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142:一緒に食べよう。

 いつも通りアヤメさんが注文を済ませ、私達は【妖精】用の棚へ。

 おおぅ、棚の直前で背後からシルクにわしっと掴まれた。

 今日は二人居るけど、どうするつもりだろう?


 ふむ、用意されてるクッションにカトリーヌさんをポフッと置いて、私はシルクのおひざの上か。

 動きが硬くてぎこちないし、私があっちでも構わないんだけどな。



「あれ、結局食べさせてもらう事にしたのか?」


 アヤメさんの言葉にシルクがピクッと反応した。

 あ、そういえば食べさせてくれて良いよって直接言ったっけ?

 まぁ今言っておけばいいか。


「あ、お願いね、シルク。うん、もう開き直ろうかなって」


「あれ、シルクちゃん怒られ損じゃね?」


「いやまぁ、給仕がどうというより言う事聞いてくれるかどうかが重要な所だから」


 舐められたままじゃいけないってのが一番の理由だからね。

 あくまでも私がご主人様なのだ。




 ……んー、一応言っておいた方がいいか。


「カトリーヌさん、鉄板に飛び込んじゃダメだよ」


「えぇ、大丈夫ですわ。流石にお店に迷惑ですもの」


「それならいいんだけど。なんか凄いうずうずしてるから一応ね」


 うずうずというか、鉄板を見てそわそわというか。



「本音を言えばやってみたいのは山々なのですが。あちらのスープに混ざって煮込まれてみるのも……」


「いや、本当にやめておいてよ? でっかい虫が浮いたスープなんて誰も飲まないよ」


「えぇ、せっかくの料理を無駄にしてしまいますものね」


 鍋一杯ともなると、結構な損害額になっちゃうしね。

 っていうか煮込むって程そこに残ってられるとは思えないけど。

 いやそこはどうでもいいか。


「こいつ今、普通に自分を虫って言ったな……」


 うっさい、例えだ例え。




「はい、出来たよ。これは妖精さんの分」


 クレープの皮で作ったサンドイッチを乗せた皿が、棚にコトッと置かれる。

 続いて水の入った小鉢が二つ。手を洗う物と飲み水かな。


「わぁ、ただの切れ端でなく加工してありますのね」


「まぁこれなら挟んで小さく切るだけで出来るしね」


 他は私達サイズで調理しろって言う方が無茶な物が大半だし。



 小鉢の水で手を洗って、シルクに拭いてもらうカトリーヌさん。

 そういえばあのハンカチってどこから出してるんだ……?

 あ、良く見たら目立たない様にポケットがついてるのね。


 私も洗おうと思ってシルクから離れようとしたら、するっとお腹の前に手を回されて引き戻された。

 あぁ、全部シルクがやるからって事かな?

 私は雛鳥みたいに、ただ口を開けて待ってればいいんだろう。


 あ、そうだ。【魔力武具】でコップを作ってシルクに渡しておこう。

 渡しておかないと、下手したら手で掬ってきてそこから飲まされそうだし。

 ……むぅって顔した。本当にそうするつもりだったなこれ。



 開いた口にサンドイッチが入って来るので、噛み千切ってもぐもぐ。

 飲み込んで口を開くと、すぐに次が差し込まれる。

 そろそろ水分が欲しいなーと思ったら、既に目の前にコップが来ていた。


 むぅ、なんというお世話力。傾ける角度も完璧だし。

 ちょっと顔にだばぁってならないか心配したけど大丈夫だった。

 っていうかコップくらい持たせてくれてもいいんだけどな。

 まぁいいか。



 む。小さく手を挙げてシルクに一旦止まってもらう。


「カトリーヌさん、何そんなニコニコこっち見てるのさ」


「微笑ましいなと思いまして」


「そうは言うけどさ、自分もそういう目で見られてるっての忘れてない?」


「いえ、私の場合は半々ですわね」


「半々?」


「生前の私を知っている方もそれなりにおりますので」


 あぁ、どういう人か知ってるから素直に可愛いとは思えない感じか……

 ていうか生前って言うなよ。



「それに親子みたいですし」


「……シルクがお母さんだよねそれ」


「えぇ、それはまぁそうですわね」


 うん、まぁこの状況じゃ当然だけどさ。


「まぁいいや、とりあえず食べちゃおう」


「ですわね」


 早く食べないと、皆も食べ終わっちゃうしね。



 しかし太郎の時もだったけど、何となく召喚獣の感情が伝わってくるな。

 気のせいじゃ無かったっぽい。

 しっかり根付いた恐怖は仕方ないとして、それを上回る圧倒的な幸福感が流れ込んでくる。


 むぅ、そこまでお世話出来るのが嬉しいのか……

 こんなに幸せなら、ちょっとくらい無理にお世話しようとするのも解らなくも無いな。

 でも言う事は聞いてくれないと困るから仕方ない。

 ……いや、やり過ぎたのは仕方なくないけどさ。




「ふー、ごちそうさまー」


 最後に水を飲んで一息。

 言い終わると同時に少し湿らせた布で口元を拭かれた。


 さて、カトリーヌさんは終わってるけど他の皆はまだ食べてるな。

 のんびりするかー。


「そちらへ行ってもよろしくて?」


「ん? そりゃ構わないけど……」


 なぜわざわざ聞くのか。

 ってシルクの横じゃなくて、一緒に乗るのかよ。

 いいよって言ったし、まぁいいか……



 少し横に寄って、二人まとめて抱っこされる。

 うん、シルクが良いなら構わないけどさ。


「ふあぁ……」


 カトリーヌさん、いきなりどうした……ってなでなでされてる。

 うん、やっぱりあれは気持ち良いよね。


 はぅぁ、こっちにも来た……




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