表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRMMOで妖精さん  作者: しぇる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

172/3636

172:感想を聞こう。

「あっと、樹液はどうでした?」


 口に含んだところで私が話しかけたから、感想を言う前に違う話が挟まってしまった。


「うむ、中々良い物だな。【樹人】の樹液は知ってはいたが、実際に飲むのは初めてだ」


 あぁ、【樹人】もちゃんと知られてる種族だしな。

 本国には色んな情報があるか。


 飲んだ事が無いっていうのは何となく意外な気がするけど、あまり流通してない物なのかな。

 単に機会が無かっただけかもしれないけど。



「ほのかな甘みと香りが心地良いな。これならばいくらでも飲めそうだ」


「売れそうですかね?」


「うむ、十分に売り物になると思うぞ。……が、どのくらい採れる物なのだ?」


「あぁ、確かにそこは問題ですね。それと採取方法も考えないと」


「む? 今のはどうやって採ってきたのだ?」


 あれ? あぁ、中は中で作業してたから聞こえてないのか。

 というか私の声は【聴覚強化】を取得してやっと聞こえる声量だし、取得して間もないアリア様じゃ作業してなくても厳しいか。



「水を流し込んだら出て来たし中で溜まってるんだろうと思って、お腹の中にお邪魔してきました」


「ふむ。……お腹の中の水と言われると、少し微妙な気分になるな」


「解らなくもないですが、まぁ飲ませる為の樹液っぽかったし大丈夫じゃないですかね?」


「何処から採取しようと同じ樹液であるのだし、害が無いのは解っているから良いのだがな」


 うん、気分の問題だよね。

 飲食物だと特に重要なポイントではあるけど。



「飲ませる為ってのはなんでー?」


「多分あれ、樹液を狙ってきた生き物を食べる為に溜めてあるんじゃないかな」


「あー、食虫植物みたいな?」


「そうそう。中から返事する時に胃壁をぺちぺち叩いたら、入り口が閉じて樹液が一杯出て来たし」


「溺れさせちゃうのかー」


「底に開きそうな所が有ったし、溺死させた後はそっちに流してから食べちゃうのかな?」


「ふむ……」


「カトリーヌさん、最低でもめーちゃんに許可取ってから入ってね?」


 エリちゃんの質問に答えてたら横からカトリーヌさんの呟きが。

 なんか興味深げな顔になってるから、一応釘を刺しておかねば。

 



「採取方法か…… 普通の木であれば穴を開け、そこに管を挿し込んで容器に繋げておくのだがな」


「あー、確かに切断面に染み出てきてましたね」


「……切ったのか?」


「めーちゃんが元の場所に居た時に小指を一本。あ、一応言っておきますけどめーちゃんが言い出した事ですからね」


 意味も無く攻撃した訳でも、私が奪い取ろうとした訳でもないぞ。



「何でまたそんな事を?」


「いや、枝を伸ばしてから切って木材として売れないかなって話が出まして。で、私達って死んだら消えるじゃないですか」


「うむ」


「で、切断した部分が消えるかどうか試そうって事で」


「それ、ふつーの人は諦めて他の金策探すよね」


「いや、そもそも普通の人はあんまり自分の体を切り落として売ろうと思わないけどね。まぁそういう訳でばっさりといきました」



「どうなったのです?」


「とりあえず、一度私の物になった部分は消えなかったね。条件を分ける為に四つに切り分けたけど、一度も持たなかった所だけが消えてたよ」


「へー。でもそれ、知っても活かせる場面無さそう」


「まぁね。切られるのも結構痛かったみたいだし」


「白雪さん白雪さん、どんな感じなのか私ぃぃぁぁあぁぁ……」


 いそいそと小指を差し出してくるので、掴んで横に思いっきり捻っておいた。

 小さなパキッという音と、カトリーヌさんの喜びの声が響く。



「もー、痛覚が違うだろうし比べようも無いでしょ?」


「ユッキー、躊躇なく行くねー」


「いやー…… 何て言うか、この人は満足させておいた方が話が進むと言うか……」


「それもそうかー。んー、ちょっと『わー冷血ー』とか言ってみようかと思ったけど」


 チラッと視線を移すエリちゃん。


「けど?」


「アヤメちゃんの二の舞になりたくないからやめとくよー」


 ……ほんとだ。シルクがエリちゃんを見つめながら、手をわきわきさせてる。

 止めないとお前を気持ちよくしてやるぞってどういう脅しだ。



「ま、やりすぎるなって言ってあるから大丈夫だとは思うけどね」


「そっか。それじゃ」


「やっていいよって言おうか?」


「やめとこー」


「……済まんが、話を進めて良いかな?」


 苦笑しながらアリア様が声をかけてくる。

 しまった、また横に逸れてた。



「ま、穴を開けてみるなり口からパイプを通すなり、色々試してみれば良いだろう。何も今日明日必要になる訳でなし」


「そうですね。あ、そうだ。カトリーヌさん、もう一つ」


「はい、なんでしょう?」


 折れ曲がった指を反対の手で押さえてまっすぐに伸ばし、震えながら笑顔で満喫しているカトリーヌさんに声をかける。

 普通に喋ってるけど流石に呼吸が荒い。

 ……いや、あれ単に興奮してるだけだな。



「お昼に言ってた小屋を建ててもらう事になったから。エリちゃんもそこに住んでもらうよ」


「あぁ、作業等の為ですね」


「代金は今月分の蜜の売上げを渡すから、カトリーヌさんは気にしなくていいよー」


 ていうか私の庭に私が小屋を建ててもらうんだから、カトリーヌさんが払う義務は無いしね。


「いえ、私も払わせてください。ライカさん、私への支払いをそのまま建築費に当てて頂けますか?」


「カトリーヌ、ライカにお前の声は届かんぞ。ライカ、今回のカトリーヌへの支払いも小屋の建築費に当ててくれとの事だ」


「はいよ。偶然とは言え角を綺麗にして貰った恩も有るし、精一杯やらせてもらうよ」


 むぅ、言っても取り下げないだろうしありがたく受け取るとしようか……

 というかあんまり張り切られると怖いぞ。

 まぁ用地も狭いし、あんまり無茶は出来ないから大丈夫だろう。




「さて、これくらいかな? それじゃカトリーヌさん、もう死んでいいよ」


「台詞だけ聞くと凄い事言ってるよね」


「いやまぁ、うん……」


 せめて行ってきていいよとかにするべきだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ