正面からぷにっと押してころんとひっくり返すのはやめてあげなさい。

 ……なんか太郎も楽しんでるっぽいから良いか。嫌がってる感覚は来ないし。


 あ、そうだ。


「エリちゃん、お茶って淹れられる?」


「ん? まー人並み程度には出来るけど、どしたのー?」


「お風呂入れてもらって良いかな」


「んーと、つながりがよく解んないんだけど」


 あぁ、まぁそうなるか。

 説明するよりシルクに家を開けてもらって見せた方が早いな。



「シルク、二階を持ち上げてちょうだい。えーと、これが私のお風呂」


 なんだか凄い端的な説明をしてしまった。

 説明になってない気もするけど、まぁ察せるだろう。


「おー、妖精っぽーい。なるほど、紅茶に浸かりたいってわけねー」


 良かった、ちゃんと解ってくれた。



「ちょっと前倒しな気もするけど、ここでの初仕事をお願いしてもいいかな?」


「ご主人様のおーせのままにー。で、道具どこー?」


 おどけて恭しく言ったけど、即座にフランクになったな……


「シルク、出してあげて。お湯は私が出すよ」


「場所を教えてもらえれば私が出すけどー? まー次からでいっか」


 最初にやかんを出してもらって、そこに手から熱湯を注いで一杯にする。

 ……うおお、返って来る湯気があっつい。

 くそぅ、魔法で出してるんだから軽減してくれても……

 いや、私の魔力で出してるから魔法防御を貫通しちゃってるのか。

 でも下手に弱めるとぬるくなっちゃいそうだしなぁ。諦めるか……



「それじゃエリちゃんの分も入れて良いから、二杯分でお願いね。私はその間にエリちゃんの分の蜜を取って来るよ」


「りょうかーい。って蜜くれるのー? やったー」


「砂糖がないからね。シルク、スプーン一本持って付いて来てー」


 エリちゃんが砂糖を入れる人かは知らないけど、蜜は喜んでたし有った方が良いだろう。

 実際今もやったーって言ったし。


 シルクをアシスタントにしてスプーンに蜜を乗せていく。

 あれ、そういえばめーちゃんが静かだな。

 ログアウトするって話の時に何か言いそうなものだけど…… もう寝ちゃってるのかな?


 まぁいいや。とりあえず集まったし戻ろう。

 丁度自分の分も淹れ終わった所みたいだな。



「はーい、ご褒美だよー」


「わーい。ありがたきしあわせー」


 うん、お互いごっこ遊びみたいなノリで言ってるけど蜜が嬉しいのは本当みたいだな。

 喜んでもらえるとこっちも嬉しくなるよ。


「それじゃ私はお風呂入ってログアウトするから、そっちも飲んだら適当に片づけておいてくれたら良いよ」


「妖精さんのティーカップでの入浴シーンかー。見てていい?」


「いや、良いわけないでしょ……」


「あはは。冗談冗談。それじゃ、お疲れさまー」


 これがモニカさんだったら本気で言ってるだろうけど、流石にエリちゃんはそこまでじゃないだろう。



「お疲れさまー。そうだ、太郎も洗ってあげようか?」


 あ、ぷいってそっぽむかれた。

 うーむ、太郎はお風呂は嫌いか。

 まぁ洗う意味も必要も無いから、別に良いんだけどね。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ