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156:おうちに帰ろう。

「あれ、急所に日光が当たると即死って事は復活しても延々と消滅し続ける羽目になるんじゃ?」


「流石にその位の配慮はしている様で、棺桶に入った状態で復活しましたわね」


 おぉ、いくら何でも日中は延々と死に続ける様な仕様では無かったか。



「そうですね…… でも棺桶、一緒に宙に出るから、着地の時、蓋に頭ぶつけた…… 痛かった……」


「それって、その衝撃で蓋が開いたらもう一回って事になるのかな」


「うん…… 蓋、固定されてる、訳でも無いし…… 有り得ると、思います……」


「と言いますか、私はそうなりましたわ」


「あー、実証済みかー」


 そこも配慮しようよ…… いや、ここの開発がそんな事するはずが無いか。

 そんな気が遣えるくらいなら、元々こんな酷い仕様にしないだろうし。



「にしても棺桶ごと落下って、あんまり死んでたらそのうち棺桶壊れちゃいそうだね」


 良く見たら角が一つちょっと潰れてるし。

 そこから落ちたのかな?


「初期装備の服みたいに、壊れても復活したら元通りってタイプなんじゃない? 流石にこの仕様で棺桶取り上げないでしょ」


「まぁ夜に出て自分で修復ってのも厳しいだろうしなぁ」


 痛いで済んでたとは言っても、少なくとも出たくない位には痛いみたいだし。



「あ、とりあえずここに居ても仕方ないし家に戻ろうか。ソニアさん、話はそっちで聞かせてもらっていいかな?」


「は、はい…… 入れてもらえるなら、妖精さんのおうち、行ってみたい、です……」


「良かった。まぁ力になれるかはまだ判らないけど…… あ、エリちゃん」


「んー? 連れてくー?」


「うん。悪いんだけどソニアさん運んであげてもらえるかな」


「おっけおっけー。力仕事は任せろー」


 肩をぐるぐる回しながら棺桶に近づいて行くエリちゃん。

 めーちゃんの時もだけど、私じゃ絶対に無理だからなぁ。



「お、お手数、かけます……」


「気にしないでー。絶賛デスペナ中だけど、これくらいなら軽いもんだよー。あ、幅が広くなってる方が頭だよね?」


「は、はい」


「悪いけどちょっと傾くし揺れると思うから、気を付けてねー」


 エリちゃんは棺桶の頭側を持ち上げて体を潜り込ませ、しゃがんだ背中に立てかけた。

 腕を背中側に回して、蓋を押さえるような形で背負って立ち上がる。



「よいしょー。大丈夫ー? 歩くともっと揺れると思うから、頑張ってねー」


「だ、大丈夫です…… この中でだけは頑張れるので……」


 だけか……


「お、重く、ないです……?」


「ぜーんぜん。余裕だよー」


「そいつ、脳まで筋肉で出来てる様な奴だから気にしなくて良いよ」


「うるさいよー、モヤシウサちゃーん」


「別に俺が特別弱い訳じゃねーし……」


 へらへらと煽り返されてちょっと悔しそうな兎さん。

 まぁ確かに普通の人よりはよっぽど力あるはずだよね。

 スピード系とは言っても物理職だし。




「さて、それじゃ行こうか。……翅でも行けるかな?」


 【姫蛍】を背中の翅に集中しつつ発動してみる。

 おぉ、出来た。


「わー、雪ちゃん綺麗だねぇ」


「翅からこぼれる光が軌跡を描いて、幻想的ですね」


 あれ、ほんとだ。なんか羽ばたいたら光の粒が出てる。

 ……なんか鱗粉みたいだな、これ。



「行くよー…… ってまたカトリーヌさんはお尻に集めるー」


「だんだんとクセになってきた気がしますわ」


「とりあえず言っておくけど、脱いだりはしないでね?」


「えぇ、大丈夫です。流石にそこまでやると捕まりそうですし」


「いや、捕まらなくてもやらないで欲しいけどね。まぁいいや、取りあえず行こう」


「雪ちゃん、そこはまぁいいやで済まして良い所じゃないと思う……」


 だってカトリーヌさんだし……

 あと色々言ってたらいつまでもここに居る事になりそうだし。

 いい加減帰らないとアヤメさん待たせちゃうよ。

 いや、まぁ待ちきれなくなったら普通にログアウトするだろうけどさ。




「お帰りなさいませ、白雪様。お庭でアリア様がお待ちですよ」


「へっ!? え、あれ、なんか聞いてたっけ!?」


「いえ、心当たりは……」


 慌ててカトリーヌさんに確認するが、そちらも驚いている様子だった。


「暇だったので来たと言っておられましたので、慌てる必要は無いかと」


「あ、そうですか。でも待たせちゃったなぁ」


「あぁ、本当に気にする必要は御座いませんよ。アヤメさんで楽しんでおいででしたので」


 良かった……ってアヤメさん『で』って何だ。



「え、アヤメさんは今どうなっちゃてるんですか……?」


「帰っていらした時には既にアリア様がおいでになっていたのですが、全身がガチガチになっているのをご覧になって、コレットさんにマッサージを命じられまして」


「はぁ」


 王女様付きのメイドさんのマッサージかぁ。

 技術凄そうだなぁ。


「姫様はそれを笑いながら眺めておられたので、退屈はしておられないかと」


 いや、何でだ。

 アヤメさんは一体何をされてるんだ……




「雪ちゃん雪ちゃん、私ちょっと気になるからこっそり先に見て来るね」


「アリア様に挨拶忘れちゃ駄目だよ?」


「解ってるよぅ。私お姉ちゃんだよ?」


 なんかやらかしそうなんだよなぁ。

 いや、まぁ普段はしっかりしてるんだから大丈夫か。


「私もアヤメさんの雄姿を目に焼き付けて来ますね」


 レティさん、アヤメさんイジりの材料にしようとしてないか。

 まぁ確かに私も気になるけどさ。




「あ、こっちの熊のエリちゃんと棺桶の中のソニアさんもお客さんです」


「はい。ようこそ、妖精の館へ」


 その呼び名は初耳なんだけど。まぁいいか。


「そしてそこの貴方。覚悟はよろしいですね?」


 ん? あ、昨日の犬さんだ。昨日ので懲りてないのか……

 仲間の人達も呆れてるっぽいな。



「……さて、死に方の希望は御座いますか?」


 犬さんの正面にピシッとした姿勢で立ち、顔を見上げて物騒な事を言い出すモニカさん。


「え、えぇと…… 許しては」


「もらえるとお思いで?」


「……なるべく痛くない様にお願いします」


 うん、まぁ二日連続は仕方ないよね……




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