表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
141/3571

141:気にしないでおこう。

「さて、それじゃ気を取り直して行くとしようか。何食べる?」


 アヤメさんがパンパンと手を叩き、移動を促す。

 カトリーヌさんがまた巻き込まれない様に、手を引いて誘導してあげよう。


「おやおや、仲良しさんですね」


「見た目は微笑ましいねー」


 わざわざ見た目はって付けなくて良くないかお姉ちゃん。

 いや、意図が判ってるから付けたのは判るけどさ。

 というか、【妖精】の事を知れば知るほど付けたくなるだろうけど。



「そういえばあんたら、昼間っから市場でイチャイチャしてたんだって?」


 歩き始めてすぐに、アヤメさんがニヤニヤしながら聞いてくる。

 むぅ、掲示板にでも書かれちゃってたのか。

 うん、そりゃまぁ書かれるか。凄い見られてたし。


「いや、別にイチャ付いてた訳じゃないよ。私にそういう趣味は無いし」


「本当かー? なんか人目もはばからずに口付けを交わしてたらしいじゃん」


「雪ちゃんが特殊な道を歩み始めた……!?」


 いやお姉ちゃん、解ってて言ってるだろ。

 それを言うならアヤメさんもだけどさ。



「いや、あれ食事してるだけだって知ってるでしょうに」


「うん」


 素直に認めたな。


「人によって魔力の味が違うって話してて、カトリーヌさんが試しに私から吸ってみたら味がしないっていうからさ。こっちも気になって吸い返してたって訳で」


「へー、【妖精】同士じゃ美味しくないんだな」


「まぁ味がしないってだけで普通に回復はするから、何も問題ないんだけどね」


「しかし、なんで逃げたんだ?」


「いやなんかこっち見てた人達の視線で、他から見たらどう見えるかを察して恥ずかしくなって」


 羊さんとか真っ赤だったし。



「まぁ普通にスキル使ってるだけだし気にしない事にしたけどね。というかそもそも人前でそんな吸う事って無いけど」


「まぁ確かにな。ってそうだ、何食べる?」


 自分で話を逸らしたのを思い出して、元に戻すアヤメさん。


「んー、クレープとかどうかな?」


「あぁ、良いですね」


「うん、それじゃクレープにしようか。っと、カトリーヌは何か食べたい物はあるかい?」


 決定の流れにした後に聞くのは、有ったとしても凄く言い辛いと思うんだよ。



「いえ、特には。と言いますか、私生前はお金を持っておりませんでしたので、何が売られているのかもあまりよく知りませんわ」


「そ、そうか……」


 うん、まぁお腹減る前に死に戻って回復してただろうしね。

 お金も無いしお腹も減って無いとなれば、わざわざ屋台巡りしないか。

 ……この人の場合はそんな暇があれば殴られに行くからだろうけど。



「あ、そういえば雪ちゃん」


「ん?」


 お姉ちゃんが唐突に声をかけて来る。

 なんだなんだ。


「アレ、シルクちゃんに見せちゃって良かったの?」


 アレ? あぁ、カトリーヌさんを処理した事か。


「ん、まぁさっきのは問題ないかな」


「そうなの?」


「だってカトリーヌさんがどういう人かって事は、もうシルクの方が解ってるだろうからね」


「あぁ、そう言えばそうかぁ……」


 正直私も引いちゃうくらいに痛めつけてたし。

 本人の希望とはいえ、あそこまで徹底出来るシルクが逆に怖いよ。



 そういえばさっき袋を取りに行かされたりしたけど、少しはシルクの恐怖心もマシになったのかな?

 出ていく時に乗った腕の力の入り方から考えると、まだまだ強いみたいだけどね。

 まぁそれでもかなり回復が早いな。

 というか一日も経ってないんだから早すぎるくらいだ。何も困らないし嬉しいけどさ。


 ……カトリーヌさんを痛めつけてるうちに何かに目覚めて、叱ってた時の私に共感したとかじゃないよね?




「えーと、あの店はどこだったか……ってなんか店少なくない?」


 屋台エリアに到着し、店を探すアヤメさんが疑問を口にする。

 ほんとだ、少しは戻って来てるけど結構減ったままだな。


「あぁ、まだ続いてる様ですね」


 パネルを開いて片手で操作していたレティさんが口を開く。

 何が続いてるのかは聞かないでおこう。


「え、何が?」


 むぅ、お姉ちゃんが聞いちゃったよ。

 まぁそりゃ知らなきゃ聞くか。



「何だミヤコ、あんた知らなかったのか?」


「お昼にこの近くで白雪さん達が襲われたんですよ」


「えっ!? 大丈夫だったの!?」


「いや、そりゃ大丈夫じゃなきゃ平気な顔でここには居ないだろうよ」


「まぁ二人とも即死したのを大丈夫って言っていいかは疑問だけどね」


「デスペナ無いからってついさっき気軽に殺した奴の言う事じゃないよな」


「まぁそうだけどさ」


 うん、否定のしようが無いぞ。



「でもなんで襲われたの?」


「ん、振ってきたの網だったし捕まえようとしたんじゃない?」


「こんな危険物、よく捕まえようと思ったよな」


「いや人を何だと……否定出来る要素が無かった。うん、まぁお金目当てじゃないかな?」


 蜜狙いかも知れないけど、売る為ならお金目当てでまとめていいだろう。



「あー、雪ちゃんって目立つ稼ぎ方してるもんねぇ」


「まぁお金目当てなのかは判らないけどね」


「ともかく、この広場から見える所で行われたので、目撃した店主たちに逆に捕獲されてしまった様で」


「どんな目に遭ってるんだろうな……」


 知りたくはないけど、逆にこっちが心配になって来るな……

 というか掲示板に書いてあるって事はプレイヤーも混ざってるって事だよね。

 実況でもしてるんだろうか…… こわい。



「うん、まぁいいや。目当てのお店は残ってるかな?」


「雪ちゃん、あっさりしてるねー。ちょっと怒ってる?」


「いや、別に襲って来た人には何も思ってないよ。今ひどい目に遭ってるのは自分で招いた事だし、気にしても仕方ないかなーって」


「そうですね。あ、有りましたよ」


「レティちゃんも冷たいなー」


「あんたそう言うけど、どうせその場に居たら参加してるだろうに」


「……そうかも知れないけど」


 いやいや、参加しなくていいよ……

 ていうか多分、参加しても割とすぐギブアップするでしょ、お姉ちゃん。

 いや、まぁ普通はそうなるだろうけど。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ