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158:挨拶しよう。

「コレット、白雪達も帰って来た様だし仕上げに入ってやれ」


「はい。ではアヤメ様、これに顔を乗せてうつ伏せになって下さい」


「はい…… うぅ、今日は厄日だぁ……」


 渡された丸いクッションに顔をうずめて、籠った声でぼやくアヤメさん。

 ごめん、殆どの原因が私だわ。



「済まんな。それは気持ち良いから、安心して揉まれてやってくれ」


「抜け出せないんだから、大人しく揉まれるしかないじゃないですか……」


「まぁそう恨めし気な声を出すな。お前の為でもあるのだから」


「それは解っていても、こう笑われればぼやきたくもなりますよ」


「はっはっは、まぁそう気にするな。今はこうして笑っているが、受けている時は私も似たような物だからな」


 あー、別に暇だったからアヤメさんで遊んでた訳じゃないんだな。

 主が相手でも容赦なくグリグリするんだな、コレットさん。

 まぁ痛く無い様に加減したら、意味が無いんだろうけどさ。




「さて、こうしてても仕方ないし出て行こうか。ただいまー。アリア様、お待たせして申し訳ないです」


「お帰り、白雪。モニカにも伝えさせたが、暇になって来てみただけなので気にしなくても良いぞ。というより、勝手に上がり込んだこちらが謝らねばならぬ位だよ」


「いえ、そんな。気にせずいつでもおいで下さい」


「うむ、ありがとう。ところで白雪、そちらの皆を紹介してもらって良いかな?」


 エリちゃんとソニアさんの事かと思ったら、お姉ちゃん達も見てるな。


「あれ? お姉ちゃん、ちゃんと挨拶してないの?」


「しようとは思ったんだけど……」


「良い良い、気にするな。先程までは隠れているという体だったからな。出てきて挨拶する訳にも行かんだろう」


 アリア様も【聴覚強化】が有るしすぐに気付いただろうから、遠くから動作だけで挨拶したんだろうな。

 全員耳が良いから正直茶番でしかないけど、一番偉い人が許してるんだから何も問題無いだろう。



「まぁそういう事ならとりあえず簡単に。こちらからレティシャ、ミヤコ、エリシャ、ソニアですね」


 それぞれの頭上に飛んで行って、順番に名前を伝えていく。

 全員呼び捨てだし、エリちゃんとソニアさんはフルネームじゃないけどね。


 四人を紹介すると、アリア様も所属と名前を名乗った。

 ……と思ったら、なんか棺桶がガタガタっと揺れたぞ。



「あう、お、王女様……!? 下ろして、ください…… ちゃ、ちゃんと出て、挨拶、しなきゃ……」


「え? あ、解ったー。揺れるから気を付けてねーぃ」


 あー、偉い人の前に急に連れて来られて、あせっちゃったのか。

 エリちゃんが背負った棺桶を横たえて、蓋に手をかける。


「開けて良いー?」


「ま、待って…… 自分で、出る、から…… 心の準備、してから……」


 なんかごそごそ聞こえる。そんな狭い所で身だしなみ整えてるのかな?



「す、済みません…… お待たせ、しました。 今、出ます、ね……」


 ややあって、準備が整ったらしい。

 私もまだ中身は見てないから、ちょっと楽しみだな。


 蓋を中から押し上げて少し浮かせ、横にズズズッと動かして棺桶に立てかける様に落とす。

 ふちに手をかけてむくりと起き上がり、裸足のままで棺桶の外に立つ。


 えーと、取りあえず第一印象は「ちっこい」だな……

 モニカさんより更に小さいよ、この人。

 棺桶のサイズあってないんじゃないかな。いや、そういう物じゃないけどさ。


 綺麗な銀髪や金色の瞳よりもそっちが気になってしまったよ。

 うーん、それよりもやっぱり辛そうだなぁ。

 全身から薄い煙とシューって音が出てるよ……



「う、う…… んっ。お、お初にお目に、かかります…… 私、【吸血鬼】の、ソニア・マルツォラッティと、申します…… 以後、お見知り、おきを……」


 痛いのを我慢しつつ、必死に挨拶するソニアさん。

 ぷるぷるしながら頭を下げている。


「あ、あぁ、よろしく。そんな無理をしなくても良いぞ? 辛いなら早く戻った方が良い」


「お、お気遣い、ありがとうございます…… ですが、最初くらいは、きちんと顔を見せて、挨拶したくて……」


「そちらの熊の子くらいの気安さで、私は構わんのだがな」


「どーもどーも」


 いや、エリちゃんは逆に軽すぎる気がしますよ。




「っていうかアヤメさん、さっきから変に悩まし気な声を響かせないでよ……」


 微妙に遠くから漏れ聞こえてくるんだよ。

 会話の邪魔になるほどじゃないけどさ。


「し、仕方ないじゃん。あっ…… 本当にぃっ、気持ち、んふぅっ、良いんだから……」


 ふむ、コレットさんの本領発揮か。

 いや、本領がどこなのかなんて、よく知らないけどさ。


 シルクが横で「ふむふむー」って感じで観察してる。

 いい機会だからしっかり勉強させてもらいなさいね。



「そ、それじゃ、失礼して、戻らせて頂きます……」


「うむ。無理をする物ではない」


 もそもそと棺桶の中に戻り、立てかけていた蓋を引き戻すソニアさん。

 なんかモニカさんがちょっと残念そうなんだけど、気に入っちゃったんだろうか?


「あぃだっ」


 ……中で指か皮でも挟んだのかな。



「そいえばソニアちゃん。出てる時ってどんな感じの痛さなのー?」


 エリちゃんが少し気になったらしく、ソニアさんに質問を飛ばす。

 というか物怖じしないからか、ちっこい姿を見たからかちゃん付けになってる。

 確かにソニアさんっていうかソニアちゃんって見た目だったけどさ。

 まぁいいか。嫌なら本人が言うだろうし。



「えと…… うん、手にお湯がかかった時の、火傷みたいなヒリヒリかな……」


「うわー、それが全身に?」


「うん…… 服とかで隠れてる所は、少しマシ……」


 そんなんだったら私だって出たくなくなるなぁ。


「酷い日焼けみたいな感じかな?」


「わかんない…… 日焼け、したことない、から……」


 お姉ちゃんの例えは通じなかったらしい。

 なんか現実でもインドア派っぽいしなぁ。




「うーあー……」


「アヤメさん、とろけちゃってますね」


「うむ、あれはとても良い物だ。……そこに辿り着くまでが少々厳しいが」


 苦笑しながら言うアリア様。あ、コレットさんの手が離れた。


「モニカ、部屋を借りますよ」


「はい、どうぞ」


 とろけたアヤメさんをひっくり返し、背中とひざ裏に手を差し込み持ち上げて歩き出す。

 おー、お姫様抱っこだ。

 でかくて可愛げの無い私には縁が無い奴だな。


 しかし腕力のある種族でもないし見た目は細いのに、軽々と上げたなぁ。

 まぁプレイヤー側もスキル構成でもっと極端になれるし、この世界じゃ言うだけ無駄なんだけど。



「あれ? そういえば室内に連れて行ってどうするんです?」


「あぁ、帰って来た時からかなりの汗をかいていたからな。流石に女性しか居ないとはいえ、ここで脱がすのはあんまりだろうさ」


 あー、シルクに延々と弄り回されてたからなぁ。

 ……そのシルクがタオルを持って付いていってたんだけど、アヤメさん大丈夫か?




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