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153:流させよう。

 再度エリちゃんに乗って一息つく。

 まためり込んでしまわないように、あんまり体重はかけないでおこう。


「それじゃ、カトリーヌさん…… ってなにやってんのエリちゃん」


「いヤー、こんなでも指は動クんだナーって」


 目の前に落ちてる自分の左腕をごそごそ漁っているのでどうしたのかと思ったら、状態を確かめていたらしい。

 あ、ほんとだ。レティさんが握ってたからちょっと歪んでるけど、指がぐーぱーしてる。


 なんか伸びた腕が微妙に動いてるのは、元に戻ろうとしてるんだろうか。

 でも下の方ちょっと潰れてるけど、これ大丈夫かな?

 いや、どうせこれから溶けるんだから問題無いか。



「さて、気を取り直してと。カトリーヌさん、今度は慎重にね」


「はい。それではエリちゃんさん、入れますよ」


「あーイ。どぞどゾーぅ」


 しゃがみこんで人差し指をツプッと首に挿し込むカトリーヌさん。

 別に挿さなくても……まぁいいか。問題は無いと思うし。


 お、ほぐれてきたな。今度はちゃんと出来てる。

 エリちゃんから漏れ出る声を聴きながら、ゆっくりと高度を下げていく。

 


「カトリーヌさん、一応ちゃんと【浮遊】しておかないと溶けたエリちゃんに巻き込まれちゃうよー」


「それも捨てがたいですが、今はその時ではありませんわね」


 よく解らない事を言いつつ少しだけ体を浮かばせるカトリーヌさん。

 まぁカトリーヌさんがよく解らないのはいつもの事だから、何も問題無いな。




「うん、そろそろ良いんじゃないかな? 確かカトリーヌさんもこれくらいだったと思うし」


「はい。エリちゃんさん、お加減はいかがですか?」


「フあァー…… イぃー……」


「んー、駄目そうだねぇ」


「ナ、なンノこれシキぃー…… マダイけルぅー」


「お、駄目じゃなかった…… ってちょっと、つまみ食いしようとしないの。カトリーヌさん、待て!」


「済みません。美味しいと伺っていたのでついつい……」


「いや、そんな犬みたいなポーズ取らないで普通に立ってていいよ……っていうか立って…… 犬の躾みたいに言った私が悪かったからさー」


「むぅ、解りましたわ」



「ンむー、ウゴくかンカくがヨクわかンないナァー」


「あー、でもちょっとピクピクしてるよ」


「オー、ほントー? うーン、なンテいうカ、ヘンナかんジー。手をウごかソウとしたら、アシがうゴいチャウみたイナー」


「体の何処がどのあたりに対応しているという事も無いので、こればかりはご自分で感覚を掴んで頂くしかありませんね」



「ンー、ちょット外カラうゴカしてミテくレナイかナー?」


「あぁ、なんとなく解る様になるかもだしね。それじゃお姉ちゃん、お願い出来る?」


「ゆ、雪ちゃん…… 私がそれに近づくの、嫌だって解ってて言ってるでしょー……」


「あはは、ごめんごめん」



「それでは、代わりに私がやりましょうか?」


「ウン、ヨカったらおネガいー」


「それでは。……あったかいですね」


「まぁそんなんでもさっきまで人間だった訳だし」


「あハハー。やダナー、いマモにンゲンだヨー」


「せめて人の形を保てるようになってから言おうね」


「ぐヌー」


「それ、出来るようになっても人間じゃなくて擬態したスライムとかじゃないかな……」



「ありガトー。ナんかチョっとワカったキがスルー」


「どういたしまして。頑張ってくださいね」


「がンバるー…… っテいイタいトコだけドー」


「ん?」


「そロソろタベないト、キエちゃうカもー? えリャー」


「お、動いた動いた。それじゃカトリーヌさん、頂こうか。カトリーヌさん? ……良し!」


「待ちわびましたわ。それでは頂きます」


「そこまで犬に徹しなくても…… まぁいいや、私も頂きまーす」


「メシあがレーィ」




「これは……良いですわぁ……」


 呟きつつちゅるちゅる啜っていくカトリーヌさん。

 私も飲んでるんだけどなんか味に違和感が……


「んー…… なんか美味しくない……」


「ソんナー」


「そうですか? こんなに美味ですのに」


「いやごめん、美味しいのは美味しいんだよ。でも味が落ちてるっていうか……」


「雪ちゃんが慣れちゃっただけじゃないの?」


「んー、でも他の味の感じ方はそのままだったしなぁ。エリちゃんが何か昨日と違うのかも?」


「さっき柔らかくなったからかな?」


「アー、デスペナがノコってルからカモー?」


 そうか、事前に私がエリちゃん成分を吸っちゃってた可能性があるのか。

 でも殆ど味はしなかったってことはカトリーヌさんの魔力だろうし、多分違うだろう。



「んー、デスペナの方かも。そういえばカトリーヌさんもこの位の美味しさだった気がするし」


「あぁ、確かに食べられた時にも残っていましたわね」


「ムー、おイシく食べテモらうニはチャンとマタなきャかー」


「熟成が大事という事ですね」


「レティさん、それはなんか違う」



「雪ちゃん、昨日とどのくらい違うものなの?」


「んー、なんて言えばいいかな。コンビニのケーキと専門店のケーキくらい?」


「あー、何となくだけど解った気がする」


「コンビニエンスエリチャン!」


「いやごめん、意味が解らない」


「イってミタだケー。ユッキー、ハヤくしナイと無くナっちゃウヨー?」


 しまった、話してる間にこっそりカトリーヌさんが飲み続けてた。

 くそぅ、抜け目無いな。

 まぁまだ十分残ってるし、味が落ちたって言っても美味しいのは確かなんだから文句言わずに頂こう。

 というか暴走しちゃいそうにならない様に、これくらいの美味しさの方が丁度良いんじゃなかろうか。



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