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154:一緒に光ろう。

「それジャー、フんスイひろバでマッテるネー。ばッハハーい」


 私の口の中にチュルンと消えながら、やたらと軽い挨拶を残して行くエリちゃん。

 今回はかなり余裕があるな。やせ我慢かもしれないけど。


 っていうか迎えに行く前提……ってそもそも帰り道か。

 にしても、合流する必要はあるのかな?

 うちに遊びに来るんだろうか。



「ごちそうさまでした。大変美味しゅうございましたわ。是非万全の状態も味わってみたい物です」


「一応言っておくけど、無関係な人を襲って食べちゃ駄目だよ?」


「えぇ、解っておりますわ。それにその様な事をせずとも、自ら進んで口内に飛び込んで来るお方が居るではありませんか」


「ごめん、その言い方だとカトリーヌさんもだわ」


 唐突にモニカさんの口に飛び込んで行ったことを忘れたとは言わせないぞ。


「……そうでしたわ。まぁそれは置いておくとしましょう」


 置いとかれた。まぁ元々言いたい事は解ってるから良いんだけどさ。




「はーい。それじゃ皆さんお疲れさまでしたー。次の機会が有りましたら、またよろしくお願いしまーす」


「おーう、お疲れーい。ってちょっと待った」


 お姉ちゃんの締めの挨拶に答えた魔人さんが、何かに気付いて待ったをかけた。

 どうしたんだ?


「はい?」


「あいつ、それどうする気だったんだ?」


「あー、どうしましょう。持っていってあげた方が良いですよねぇ……」


「いっそ放っといてやりたい所だが、他の利用者の邪魔になるしな……」



「ったくあの馬鹿、後の事考えて動けよな……ってこれ固いなおい」


 兎さんがボヤきながら出てきて杭を抜こうとするが、片手では抜けない様子。

 結構強く叩きつけてたしなぁ。

 それよりも問題なのは、表面に凹凸の少ない普通の円柱の杭だってところか。

 あれじゃしっかり掴まないと結構滑るだろう。

 両手で掴んでグイグイ動かしながら引き抜いていって、やっと一本抜き切った。


 ふむ、行けるか判らないけど試してみるか。



「済みません、ちょっと杭から離れてもらって良いですか? 私がやってみます」


「あ、そう? それじゃ頼めるかな。俺STRは低めなんだよねぇ」


「お、妖精さんが何かすんのか?」


「みたいだね。ちょっと離れててくれって言われたよ」


 さて、それじゃいっちょやってみよー。




「でもどうするんだ? 妖精さんの腕力じゃどうしようもないだろ?」


「そりゃそうですよ。だからこうします」


 魔人さんの疑問に聞こえない声を返しつつ、杭を【追放】で転移させるという行動で答える。

 お、いけたいけた。杭もおかしくなってないな。


「あぁ、物理で駄目なら魔法でやりゃいいんだな」


「そういう事です」


「っていうか同じ魔法使いなんだから、それくらい察しようよ」


「うっせ。俺は基本属性専門なんだよ」


 兎さんの突っ込みに開き直る魔人さん。

 まぁ【空間魔法】取ってる人は珍しいっぽいし仕方ないのか?

 私が持ってるのは知ってても、頭にパッと浮かんでこなかったんだろう。



「それじゃほいほいっと。あ、その布は畳んでもらって良いですか?」


「うん、任せて。よっと…… あ、巻いちゃえば運びやすいな」


 四つ折りにした布の上に杭を揃えて乗せ、くるくる巻いてしまう兎さん。

 あぁ、確かにその方が楽そうだな。


「流石に全部まとめるとちょっと重いな。まぁこの位なら大丈夫だけど」


「あいつは軽々持ってたのに、情けないやっちゃなお前は」


「熊の前衛と一緒にすんなよ…… 俺は腕力で貢献するタイプじゃないんだよ」


 担いで重量にぼやく兎さんを、魔人さんがお返しとばかりに煽りにかかる。

 割と仲いいな君ら。



「さて、それじゃあの馬鹿に返しに行こうか」


「そうだな。それじゃ解散って事で。お疲れー……つっても、どうせ今日も皆でゾロゾロ公園まで付いていくんだろうけどな」


「まぁ家まで押し入らなきゃ別に構いませんけどね。目立つのなんて私一人で動いてても変わりませんし」


「いや、押し入ろうとしたらブチ殺されるってのは見せつけられてるしな……」


 まぁモニカさんが許しはしないわな。

 今日こそは私が止めてもやっちゃうだろうし。

 いや本気でやめてくれって怒ったら別だろうけど、流石にそこまでする理由も無いし。



「今日は始めるのも遅かったし、流石にもう真っ暗だねぇ」


「そうですね。街灯だけでは頼り有りませんし、照明をお願いできますか?」


「はいはーい。せっかくだし私は【姫蛍】で行こうかな」


「おっ、お尻で皆を導くのかな?」


「やる訳ないじゃん…… 普通に手から発動するよ」


 ていうか何なのお姉ちゃん、その表現は。


「……いえ、通常の発動部位がお尻という事は普通とは言い難いのでは?」


「そこ、別に追及するところじゃ無くないかな……?」


 どうしても尻で光れっていうならやんないからな。

 別にこれだけ居れば照明器具持ってる人も結構居るだろうしさ。



「私はその魔法を持っていないのですが、どうすれば良いのでしょう?」


「あ、光った事無いんだっけ? 【魔力操作】で光らせたい所に魔力を一杯集めたら、結構簡単に光れるよー」


「ありがとうございます。やってみますわね…… あっ、出来ましたわ」


 おぉ、すぐに成功したな。気になる点は有るけど。



「いや、なんでお尻に……」


「蛍とかお尻とか仰っていたので試しにと。……確かにこれは少々恥ずかしいですわね」


「私は少々じゃないかなー。まぁカトリーヌさんとしては望む所なんじゃないの?」


「えぇ。恥ずかしい所はバンバン見せて行きたい所存です」


「いや、そんな決意表明みたいに言われても困るんだけど。まぁここでぐだぐだしてても仕方ないし、行くとしようか」


「そうですね。あちらもそろそろ大丈夫でしょうし……」


 何がだレティさん。あちらってアヤメさんだよな。

 っていうかそういえば、アヤメさんが出て行った時点で大分暗かったけど大丈夫なのかな。

 まぁシルクは夜目効きそうだし、アヤメさんも見えないならレティさんが止めてるか。



「それでは皆さん、私たちはこれで失礼しますね。お疲れさまでした」


「……って言っても、やっぱり皆一緒に行くんだね」


「雪ちゃん人気者ーぅ」


「なんだろう、煽られてる様にしか聞こえない」


「気にし過ぎではありませんの?」


「いや、内容はともかく言い方と言ってる人物が……」


「あっはっは。雪ちゃんひどーい」


 さっき人をぼっちだからとか言ったのお姉ちゃんだろうに。

 いや別に事実だから良いんだけどさ。




「えーと…… あぁ、居た居た」


 噴水広場に着いて、エリちゃんを探してキョロキョロすると割とすぐに見つかった。


「おーい、公共の場のベンチで寝っ転がって独占しちゃ駄目だよー」


「ういっす了解っすー。ユッキー、ツッコミが常識的ぃー」


 うーん、流石の軽さだな。



「おいバカ、回収してきてやったぞ」


「バカとはなんだー。でもありがとー」


「回収も考えずにブッ刺して帰ってこないんだからバカで十分だろ」


「まぁこいつ、中々抜けずに妖精さんに助けてもらってたけどな」


「へいへい、モヤシっ子ー」


「うるせーよ馬鹿力が」


 おじさんが容赦なくバラしていくな。

 まぁ確かに代わったけど、別に兎さんだけでも抜けてたから大丈夫だぞ。



「ところでこれからどうするの?」


「んー、とりあえず私の味が悪くなったっていうのがデスペナのせいなのか確かめる為に、もう一回食べてもらうよー」


 あれっ、なんか知らないうちに予定に組み込まれてる。

 別にやるのは構わないけどさ。

 あとみーちゃん(仮)はそういう事聞いたんじゃないと思うよ。



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