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169:潜り込もう。

 そうこうしていると南の方角から魔力の塊が近づいてくるのを感じた。

 あぁ、確かに判りやすいな。これでモニカさんは門まで出迎えに来てたのか。


 いや、待てよ? 【妖精】の私でさえ門の辺りで感知したのに、モニカさんは門で待ってたって事は更に範囲広いんだよな。

 どれだけレベル高いんだ、この人達……

 まぁ敵に回さなければその分頼もしいし、別に良いか。



「ソニアちゃん、カトリーヌさん帰ってきたしタオルかぶっとこう」


「あ、うん……」


「へー、判るもんなんだねー」


「モニカさんと違って、私じゃ入り口の門の辺りが限界だけどね」


「いやいや。数日前に習得したばかりなのにそこまで探知できるのであれば、十分すぎるくらいであろうよ」


「そうですか? 比較対象が凄すぎるだけなのかな」


「うむ。こんな奴でもそれなりの経験は積んでいるからな」


 いや、こんな奴て。

 言いたくなるのも解らなくはないけどさ。

 横でモニカさんが「酷い言われようです」とか言ってるけど、アリア様は完全にスルーしてるな。




「うーっす、来ましたぜー」


 今度はノックせずに普通に入って来るジョージさん。

 まぁタオルかぶっとけって言ったのも聞いてただろうしね。


「ご迷惑をおかけしました……」


 あ、しょんぼりして帰ってきた。

 流石に悪いとは思ってくれてたか。



「その…… ついつい立派なお角に惹かれてしまいまして…… 申し訳ございませんでした」


「あー、いいよいいよ。そう気にしなさんな。あんたのおかげで、角がこんなに綺麗になったしね」


 言い訳じみた事を言いつつ、ライカさんの顔の前に飛んで行って頭を下げるカトリーヌさん。

 ライカさんは聞こえてはいないだろうけど、何を言ったかは判るので普通に許してあげた。



「あら、本当ですわ。見違えましたわねぇ」


「なんかカトリーヌさんの中身をコレットさんが拭き取ったら、凄く綺麗になってたんだよね」


「【妖精】の体にはその様な効果が……」


「で、そういう」


「あのさ、カトリーヌちゃん」


「あ、本人から聞いた方が良いよね」


 言っておこうと思ったらライカさんの声がかぶせられた。

 それに応じて、カトリーヌさん共々ライカさんの方を見る。



「お願いがあるんだけど…… 出来れば、もう片方もやってくれないか?」


「良いんですの!? 望む所ですわぁー!」


「ほら、片方だけだとバランスが悪いしって聞いてないねこれ」


 お願いされると同時に、目を輝かせてライカさんの角に抱き着きに行った。

 うーん、良い人とかそういうの関係無かったな。変態性だけで足りてた。



「ちょ、ちょっと待ってカトリーヌちゃん。この体勢じゃちょっと辛いよ。動けないから離れとくれ」


「あっ、も、申し訳ありません。興奮しすぎましたわ……」


 頼むよと頭を少し下げた所に抱き着かれて、半端に首を下げた状態で動けなくされたライカさん。

 流石にあのまま続けるのは厳しいだろう。


「カトリーヌさん、聞こえてないからちゃんと見える位置から動きで謝った方がいいよー」


「あ、そうでしたわ。すみませんでした」


 カトリーヌさんは私の言葉を聞いて、ライカさんの顔の前に戻って頭を下げた。

 なんか皆【聴覚強化】取っちゃうから、普通は聞こえないっていうの忘れそうになるんだよなぁ。




「あ、そうだ。死ぬ前に先に言っておこうか」


「冥土の土産という奴ですの?」


「違う」


 ていうかそれ、すぐ帰って来れる人に言うのは何か違うだろう。


「ライカ、少し待ってやってくれ。カトリーヌにいない間の事を話しておく様だ」


「あいよ」



「まずエリちゃんがここで働く事になりました」


「よろしくねー」


「よろしくお願いします。モニカさんの部下という事ですの?」


「いや、モニカさんとは別口かな。ここに住んでる人の為の雑用係…… お手伝いさんみたいなものだね」


「なんでも聞くよー」


「エリちゃん、そんな事言ったら」


「良いのですか!?」


「……早まっちゃったかなー?」



「手遅れだね。カトリーヌさん、あんまり無茶は言っちゃ駄目だよ?」


「解っておりますわ。あぁ、何をお願い致しましょう……」


「あ、多分駄目だこれ。まぁ嫌な事に従う必要は無いし、あんまり気にしなくて大丈夫か」


「まぁ流石に奴隷って訳じゃないしねー。無理な事は無理っていうから大丈夫だよー」


「うんうん。あ、そういえばエリちゃんのお給料どうしよっか」


 モニカさんと違ってエリちゃんは国が雇う訳じゃないから、自分で払わないとね。

 なんか黙ってたらそのままアリア様が給与手続きしちゃいそうだもの。

 ……気付かれたかみたいな顔してるし。



「んー、住まわせて貰えるだけで十分だけどなー」


「いや、そういう訳には行かないでしょ。まぁ収入は色々あるし、そこから出せば問題無いか」


「私もお世話になりますし、払わせて頂きますわ」


「ん、私も…… あぅ、でも、お金無い……」


 外からめーちゃんの「んー、あー、私もだー。どーしよー?」って声が。

 動けないから遠くから喋る羽目になって、微妙に不便だな。

 まぁお互い聞こえるから、大丈夫ではあるんだけどさ。



「む? ソニアは掘り出した物を売れば良いではないか。しかしエイス…… 解った解った、そう拗ねるな。めーちゃんはどうしたものかな?」


 またしても外から「むー。めーちゃんだよぅ」って訂正が容赦なく飛んできた。

 変な所で強情だな。


「【樹人】を登録したのが先程であれば、実をつけるのはまだ先であろうしなぁ」


 スキルが育つと何かなるのか……

 でもめーちゃんカエデだぞって思ったけど、どうせ全く関係無い果実とかできるんだろうな。

 このゲームだし。




「それまでは私の蜜みたいに、樹液を売ってみるのはどうでしょう?」


「あー、あれ美味しかったねー」


「あれは煮詰めた後みたいな感じだけどね。樹液はほのかに甘みのある水って感じだったよ」


 まぁあれは私が出した水で薄まってたし、原液はもう少し甘いのかもしれないけどね。



「へぇ。っていうか飲んだ事あるんだ」


「まぁ偶然。めーちゃんが水が欲しいって口を開けたから注ぎ込んでみたら、中から水と一緒に溢れ出して来ちゃったんだよね」


「ふむ。試しに飲ませてもらえるかな?」


「あ、それじゃ採ってきますね」


 外から「んー、いーよー?」って聞こえてきたのでアリア様に断って外に……出られない。

 あ、ジョージさんありがとう。



「どうすんだ?」


「直接汲んで来ようかと。めーちゃん、おっきく口開けてー」


「んー」


「おいおい、大丈夫なのかぁ?」


「まぁ引っかかったりしても転移出来るんで、なんとかなるんじゃないですかね」


「まぁそうだな。相手は木だし、急に中で押し潰される事も無いか」


「【空間魔法】が無かったら出られなくなる可能性は有りますけどね。それじゃ行ってきます」


いただきまーす(いああいあーう)


「いや、食べられる訳じゃないけどね……っと」


 めーちゃんの唇に手をかけ、口の中に潜り込んでいく。

 うん、流石に狭いな。

 まぁ翅は広げられないけど、動くくらいは問題なさそうだね。

 上顎に頭が付きそうになるけど、舌の上に立つことくらいは出来る広さだし。


 ……っていうか今の、別に口で喋ってないんだから普通に言えたよね?



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