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109:お部屋を選ぼう。

「それじゃシルク、お世話してあげて。私は部屋で待ってるから終わったら呼びに来てね」


 人の入浴を見続けるつもりは無いので、シルクに任せて待機することにした。

 荷物の整理でもしてようかな。


「あの、シルクさんが出している手は何なのでしょう?」


「あー、置いてくるから脱いだ服寄越せって事かな。渡したらその間にシャワー浴びてろって言われると思う」


 喋りはしないけどジェスチャーでね。

 まぁ頷いてるからそれは省略されそうだけど。



「そういうことですのね。では、お願いします」


 服と鞄を預かったシルクに付いて出ていく。

 鞄は所有権は動かせないはずだけど、一応持ち運ぶことは出来るんだな。

 あ、そうだ。


「頑張ってね」


「……はい?」


 手をひらひらさせつつ、嫌な予感だけさせておいてやろう。

 ふはは、存分にきれいにされるが良いぞ。


「……え、置いてくる間?」


 何かに感づいた様な声が後ろから聞こえてきたけど、気にせず出て行こう。





 自分の部屋に戻って荷物を整理して、ベッドに転がってごろごろしているとドアをノックされた。


「はいはーい」


 返事をしつつ起き上がり、ドアへ向かう。

 部屋を出るとカトリーヌさんを抱えたシルクと目が合った。

 ……あ、伏せられた。まぁいいや。


 カトリーヌさんは服の上からガウンを着せられてるみたいだけど、ちょっとダブついてるな。

 あぁ、そりゃ私用のだとサイズが合わないか。

 まぁ羽織るだけだから少しくらい余っても問題は無いわな。

 歩くなら踏んづけたり引きずったりするかもしれないけど、私達には関係ない。

 っていうか運ばれるし。



 ……カトリーヌさんの顔がなんか赤いのはお風呂上りだからだな。うん。

 妙にシルクに密着してるのも気のせいだろう。


「それじゃ、カトリーヌさんのお部屋を決めようか。好きな所を選んでいいよ」


 返事が無い。


「おーい、聞いてるー?」


 このままで居られても困るので、横に回って足の裏をツンツンしてやった。


「ひぁっ!?」


 おぉ、反応した。

 この人の場合、つねったりしてもそのままうっとりしてそうだからな……




「す、すみません。部屋ですわね。どうしましょうか……」


「特に希望が無ければ、この隣にするけど?」


 四階の部屋は広めだし、バルコニー付きで他の部屋より良いからね。

 あとまとまってた方がシルクが楽そうだし。

 まぁこの子の場合、楽になるのを喜ぶかは微妙な所だけど…… まぁいいか。


「うーん…… そうですわね。では、そうさせて頂きます」


 少し考えて提案に乗るカトリーヌさん。

 まぁ特にこだわりが無ければどの部屋でも良い訳だし、そうなるか。



「それじゃ荷物を…… って思ったけど、今はお金くらいしか無いか」


 ドアを開けて先導しつつ提案して、自分で突っ込む。


「はい。しかし何もないお部屋というのは、広く感じる物ですわね」


「だねぇ。後で家具を買いに……ってこのサイズの家具なんて売ってないか。作るか注文するしかないなぁ」


 アリア様に頼むのは論外として、フェルミさんはアクセサリー職人だし……

 いや、ドアも作ってたし依頼すれば作ってくれそうではあるな。

 モニカさんも【細工】持ってるけど…… うん、なんか無いな。

 変な気合いの入った物を作って来る予感しかしない。



「とりあえずベッドと机に椅子くらいは欲しい所ですわね。作った事はありませんし、生前と違いお金はありますので注文すると致しましょう」


「いや生前って」


 別に今はお金持ってるからとかでいいだろ。


「まぁいいや。とりあえず部屋はここって事で、早速働いて貰うとしようか」


「働く…… あぁ、【妖精】のお仕事という奴ですわね」


「そうそう。それじゃシルク、降ろしてあげて。お留守番お願いね」


 バルコニーに続く戸を開けながら告げると、カトリーヌさんを抱いたまま付いてくる。

 どうしたのかと思ったらわざわざ表まで出てから降ろして、ガウンを回収して戻っていった。

 そこまで徹底するか。

 




「蜜を溜めてる瓶は預けてあるから、戻ってきてもらわないといけないんだ」


 半端な説明をしながら管理室の前まで行って、呼び鈴を起動する。


「これに魔力を通すと、この庭園の管理人さんを呼び出せるよ。私たちは瓶が持てないから、アシスタントもして貰うの」


「シルクさんではいけないのですか?」


「んー、多分持てるとは思うけど…… 管理人さん、【妖精】と仕事するためにここに来たような人だから……」


 初日にちょっと後回しにされそうになっただけで崩れ落ちてたからな。

 外すとか言ったらどうなることやら。

 とりあえず机の上で適当に遊んで待っていよう。




「お待たせ致しました私ここの管理人兼使用人のモニカと申しますよろしくお願い致しますお名前を伺ってもよろしいでしょうか妖精さん」


 ダッシュで帰ってきたと思ったら滑り込むように机の端にしがみつき、こちらと視線の高さを合わせてまくしたててくる。


「言っても無駄でしょうけど落ち着いて下さい」


 大声じゃないところは評価するけどさ。

 カトリーヌさんは引き気味に挨拶を返す。まぁ仕方ないよね。

 っていうかさっき、なんか変な単語が混ざってた様な…… 気のせいか?




「いやぁ、今日は中々呼ばれないのでやきもきしておりましたら、【妖精】の気配が二つになるではありませんか。我慢しきれずに仕事を放棄して戻ろうか迷っていた所です」


「あー、まぁいろいろありまして。あとそんな事を迷わずにちゃんと仕事してください。で、それはさておき瓶をお願いします」


「はい。少々お待ちください」



 モニカさんが瓶を取りに行ったところでカトリーヌさんが口を開く。


「流石に少々驚きましたわ……」


「まぁあんな勢いで来られたらね」


「なんと言いますか、非常に濃い方ですわね」


「うーん、カトリーヌさんはそれを言う資格は無いかな」


 いや、ほんとどの口で言うのか。



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