1598:綺麗に飾ろう飾られよう。
「まぁカトリーヌが素晴らしいとか言ってる時点で、ろくな事じゃないってのは想像がつくけどな」
「あー……」
うん、今も「これ」扱いされてちょっと嬉しそうにしてる様な人だもんね。
「物は考えよう、ですわ」
「どんな事でも楽しんだ方が得だって意味じゃ、間違っちゃいないかもしれないけどな……」
それは確かにそうかもしれないけどさ。
現にアヤメさん、変な状況でも割と順応して楽しんでる時も有ったし。
いや、諦めてるだけとも言うけど。
「という事で白雪さん、そちらに立っていただけますか?」
「えっ」
ちょっと待って巻き込まれるとか聞いてないんだけど。
「まぁ…… うん、諦めろ」
「仕方ないか…… うちの子の言い出した事だしね……」
どう考えても私は加害者側だし、被害者に説得されちゃしょうがない。
でもせめて、一応こっちにも確認をしてほしかったよ。
諦めて台の上に出来るだけゆっくりと着地……したけど、やっぱりアヤメさんからだとかなりの揺れが発生したっぽい。
流石に二百倍近いサイズ差だと、気を付けてても無理なものは無理だと思うんだ。。
「『同じ場所に立つと余計にデカく見えるな……』だそうですわ」
あー、なんとなく解る。
地面っていう共通の基準が出来るから……って事より、単に足下からだと見上げるって感じが強くなるからかな?
まぁ上を見てるのは同じなんだけどね。
「ってかそれ、伝える必要有るやつ?」
「いえ」
……なんでわざわざ独り言を中継してくるんだ。
多分、特に意味は無いんだろうけどさ。
「それではラキ様、補助をお願いいたしますわ」
あ、はーいって感じで走って来たラキに捕獲された。
元気なのは良い事だけど、もうちょっと丁寧に扱ってあげた方が良いんじゃないかな。
しかしここに立たされたのは良いけど、何をするつもりなんだろうか。
家までとかなんとか言ってた気がするし、昨日みたいに踏まされる訳じゃないとは思うけど。
「大変そうだねぇ」
む、背後から完全に他人事気分なロシェさんが。
まぁ実際他人事なんだけど。
「そう思うんだったら代わってくれても良いんですよ?」
「やだ」
即答されてしまった。
いや、まぁ当然だけど。
「少しの間、動かないでいていただけますか?」
「解ったって言うしかないんでしょ?」
「えぇ、まぁそうなのですが」
嫌だって言ったら聞いてくれるんだろうけど、今更言ってもしょうがないからなぁ。
「失礼しますわ」
「ふぉっ……」
そっと右足の爪先を触られて、変な声が出た。
解ってて意識してても、やっぱりちょっとくすぐったいな。
「……何それ」
「布ですわ」
「いやそれは解るけど」
何重にも折りたたんで狭くて分厚い帯状になった布を折り曲げて、人差し指だけを吊るす様な形に差し込んできた。
指の上側に出た部分をそのまま左右に広げて置かれ、持ち上げられた一本だけが布の上に乗せられてる状態に。
「大体想像は付いたんだけど、逃げちゃ駄目かな?」
「駄目なんじゃない?」
「ですよね」
うん、解ってはいるんだ。
でも一応抵抗の意思は示しておきたいんだ。
「雪ちゃん、武士に二言は無いんだよ」
「なった覚えは全く無いよ……」
こちとら一部を除けば、どこにでもいるただの女子高生だよ。
……うん、一部を除けばだけど。
まぁどちらにせよ、間違いなく武士とかそういうのではないよ。
「ではラキ様、こちらへどうぞ」
カトリーヌさんに呼ばれたラキが、アヤメさんを抱えたまま元気にトコトコ走って来る。
遠くて全然見えないけど、私と同じ様な諦めの表情なんだろうな……
……うん、多分これ予想通りのやつだな。
持って来られたアヤメさん、人差し指の爪の上にぺとっと大の字で仰向けに置かれてるし。
「お二人とも、危険は有りませんが動かない様にお願いしますね」
「はーい……」
足下のカトリーヌさんに再度念を押されて、元気の無い返事を返しておく。
私の爪とその上に乗ったアヤメさんを覆うように、カトリーヌさんの液状の魔力がとろりと垂らされる。
んー、やっぱりネイルアートの類かー……
アヤメさんを塗った上に付けるんじゃなくてジェルに埋め込んじゃってるけど、石とかと違って埋め込まないとこっちが動く速度に耐えられないもんね。
……ちょっと現実逃避気味に考えてる間に、ちょっと厚めに塗られた爪をラキが熱心に磨いてた。
それ、中に居るアヤメさんはかなり怖いんじゃないかと思うんだけど。
「……いやー、まさか新大陸の冒険に来てネイルの素材にされるとはアヤメちゃんも思わなかっただろうね」
「それはそうでしょうね」
うん、当たり前だよね。
そうなるかもとかいきなり言われたら、大抵の人は「は?」って言うと思うよ。
というかこっちも、姉の友達を足の指にくっつけられて家まで運ばされるなんて思ってもみなかったよ。
本当になんなんだこの状況は。




