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160:残してしまおう。

「ムぅ、おノコしサレるっテのハけッコウくやシイもンだネー」


「そうは言うけど、さすがに生のお芋はなぁ……」


 さっき食べたからMPには困ってないし、無理に食べなきゃって訳じゃないんだよね。

 勿体なくはあるけど…… って別に口から吸わなきゃいいのか。


「ウわー、ナンかそレきモチわるイー。ちカラがヌケてクー」


「あー、これだとそっちが嫌なのね。どうしたもんかな…… あ、めーちゃんコレ食べる?」


 手から吸ってみたらエリちゃんから文句が出てしまった。

 そういえばめーちゃんも生き物から栄養取るんだったなと思って勧めてみる。

 めーちゃんの味覚だとどうなのかは判らないけど。



「んー? んー、食べてみるのはいいんだけどー、私から行ったらその布、穴あいちゃうよー?」


「あー、根っこだと突き刺しちゃうのか」


「ソレはこマルなー。ちょットたカカったしネー」


「ふむ。ではモニカ、掬って根にかけてやるが良い。肥料だと思えば素手でもどうという事は無いだろう」


「いえ、有りますが…… ご命令とあれば従わざるを得ませんね」


「ア、かタホウもちアゲテ、こボシてくれタラいーヨー」


「んー。間に布がなきゃ、遠慮なく刺せるー」


「そうですか。それでは」


 ちょっとホッとしてるな。

 まぁ流石のモニカさんも素手で行くのはちょっと嫌だったか。

 ……私のペーストなら遠慮なく素手で行くだろうけどね。



「あー、サスのチョッとまッテー? ガンばっテそっチイくかラー」


「んー、わかったー。おー、ちょっと動いてる。すごいなー」


「ふふふ、まだまだですわね」


「いや、カトリーヌさんがおかしいだけだからね? 多分だけど」


 エリちゃんはまだちょっとずつズリズリ這い寄るくらいしか動けないみたいだ。

 初めて溶けたのに、逃げるお姉ちゃんを捕食する程に動ける方が異常なんだよ。

 いや食べてないけど。



「アー、だめダー。モうモタなイから、サシていいヨー」


「んー。いただきまーす」


 あぁ、時間切れか。

 半分くらいしか近寄れなかったな。まぁそれだけでも十分凄いと思うけど。


 おおう、びっくりした。

 いきなりエリちゃんから根っこが三本突き出て来たぞ。

 あ、エリちゃんが自分から根っこにまとわりついていってる。

 急がないといけないくらいにHP減ってるのかな。



「おアじハドうかナー?」


「んー、普通の土よりはおいしーよー」


「ツチかー。マァマズいよリハいいカナー。あ、イッてキマーす」


 あ、消えた。

 三割くらい無駄になっちゃったっぽいな。


 ん? 布の上に銅貨が何枚か落ちてる。

 あぁ、デスペナの所持品ドロップか。

 鞄が有った所に落ちたのかな? まぁ後で自分で拾うだろう。




「さてさて。それじゃエリちゃんの用事も済んだし、今度はソニアさんだね」


「ひっ…… 私も、食べられる……?」


「いやいや、食べないよ。っていうかソニアさんもどっちかっていうと捕食者側じゃない?」


「うむ、【吸血鬼】であるしな。む、あちらも終わった様だ」


 あ、ほんとだ。よかった、ちゃんと自分で歩いてるよ。



「いやー、ほんとにスッキリしたわー。あれ、二人は?」


「ご飯の支度とか有るから先にログアウトしてるってさ」


「あー、そうか。ってか私もやらないとな……」


 納得した直後に面倒臭げな顔になったアヤメさんは、アリア様に挨拶してログアウトしていった。

 凄い元気になってたっぽくて良かったよ。



「さて、あちらが終わったなら棺桶を運び込むとしよう。閉め切ってしまえばソニアも出る事が出来るだろうからな」


「では私が。少々揺れますのでお気を付けください」


「待て、頭に乗せたままでは危ないだろう」


 あれ、いつの間にか太郎がモニカさんの頭上に乗り移ってた。

 レティさんがログアウトする前に置いたのかな?


「あぁっ、姫様ずるいです」


「何を言うか、お前も今まで可愛がっていたのだろうが。よしよし、怖くないぞー」


 アリア様の手の平に移動して、指先でなでなでされる太郎。

 モニカさんは不満げだけど、確かに棺桶と頭で挟まれたりしたら大変だしね。



「済みません、わざわざ……」


「いえ、これも仕事ですのでお気になさらず。……それに出ていて頂いた方が、私も嬉しいですし」


 ぼそっと言うなよ。やっぱり気に入ってたのか。

 っていうか小さく言っても皆耳良いから聞こえてるぞ。


 屋内に入るとなるとめーちゃんが置き去りになっちゃうけど、仕方ないか。

 ソニアさんとしても、棺桶のままでアリア様とお話するのは気が引けるだろうし。



「そういえば白雪、服はどうした?」


「あー、脱いでシルクに預けてたんですけど、持たせたの忘れて先に帰らせちゃったんですよね」


「確かに下着姿のままでしたわね」


「いや、これが【妖精】のちゃんとした服だから。下着じゃないから」


 そこは譲れない。百歩譲っても水着と言いなさい。



「それじゃめーちゃん、また後で」


「うん。頑張ってねー」


 頑張るって言うのかね? まぁいいか。




 棺桶を管理室に運び込んで、片づけをしていたコレットさんとシルクにも手伝ってもらって外の光を遮断する。


「よし、準備出来たぞ。ソニア、出てくるが良い」


「あ、ありがとう、ございます…… お手数、かけます……」


 お、蓋が開いた。うん、やっぱ可愛らしい人だな。

 ちょっとおどおどしてるのが保護欲をそそる感じだ。

 いや、私が偉い人を巻き込んだから余計になんだろうけどさ。



「あ…… だ、大丈夫だ……」


「おー、良かった。照明も駄目だったらどうしようかと」


「私は、暗くても見える、けど…… 私だけ見えても、仕方ないしね……」


「うむ、暗闇の中では結局そちらの顔が見えぬ事に変わり無いからな。それで、悩みとは?」


「あ、はい…… その、今こうして頂いた様に、普通では夜間ですら棺桶から出られない体で、一体どう過ごせばいい物かと……」


 うん、棺桶の中でごろごろするゲームってのもある意味斬新かもしれないけど。



「ふむ。本国であれば同族の町に行く事を勧めるんだがな」


「へぇ、【吸血鬼】の町なんてあるんですね」


「うむ。幾つかあるが、どれも鉱物資源の豊富な山に窓の無い城を建て、その下に穴を掘り地下に町を作っている」


「文字通りの城下町ですわね」


 あぁうん、城の下の町ね。



「主な産業は掘り出される鉱石や、それを素材とした加工品の輸出だな。豊富な魔力と強靭な肉体を生かして、質の良い武具を作る事で知られている」


「なんていうかその、吸血鬼っぽく無いですね……」


「む、何故だ? 【吸血鬼】とはそういうものだろう」


 むぅ、世界が変われば常識も変わる…… いやそういう問題かこれ。




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