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12:不遇らしい。

 笑顔のお姉ちゃんを威嚇していたら、パネルを見ていたアヤメさんが口を開いた。


「うーん、召喚士を選んじゃったんだねぇ」


 どうしたのかな?


「うん。猫って聞いた瞬間にそれに決めた」


「猫に釣られたのか……」


「あー、雪ちゃん動物に全力で逃げられるもんねぇ」


 苦笑して言うお姉ちゃん。

 ちなみにお姉ちゃんは犬派である。



「召喚士って何か問題があるの?」


「んー、このゲームでは召喚士は不遇っていうかソロ職っていうか」


「召喚獣もパーティーメンバーの人数に数えられてしまうので、パーティーを組んで貰いづらいのですよ。

 序盤はまともな戦力になるような子も呼べませんから、そこに経験値を吸われるのを嫌がる人が多いんです」


 こちらの質問は聞こえてない筈なのに、続けて説明してくれるレティさんであった。



 うーん、それって召喚獣が強くなってくれば解消される問題なんじゃないかな?

 でも他の人が気にしないくらい強い子が呼べるようになったら、わざわざパーティー組まなくても召喚獣だけでなんとかなりそう。

 誰かの都合が悪くてメンバーが欠けるとかレアアイテムを誰が貰うか揉めるだとかって心配も無いし。


 まぁ私はそんなことよりモフれればそれでいいのだ。



「私達はそんなの気にしないけどねー」


「まぁね。召喚獣が弱いのだって最初だけかも知れないしな。召喚士だって事は何も問題ないよ」


「開拓の先頭に立ちたいってプレイでもありませんしね」


「だから雪ちゃんもパーティーに入ろう!」



 うん、気持ちは凄く嬉しい。

 でもお姉ちゃんは大事なことを忘れている。 二人はわかってるみたいだけどね。

 召喚士のデメリットなんて吹けば飛ぶような些細なことなのだ。



「ありがたいんだけど、私が一緒に行くのは無理だよ」


「嬉しいけどそれはダメだってさ」


「えっ? なんで!? 一緒に遊ぼうよー!」


 声が大きいってば。耳が痛いよ。



「あんた、白雪ちゃんが【妖精】だってこと忘れてないか?

 私たちが普通に動いた所にぶつかるだけで死んじまうんだぞ?

 それを気にしながら動いてちゃまともに行動出来ないだろって言ってくれてるんだよ」


 私が思ってる事そのままの的確な説明ありがとうございます。

 こっちを見たお姉ちゃんに頷いてみせる。



「でも……」


「いいから。私は私に出来ることを探して楽しむから、皆で冒険を楽しんでよ。

 無理に一緒に行ってもロクなことにならないから」


「しつこいんだよこのバカ姉だってさ」


 ちょっと待て。意訳し過ぎだアヤメさん。

 慌てて両手で×を作って首を振っておく。


「ちょっと、ちゃんと教えてよー!」


「わかったわかった。そう怒るな。

 自分は自分で楽しい事探すから、皆で頑張ってくれとさ」


 今度は頷く。



「……うん、わかった。でも私に出来ることがあればいつでも言ってね?」


 納得してもらえたみたいだ。

 実際、私を守りながらまともに戦えるはずがないのだ。


 出来たとしてもただのお荷物でしかない。

 そんな迷惑をかけるのは御免だよ。



「話は変わるけど白雪ちゃん、【アイテムボックス】取ったのか?」


 お姉ちゃんのしんみりした空気をぶった切ってアヤメさんの質問が飛ぶ。


「え? うん、一応【アイテムボックス】の機能は持ってるけどなんで解ったの?」


「いやさ、このゲームお金も普通にアイテムの扱いだからさ。

 鞄も何も持ってないし多分ボックスだろうなーって思ってね。

 あ、ちなみに【アイテムボックス】は町中で使って良いスキルだから」


 使って大丈夫なんだ。



 出したままだったパネルを一旦全部消去して、アイテムパネルを開いてみる。


──────────────────────────────

 ・妖精の鞄 x1

 ・妖精の弓 x1

 ・妖精の矢 x100

 ・銀貨 x10


 空き容量 88%

──────────────────────────────


 弓矢は初期スキルで【弓術】を取ったから貰えたのかな。

 あとは鞄とお金か。



「鞄と弓矢と銀貨十枚持ってた」


「【弓術】を取ってたのか。所持金は普通だね。

 お金は銅貨、銀貨、金貨、白金貨があってそれぞれ百枚で繰り上がるよ。


 ……ちょっといいかな、白雪ちゃん」


「えっ?どうしたの?」


「試しに銀貨を一枚取り出してみてくれる?」


「うん、いいけど」



 ボックスを出して手を突っ込む。

 手に触れたでっかい銀貨を掴んで……動かぬ。


 両手を突っ込んで気合を入れて引っ張り出す。おっもい!

 持ち続けるのが辛いのでレティさんの手の平に置かせてもらう。


 十キロくらいあるぞこれ……



「あー、やっぱりか」


「あぁ、成程。重量が千倍になるとすれば、硬貨ですらかなりの重さになってしまう訳ですね」


 お買い物するだけの事が凄い重労働になりそうだ。

 とりあえず出した銀貨を持ち上げてボックスに押し込んでおく。



 ん?出してた時89%で入れたら88%。

 試しに二枚出してみる。90%になった。

 え、これ小銭百枚分くらいしか入らないの……?

 【空間魔法】のレベルアップでなんとかなるんだろうか。


「出し入れしてるけどどうしたんだい?」


「いや、なんか銀貨一枚で容量1%とか使ってるみたいで」


「えぇ?結構一杯入るはずなんだけどねぇ。

 あぁ、そこも妖精仕様なのかね……」


 くそう。妖精に厳しい世界め。



 弓矢と鞄は名前にわざわざ「妖精の」って付いてるから大きさは大丈夫だろうな。

 試しに弓を引っ張り出してみる。


 うん、私サイズだ。

 町中で武器なんて出すもんじゃない。さっさとしまっておこう。

 武器って呼べるほどの威力はどう見ても無さそうだけど一応武器だ。



 鞄も見てみる。

 おっきいウェストポーチって感じだ。

 翅があるから背負えないし、肩掛けだと飛ぶときに安定しないからかな?


 【アイテムボックス】が無ければこの鞄を最初から身に着けていたのだろうか。

 だとしたらこれ、見た目以上に物が入る鞄ってやつなのかな?



 聞いてみたら「そのはず」とのこと。


 試しに銀貨を一枚入れてみた。おっきいポーチだと思ったけど銀貨がちょうど入るくらいの幅だな。


 おぉ、入った。入れたら重さも感じなくなった。

 これは便利だな。どれくらい入るんだろう?



 あっ、【鑑定】使えば見られるかな? 町中で使っても大丈夫らしいし。

 えーっと、鞄に集中して念じればいいのかな。


 お、出た出た。


──────────────────────────────

 妖精の鞄

  妖精が持つ魔法の鞄。見た目よりも多くの物を入れることが出来る。

  ※所有者以外の使用は不可能

  ※所有権の移動は不可能


 内容物

 ・銀貨 x1


 空き容量 90%

──────────────────────────────


 うわぁ、銀貨一枚で10%減ってる。

 初期のお金の分の容量しかないじゃないか……


 注釈は要するにキャラ固定アイテムって事かな?



 気になって試してみたけど、やっぱり中身が入っているとボックスには入れられなかった。



 とりあえず銀貨を半分入れて腰の後ろにつけておこう。

 無駄にスキルがバレるのも防げるだろう。

 別に隠す気もないけど。


 ただ一つだけ言いたい。なんでピンクなんだ。



「あれ?そういやさっき【アイテムボックス】の「機能」ってわざわざ言ってたけど何でだい?」


「あ、それは私が取ったのは【アイテムボックス】じゃなくて【空間魔法】だからだよ。

 ボックスの効果も持ってるんだ」


「えぇっ!?【空間魔法】ってかなり高くなかった!?」


「三十ポイントだったね」



「何?どうしたの?」


「いや、白雪ちゃんが取ったのは十ポイントの【アイテムボックス】じゃなくて三十ポイントの【空間魔法】だって言うからさぁ」


「それはまた、凄い冒険をしましたね……

 ペナルティ対象のスキルに三十ポイントとは」


「見かけてついつい」


「三十点って「つい」で取るコストじゃないだろう……」



「そのせいで支援取れなくなっちゃった」


「何やってんのさ」


 呆れられた。そりゃそうだ。



「どしたの?」


「そのせいで支援スキル取れなくなったってさ」


「えー? 雪ちゃんの【応援】見てみたーい!」


「ヤダ」


 それだけは断固拒否させてもらう。

 正直この体じゃそれが最適だろうけどお断りだ!




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