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170:閉じ込められよう。

 ふと忘れていた事を思い出し、めーちゃんの口からひょこっと顔を出してジョージさんに声をかける。


「あ、そうだジョージさん」


「あん? どうした」


「汲んで来た樹液を入れるコップを用意しておいてくれませんか?」


「あぁ、解った。取って来るわ」


 私の魔力桶のままじゃ飲みづらいだろうしね。

 あと、ちゃんとめーちゃんの外で【座標指定】しておかなきゃ。

 一応中からでも出来ると思うけど、見えない以上はそこに何もない保証が無いし。


 見えないまま大雑把にあの辺ーって指定して、そこはまだめーちゃんの中でしたなんて事になったら大変だからね。

 私が肉団子になるだけならともかく、めーちゃんも無事じゃ済まないかもしれない。



「さて、それじゃ気を取り直して行ってきまーす」


 やる事を済ませて再度口の中へ。

 うむ、虫歯一つ無い綺麗な歯並びだな。感心感心。

 いや、そもそも虫歯とかまで再現されてはいないだろうけどさ。多分だけど。


 足元の舌は、流石に味蕾までは作られてないな。

 表面は普通にすべすべの木製だ。


「しっかり木だけど、この舌って一応動かせるんだよなぁ……」


「んー?」


 私のつぶやきを聞いためーちゃんが、実際に舌を動かして見せてくれる。

 でも、その上には私が立ってる訳で。



「おわーっ! ちょっ、待って待って、潰れるから!」


「んー、大丈夫だよー(あいおーうあおー)くっつけないからー(うーうえあいああー)


 足場がゆっくりと上がっていき、立っていられなくなってめーちゃんの舌の上に四つん這いになる。

 そのつもりは無いだろうと解ってても、結構怖いものだね。

 くっつけないっていうけど、もう四つん這いどころか伏せないと背中ついちゃうくらい近いぞ?


 うん、止まってるうちに根元の方に這って行こう。

 そっちなら挟み潰される事も無いだろう。


「っていうかめーちゃん、普通に喋れるよね」


「んー。お遊びー」


「まぁ別に構わないんだけどさ」


 大体解るし。



 舌先を持ち上げただけなので、少し進めば多少は広くなっている様だ。

 おー、歯と舌は模してあるけど、喉の辺りになると普通に木の洞って感じになってるんだな。


「んー、なんか喉がごわごわするー」


「あ、ごめんごめん。さっさと入っちゃおうか」


 おーって感じで周りをぺたぺた触ってたら、めーちゃんに違和感を与えてしまったらしい。

 この先がどうなってるか解んないし、私には上下も関係ないから頭から入っていくとしよう。




 喉の穴から下って行き、少し長い通路を抜けると開けた空間に出た。

 少しだけ横が長い、丸っこい空洞だな。

 なんか胃っぽいな。それじゃさっき通ってきたのは食道か?

 別になんでもいいか。


 おー、樹液が一杯溜まってる。

 胃壁の上側からジワジワと樹液がにじみ出てるのが溜まっていってるんだな。

 でもこれ今は半分くらいとはいえ、そのまま放っておいたら溢れちゃいそうだけどどうなってるんだろう?


 下側に穴もないし。なんか少し下がってる所があるのは見えるけど、そこにも何も無い。

 なんか他の所とは違う感じがするけど、特に何が有る訳でも無い様だ。

 にじみ出てるのと同じ感じで染み出て行ってるのかな。

 いや、そもそも出てきてる所まで行ったらそれ以上は出ないのか?



「ここ、なんで樹液が溜まってるんだろうね」


「んー、解んないー。まぁ好きなだけ汲んで行っていいよー」


「ありがと。まぁ私が一度に持てる量なんて知れてるけどね」


 ここですら見えてるのかもしれないけど、一応動きが解るように胃壁をペチペチ叩いて返事をする。

 ……ん? なんか上からギギギって音と、水面に揺れが……



「ってちょっとめーちゃん、何で入り口閉めちゃうの!?」


「んー? あれー? 私、何もしてないのにー」


 音に釣られて上を見ると、入ってきた穴が狭まっていってピタッと閉じてしまった。

 なんか下の窪んだところと同じ感じになったけど……

 まさか、あっちも開いて下に続いちゃうのか?


 どうでもいい心配だけど幹にそんな一杯空洞あって大丈夫か?

 いや大丈夫だろうから余計なお世話だけどさ。

 でも木材としての価値は……いやそんなしょうもない事考えてる場合じゃないわこれ。



「私が内側叩いちゃったから、何か反射的なものが始めっちゃったのかな……」


「んー、そうなのかもー。大丈夫ー?」


「まぁ私は転移できるからってうわぁ! 一杯出てきたー!」


 まるで水責めみたいに胃壁からどばーっと樹液が溢れ出て来た。

 いや、どばーっとって言っても私から見ればだけど。

 空洞全体で見れば蛇口からお風呂に水を張ってるくらいの勢いだし、しばらくの猶予はあるだろう。

 ていうか水責めみたいって思ったけど、まんま水責めだよねこれ。




「ふー、溺れちゃうかと思った」


 溜まりきる前に【魔力武具】で手桶を生成して、持てるだけの量を掬い取って脱出した。

 カトリーヌさんのよだれの時と同じ様にめーちゃん側の法則が適用されていたのか、樹液の粘度が高くて突っ込んだ桶を引き上げるのに苦労したよ。


 両手で持ち手を掴んで【浮遊】で思いっきり引っ張ったら、樹液から抜けたのは良いけど勢い余って胃壁に背中から突っ込んだ。

 それに反応して更に溢れる量は増えるわ、翅が壁に付いた樹液で貼り付けられて動けなくなるわで割と本気で焦ったよ。

 あれ樹液が出てくる所に当たってたらそのまま沈められてただろうし、まだマシな方か。


 危うく【妖精】のメープル漬けが出来る所だった。

 まぁあの後どうなるかは解んないけどね。

 あれが【樹人】の罠なら、あの後は下の窪みから一緒に排水されて腸みたいなところで消化液とか出されて吸収されたりするかもしれないし。


 まぁ流石に試してみたいとは思わないな。

 そもそも水責めの時点で意識は途切れるから試しても仕方ないか。

 いや、終わってからめーちゃんに聞けば解るのか?

 どちらにしろ私はやらないけどね。



「んー、ごめんねー」


「いやいや、めーちゃんは悪くないよ。体がそうなってるんだから仕方ないし」


「んー、そう言ってもらえると助かるー」


 実際わざとやった訳でも無いし、そもそも私が胃壁を叩いたから始まったんだもんね。

 あ、ジョージさんに樹液を渡さないと。


「ジョージさん、コップをお願いします」


「おう、ご苦労さん」


 ジョージさんの差し出したコップの上で、手桶の持ち手に口を付け吸い取る。

 あ、落ちていく樹液は普通だ。めーちゃんの外に出したから私側の法則で動いてるのかな。

 よく解らないなぁ、本当に。



「あ、そうだ。めーちゃん、貰った分と出させちゃった分のお水上げるー」


「わー、ありがとー」


 あの出た分はまた体内に戻るんだろうけど、まぁ飲ませておいて困る事も無いだろう。

 飲み過ぎにならない様に、めーちゃんの体の側で調整するだろうしね。


 しかし何にせよ、自分が出した物を美味しい美味しいと喜んでもらえるのは嬉しいもんだね。

 よーし、せっかくだから【施肥】と【姫蛍】もサービスしちゃうぞー。



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