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130:検討しよう。

 うーむ、どうしたものか。

 いや、どうもこうも私に出来るのはせいぜい「手伝ってあげてー」って人にお願いするくらいだけどさ。

 プレイヤーはともかくNPCなら大抵のお願いは聞いてくれそうだし。


 まぁあんまり人の力を当てにするのは良くないよね。

 いや、この体じゃ力仕事になると当てにせざるを得ないんだけどさ。

 っていうか色々手伝ってもらっといて今更過ぎるけどさ。



「あとー、行く当ても無いんだよねー」


「あれ、さっきのところに戻るんじゃダメなの?」


「んー、エドおじさんはお世話してくれてたけど、あれは敷地に生えてたから仕方なくって感じだったしねー。少なくとも歓迎はされないよー」


 まぁめーちゃんを植えても、少なくとも現状では畑には良い事が何も無いもんなぁ。

 【樹人】スキルを伸ばしたら何か良い物が出て来るかもしれないけど、今は根っこで突き刺すくらいだし。

 どうでもいいけど生えてたっていうか植えられてた?

 うん、本当にどうでもいいな。


 ってかそういえば、珠ちゃんはよくあの初撃を回避したな。

 どうやって察知したんだろう。勘かな?

 音や振動っていう線もあるか。



「それにー、エドおじさんは説明すれば解ってくれると思うけどー、他の人達からは今まで以上に嫌われちゃっただろうから、居心地が凄く悪そうだよー」


「うぅ、なんかごめんよ……」


「さっきも言ったけどー、私が殺しちゃったからなんだしー、白雪ちゃんは気にしなくていいよー」


 そうは言ってもなぁ。

 殺されたのが【妖精】じゃなかったらもう少しマシだっただろうに。

 まぁ言っても繰り返しになるだけだからやめておこう。


 あ、そういえばもう少し高い所を飛んでれば大丈夫だったんじゃないか?

 地面から根っこがランダムに飛び出てくる所で、地表に留まってて良い体ではないだろ。

 まぁこれも既にやっちゃったことなんだから反省くらいしか出来ないけどさ。




「あ、ごめん。ちょっと行き先の話の途中だけど、気になった事聞いて良い?」


「んー? いいよー。何ー?」


「私を貫いた後って、その根っこで吸ったんだよね?」


「んー。そうだねー。刺した根っこが勝手にじゅるるーって吸っちゃったよー」


 あぁ、刺さったら自動で吸収までするんだ。

 ていうかじゅるるって擬音はどうなの。



「どんな感じだった?」


「白雪ちゃんちっちゃいから、吸い始めてすぐにしなびちゃってたよー」


 あー、一瞬で吸い尽くされたのか。


「味とか養分はどうだったの?」


「んー、さいこーだったー。でも、自分の味だなんて妙な事気にするんだねー?」


 うん、まぁ普通の質問では無いな。



「いや、何となくね。そっか、美味しかったんだ」


「んー。あのスキルと比べても段違いー」


 あの…… あぁ、【施肥】か。


「もー、とろりとしててたまんなかったー。白雪ちゃんの体液、本当に美味しかったよー」


 むぅ、好評なのはいいけど何か恥ずかしいな。

 聞いたのは私なんだけどさ。



「栄養の方もすごかったよー。その一口で一食の半分くらい賄えたしー」


 上半身だけでそんなに栄養があるのか。

 全身なら一食分くらいになるのかな?


「飲んだ後、何か異常は無かった?」


「んー? 特におかしなところは無かったけど、どしたのー?」


 ふむ、【樹人】には無害なのか、それとも汁を啜るだけなら毒性はないのか。

 よく判らないけど、まぁ害が無いなら良いか。

 私はともかく、カトリーヌさんは刺されてみたがるかもしれないしな。



「いやね、私の体を食べた人がおかしくなっちゃってたからさ」


「んー、そうなんだー。大丈夫でよかったー」


 まぁせっかく大丈夫だったのに、結局そのすぐ後に死ぬ羽目になってるけどね。


「しかし美味しかったなー。普段の土なんて比べるのもばかばかしいよー」


 普段はどんな味なのか、少し気になるぞ……



「もーこれなら、普段の土に混ざってて欲しいくらいだよー」


「いや、そんな無茶を言わないでよ。……まぁ混ぜやすそうな状態には結構なってるけどさ」


 挽肉になったりダイスカットされたりね。

 ついさっきもめーちゃんのお尻に染み込んだばっかりだし。

 ……今、お尻から良い匂いしてるんだろうか。

 いや、気にしないでおこう。うん。




「んでー、なんだっけー? あ、そーだ。行き先だったー」


 めーちゃんが話を元に戻す。


「んー、どーしよー。役場のお庭とかは許して貰えなさそーだなー」


「そうかな? なんか許して貰えそうな気もするけど」


「いやー、結構邪魔になるし。それになんだかこの体って、あんまりNPCに好かれないんだよねー。なんていうか、『友好的な魔物』くらいの距離感がある気がするよー」


 ふむー、【妖精】の基準で考えちゃいけないか。

 まぁ確かに【養分吸収】のスキルとか、もの凄く魔物っぽかったけどね。

 いや、全く他種族(ひと)の事言えないんだけどさ。酸吐いたりするし。


「それにあんまり騒がしいのは好きじゃないから、人通りの多い所は避けたいんだー。まー贅沢なんて言ってられる状況じゃないのは解ってるんだけどねー」


 うん、まぁそういう事言えるのは、自分のお金で買う土地を選ぶ時かな?




 んー、移動する事になった原因は私にもあるし、知らない顔は出来ないな。


「めーちゃんめーちゃん」


「んー?」


「行く当てが無いなら、良かったら家に来ない?」


「んー、白雪ちゃんのお家ー? 私、くり抜かれてお家にされちゃうー?」


「いや、何でそうなるの……」



「んー、私が【妖精】のお家に入るなんて無理だよなーって思ってー」


「そこから発想が飛び過ぎでしょ。まぁそういうのじゃなくて、家の庭に植えようかってことだよ」


「あー。お庭って広いのー?」


「うん、めーちゃん一人くらい全然問題ない位には。あ、少しは人が通る所の方が良い?」


 それだと門の近くになるから、モニカさんに整備して貰わないとだ。


「んーんー。別に通らなくても構わないよー。あそこだって一日誰も通らないなんて事もあったしねー」


 別に隅っこの方でもなかったのにな。

 まぁそれはともかく普通に庭で良いって事だな。



「どうする?」


「んー、それじゃーお願いするよー。お返しが出来るように頑張るねー」


「気にしなくていいけどね。どうせ貰った土地だし」


「んー、由来は関係ないよー。ありがとうと思ったら、お礼をするんだよー」


「うん、それじゃ期待して待つことにするよ」



「よーし、それじゃーさっそくお引越しだー。いこっかー」


「あれ、動ける様になったの?」


「むりー」


 ダメじゃん。




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