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137:お世話しよう。

 まぁよく解らないのは今更だし、別に不都合はないからこのまま上げるとしよう。

 熊さんが差し出した手の前に行き、人差し指の上で器を消して蜜だけを乗せる。


「わーい。っとっと、垂れちゃう」


 雫がゆっくりと動き始めたのを見て慌てて指を口に含む熊さん。

 しかし味見とかせずに食べさせたけど大丈夫だろうか。

 なぜか普通の草の味とか、そういうオチはないよね?



「おー、甘くて美味しー。これが噂の妖精さんのおつゆかー」


 お、ちゃんと甘いか。良かった。

 そういえば熊さんに蜜を上げた事は無かったっけ?

 っていやちょっと待て、おつゆって何だよ。


「いや妖精さんが採ったってだけで普通に蜂蜜だろ? つっても俺も食べた事無いけどさ」


「解ってないなー。妖精さんが採ったってとこが重要なんじゃないの」


「はいはい」


「っていうか蜂蜜って感じの味じゃないよ? どっちかっていうとホットケーキとかのシロップみたい」


 お、ちゃんとシロップだったか。

 なぜか普通に蜂蜜なんてオチも無かったみたいだな。



「普通に樹液の状態で取れると思ったんですけどね」


「ん?」


「いや、めーちゃんってサトウカエデみたいな木らしくて、樹液が甘かったから試しにスキルで採ってみたらシロップだったんですよ」


「あー、メープルシロップね。樹液を煮詰めて作るんだっけ」


「っていうか雪ちゃん、人体実験するのやめようよ」


「いや別に…… あ、良く解ってない物普通に飲ませたか」


「んー? 私の汁でしょー?」


 汁て。確かにそうなんだけどさ。

 あ、チャラいお兄さんがガタって立ち上がろうとして隣の人に裏拳食らった。

 座ってろって事か。


「いや、普通に採ったならともかく私のスキルを挟んだから、何が起こるか判ったもんじゃないんだよね」


 せめて確認くらいはしたほうが良かったかな。

 あ、そうだ。



「めーちゃん、一杯動いてお腹空いたでしょ?」


 足元まで飛んで行って【施肥】で養分を流し込む。

 ついでに【大洪水】で散水もしておこう。


「んー、おいしー。ありがとねー」


「おー、スプリンクラー雪ちゃん」


 なんだその通り名みたいなのは。



「光も要るかな?」


「出来れば貰えると嬉しー。いいかなー?」


「もちろん。そーれ、ぺかーっと」


 足の間から頭上まで飛び上がり、頭の周りをくるくる回りながら【姫蛍】で照らす。


「んふー…… あーりがとー」


 リラックスしてるなー。

 そんなに気持ち良い物なのか?



「雪ちゃん、それ飛び回る意味ってあるの?」


「いや、別に何もないよ」


「大変お可愛らしいので問題は無いかと」


 モニカさんはいつの間にこっちに来たんだ。

 別にいいんだけどさ。



「しかし、白雪様にお世話して頂けるとはなんと羨ましい……」


 お世話っていうか…… まぁ間違ってはないか。

 

「別に欲しければモニカさんにもやってあげますよ?」


 モニカさんの顔の前まで降下し、至近距離から顔に【妖精吐息】をふーっと吹きかける。

 この花園を一人で管理するなんて大変だろうし頑張って欲しいもんね。



「雪ちゃんが女の子を誑かしにかかってる……」


「何を人聞きの悪い事を……」


 ていうかモニカさんちっこいけど立派な大人だぞ。多分。


「そうですよ。改めて誑かされる必要など御座いませんとも」


「そっちも何を……いや今更か」


 初対面から一緒に仕事出来ないってだけで崩れ落ちてたしな……




「おっと、呼び出し食らったわ」


「お、それじゃそろそろお暇するかー。結構長居しちまったな」


 仲間からメッセージが送られてきたらしく、お兄さん達が机と椅子を片付け始めた。

 あ、そういえば手伝ってくれた人たちにも【妖精吐息】かけておかないと。

 いや別に必須って訳じゃないけどさ。


「お? おぉ、ありがとうな」


 一人ずつ順番に吹きかけ、頭を下げて回る。

 チャラいお兄さんだけ一旦スルーしてみたら面白いかなって思ったけど、お礼を言う場面でやる事じゃないから自重しよう。



 手伝ってくれた全員に吹きかけ、ついでにお姉ちゃんにも吹いておいた。

 飴と違って在庫が無いって訳じゃないし。


「それじゃ私達も帰るねー。ばいばーい」


「美味しかったよー。ばいばい」


 美味しかった? あぁ、飴か。



「さて、それじゃ俺らも飯食いに行こうか」


「あーい」


「そだね。それじゃ妖精さん、また後でね」


 あぁ、魔人さんはすぐ再会するか。

 っていうかこっちもさっさとご飯食べないと、集会が遅くなっちゃうな。




「それじゃ、ちょっとシルクを呼んでくるよ」


「はいよ。あれ、カトリーヌは?」


「あー、まだ原型を留めてたら持ってくるよ」


「どういうことなんだよ……」


「察して」


 私に言えるのはそれだけだ。



「あれー、カトリーヌさんも居るのー?」


「あぁ、カトリーヌさんは【妖精】に生まれ変わってうちに住んでるんだよ」


「へぇー。わざわざ作り直したんだー」


「今は脆い体を満喫してるみたいだよ。まだ生きてたら上げるねー」


「んー? 上げるってー?」


 まぁ普通に考えたら当然の疑問だな。

 でもあの人普通じゃないからな。いや、上げるとか言いだす私も既に十分問題か。



「いや、息があってもどうせ時間の問題だろうから、どうせ死ぬならめーちゃんの栄養になってもらおうかと」


「でも根っこ使えないよー?」


 割と普通に受け入れるんだな。

 まぁ既に私を刺した事もあるし、そんなもんか。


「足に塗り付ければ飲めるでしょ? さっき熊さんの血、飲んでたし」


「わー、バレてたー」


「そりゃあれだけ鼻血噴いてるのに足元が妙に綺麗ならバレもするでしょ」


「んー、恥ずかしーなー」


 いや恥ずかしいポイントが判らん。

 どういう基準なんだよ。




「それじゃ改めて行ってくるー」


「おー。あんまりグロいのは勘弁してくれよ?」


「それは私の自由にはならないかなー」


「持ってくんな。せめて布か何かで隠してくれ」


「はーい」


 私だって見たい訳じゃないんだぞ……と思いつつ玄関をくぐり、お風呂場へ向かう。

 一応途中で大き目の布を一枚拾っていこう。


 うん、脱衣場に服が置いてあるって事はまだ居るんだな。

 っていうかシルクの服まで置いてあるのは何だ?

 汚れちゃうから脱いだのかな。



「シルクー、ちょっといいー?」


 中から柔らかい物を叩く音が聞こえるので、ドアを開けずにノックして呼び出す。

 少しだけドアを開け、奥が見えない様に体で遮って顔を出すシルク。

 うん、気遣いの出来る良い子だ。


「そろそろご飯の時間だから、体洗って服着ちゃってね」


 こくんと頷いて奥に戻ろうとする。


「あ、まだ生きてる?」


 振り向いて頷いた。

 どういう状態なのかは聞かないでおこう。



「それじゃアレも一緒に水洗いしておいてくれる? 新しい子のエサにしちゃうから」


 エサって言い方はめーちゃんに対してどうかと思うけど、ペットのエサみたいな扱いの方がカトリーヌさん喜びそうだし。

 だからシルクはそんな怖がる様な顔になるんじゃない。私だってそんな趣味は無いんだ。



 ん、メッセージ? カトリーヌさんからか。

 なんでわざわざ…… って思ったら、もうまともな声は出せないからって書いてあるな。

 ありがとうございますはともかく、解ってきたようですわねってなんだ。

 私だって別に解りたくは無いんだよ。




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