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143:撫でさせよう。

 ……ぬぅ、なんだなんだ。

 誰だー? つんつんつついてくるのはー……


「白雪さん白雪さん、起きてください。ほら、カトリーヌさんも」


 あぁ、レティさんか……

 むぅ、また寝てしまったか。


 というかこんな大勢の前で小っちゃい子に寝かしつけられてしまった。

 くそぅ、恥ずかしい。

 まぁカトリーヌさんも寝かされちゃったみたいだし、私が特別幼いって訳じゃないよね。

 ……よね?



「ほーら、雪ちゃん。起きて起きてー」


「ぅあぁっ! ちょっ、折れっ、折れるっ、腕っ!!」


 突如右腕を襲った激痛に耐えきれず叫びながら、腕に突き立てられたお姉ちゃんの指を左手でバンバン叩く。


「へっ!? ご、ごめんっ!」


「ミヤコ、あんたはそろそろ力加減って物をさぁ……」


「本当、頼むよ……」


 驚いてパッと指を引っ込めるお姉ちゃんと、お姉ちゃんに呆れるアヤメさん。

 うぅ、折れては無いみたいだけど痛かったぁ……

 全く困ったものだよ。



 あ、痛みが引いた。レティさんが回復してくれたみたいだな。


「ありがとー」


「どういたしまして。カトリーヌさんはまだお目覚めになりませんか?」


「んー…… いや、起きてるなこれ。シルク、ひっぺがしていいよ」


 同じ目に遭おうと思ってるなこの人。

 いくらお姉ちゃんでも二度続けて同じことをやらかしはしないよ。多分。



「むぅ、白雪さんだけずるいですわ」


「いやいや、私は痛い目に遭っても嬉しくもなんともないから……」


 両脇に手を差し込まれ、だらーんとぶら下げられたまま文句を言ってくるカトリーヌさん。

 私に言われても知らないし、一緒にするなぃ。


 全身が脱力しきって垂れさがっているカトリーヌさんがちょっと面白いのか、「おー」といった顔で軽く左右にゆすってぶらんぶらんさせるシルク。

 やめたげなさい。

 いや、なんか嬉しそうだから別に良いか。




「シルク様、もう目覚めましたわ。大丈夫ですので、降ろしてくださいまし」


 カトリーヌさんに言われて遊ぶのを止め、素直に離してあげるシルク。

 よしよし、良い子だ。いや普通か。

 というか人の体で遊んでる時点で、良い子と言えるかは微妙だな。


「ん? 白雪、何でシルクちゃんは様付けなんだ?」


 なんで目の前に当事者が居るのに私に聞くんだ。



「……いややっぱ良いわ、何となく察せるし」


 うん、まぁそうだろうな。

 シルクに袋詰めされて運ばれてるのも見てるんだし。


「でもシルクちゃんは様なのに、白雪はさん止まりなんだな」


「雪ちゃん、シルクちゃんのご主人様なのにね」


「あぁ、それは簡単な理由ですわ」


 ん、カトリーヌさんが直接答えるのか。

 まぁ私に教えろって言われても困るけどさ。



「単に白雪様と呼ばれるのは嫌がるだろうな、と思いまして」


 あぁ、そこは解ってるみたいだな。

 普通に同じプレイヤー同士で、しかもカトリーヌさんの方が年上っぽいのに様付けで呼ばれてもなぁ。

 なんか落ち着かないよ。


「お許しさえ頂ければ、喜んで呼ばせていただくのですが」


 と思ったら期待に満ちた目でこっちをチラチラ見てくるし。

 まぁわざわざ許可を取ろうとするだけいいか。


 

「いや、止めといて欲しいかな」


「残念ですわ……」


 まぁ当然、お許しは与えないけどね。

 様付けなんてされる柄でもないし。

 モニカさんやライサさんはまぁ、役場の職員と客みたいな立場があるし、様付けも仕方ないかな。




 そういえば太郎は…… あぁ、今もレティさんが持ってるのか。

 クレープも分けて貰ってたし、すっかり仲良しさんだな。

 お姉ちゃん、あんまり横から突っついてたらその内噛まれるぞ。


「あぁ、そういや白雪」


「ん?」


 唐突にアヤメさんに声をかけられた。どうしたんだろうか。



「寝てる間に掲示板で召集かけておいたぞ」


「ん、あぁ。それじゃ早く行った方が良いかな」


「そうだな。急ぐ必要は無いだろうけど、あんまり遅くなると悪いしな」


 呼んだ本人が最後になったりするのは避けたいしなぁ。



「あぁ、ちなみにタイトルは【妖精からは】【逃げられない】だったよ」


「いや、それは別に知りたくは無いけど」


 っていうかなんでそんな…… あぁ、逃げるシルクを【追放】で引き戻してループさせてたからか。

 あんまり繰り返されるとMP切れちゃうから、逃げられない訳では無いけどね。

 【空間魔法】って消費が激しいし。

 とは言っても【妖精魔法】よりはマシなんだけどさ。



「それじゃ、さっさと行こうか」


「雪ちゃんが寝てたんじゃないのー」


「いやまぁうん、そうなんだけどさ。お姉ちゃんも体験すれば解るよ」


「えぇ、あれは抗い難いですわね……」


 まぁサイズが違うから体験出来ないんだけどさ。



「むぅ、そう言われると気になるけど……」


「それより、とりあえず歩き始めよう。ここに居ても店の邪魔になるしな」


 もう結構前に食べ終わってるしね。

 気付かれない様に銅貨を置いて、カトリーヌさんと一緒に飛び立つ。

 いや、多分気付かないふりをしてくれてるだけなんだろうけどさ。

 毎回置いてるし。



 よしシルク、ちょっと試しにお姉ちゃんに取り付いてなでなでしてやれー。


「わ、なになにシルクちゃん…… ほあー、確かに撫でるの上手だねー」


 む、耐えるか…… 人間サイズからだと小っちゃくて、安心感が足りないのかな。

 いや歩きながら撫でられたんじゃ、流石に私でも寝ないか。

 よし、もう止めていいよー。



「あ、止めちゃうの? むぅ、気持ち良かったのにー」


「おや、私も撫でてくださるのですか? ありがとうございます」


 あら、今度はレティさんに行った。

 皆に解らせるつもりか?



「気持ち良いですねぇ…… あっ、もうですか……?」


 あ、割とすぐに離れた。レティさん、残念そうだな。

 そして最後はアヤメさんか。


「おぉ、私にもやってくれるのか。ありがと、んお、おほぉぉ……」


 おいどうしたアヤメさん。

 あー。ウサ耳の付け根や内側を、優しくさわさわ撫でまわされてるな……

 私の翅と同じで、人間の体に付いてない部位は触られるのに慣れてない分、刺激に敏感なんだろうな。



「ちょ、シルクちゃん勘弁して…… 歩けなくなっちゃうからさ……」


「おぉ、アヤメちゃんのレアな表情」


「こんにゃろ、覚えとけよ……」


 このままじゃまたレティさんに弱みを握られちゃうぞ、アヤメさん。

 いや、弱みっていうかイジりネタか。




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