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間の世界  作者: りちゃーん
現実と架空
2/23

真実

祐太の軽い体は簡単に左右に大きく揺れ、とっさにシートベルトに掴まった。

「そうだぞ!しっかり掴まれええぇぇっっ!!!」

オジサンは、ますます車を飛ばし、ハンドル近くにある赤いボタンをポチっと押した。

すると次の瞬間、いきなり周りの風景が変わった。いや、風景が変わったのではない。車自体が移動したのだ。不思議な感覚のまま窓から外を見ると、辺りは鉄骨で敷き詰められていた。

ギギギギイィィィ――ッ!!

オジサンは急ブレーキをかけると、車が完全に止まったことを確認し、ため息を1回ついてから車から降りた。

「ほら降りな。ここが俺の家だ。ゆっくり話そうぜ」

車の後ろ座席にまわり、車のドアを開けて祐太の方を見ながら言った。

「・・・・・・」

「あ、ちなみにさっきのは、車の瞬間移動な。この車、俺の手作りなんだぜ?」

自慢気なオジサンに対して、ポカーンと口を開くことしかできない祐太。家の中に恐る恐る入ると、そこは機械だらけだった。どうやら、発明が本業らしい。客用の部屋に連れていかれ、無造作に置かれた座布団に座らされた。オジサンは向かい側の座布団に座ると、ちゃぶ台に両手を置いて話し出した。

「良いか?よく聞け?まずは大まかなことから説明するからよ…」

オジサンの表情は一変。真剣なまなざしになって、祐太の方を見つめる。祐太は無言でうなずく。

「ここはな、実は、お前の脳みその中だ。・・・まぁつまり、夢の中ってことだ」

「夢・・・」

祐太はツバをゴクンと飲み込んだ。

「ああ。しかも舞台は地球じゃない。ワンドリーム星っつってな。ここには滅多に地球人が訪れないもんだから、こんなに大騒ぎになってんだ。お前が居たのは、地球で言う空港所みたいなもんかな。あの場所から、他の多くの星からの観光客が来る。だからお前はあの時に、どこの星から来たのかを聞かれた」

「ワンドリーム星・・・。じゃぁ何で、星も違うのに、言語も外見も地球人そっくりなの?」

オジサンは一瞬目を見開いてから、高らかに笑った。

「はっはっはっはっ!!それは、これはお前の夢の中だからだよっ」

「あぁ、そうか…。ってことは、僕が目を覚ませば、元の世界に帰れるってことですよね?」

「ん?あー、それがだなぁ」

言葉に詰まったオジサンに首をかしげる祐太。するとオジサンは突然、話を変えるようにして自己紹介を始めた。

「あぁ、そうそう、言い忘れてたけど俺の名前はガリットだ!宜しくな。それと、お前を助けたときな。あれは、俺の渾身の発明、超瞬間移動メカだ!俺がアレに乗って、一瞬で人混みの中からお前を救った。見た通り、俺は偉大な発明家だ。この星では有名なんだぞ?すごいだろ!!」

「は、はぁ…」

(確かに凄いけど、これはあくまで僕の夢の中だからな…)

「それとな!このメカは...」

それからガリットの自慢話は永遠に続いた。祐太は何とも言えない気持ちでその話に付き合い、気が付けば外は薄暗くなっていた。ガリットの話の途中で、祐太はゆっくり手を挙げる。

「あのぅ、いつになったら僕は夢から覚めますかねぇ」

「はぁ?夢の中の俺が知ったこっちゃねぇよ!?ひ、暇だったら、外にでも遊んで来い。あ、その前に、ちとこっち来いよ」

祐太は、呼ばれると返事をして、言われる通りに、ぎこちないロボットに座らされた。ガリットがレバーをゆっくりと下ろすと、たちまち祐太は煙に覆われる。

「ごっほ、ごっほ・・・・・・何だこれ」

「よっしゃ、これで完了。一件落着~」

祐太が咳をしながら、周りの煙は立ち去った。なんと、祐太の顔や体は別人になっていたのだ。

「変装マシン!これでお前が``地球人の安藤祐太´´ってことはバレるまい」

「オジサン、何で僕の名前知ってるんですか?」

「だから言ったろー?ここはお前の夢の中だからだよ」

祐太のしっとりとしたショートヘアは、ワックスがけのツンツン頭に。おっとりとした目元は、シャキっとした吊り目に。さらに、にょろんとした体つきは、ガッチガチの細マッチョへと変貌を遂げていた。身長もやや高くなったようだ。鏡で自分の姿を見た祐太は結構引いたが、少しだけ自分に勇気が湧いてきた。

(夢の中なら何でもして良いだろう?パパラッチとか、一度は受けてみたかったんだよね)

「じゃーね、オジサン!」

「おう!あんまり遠くまで行くなよ!」

祐太はご機嫌のまま外へ出て行った。


外の世界は、一見地球とは変わり無い。

(地球のほかにもこんなに綺麗な星が・・・って、これは僕の夢の中か)

祐太は、細い路地から大通りに出た。道に沿って商店街が多く立ち並び、車も通っている。夕飯の材料を買いに来たのだろうか、母と子が楽しそうにスーパーの前で手をつないでいる。ファミレスには、窓越しに、外食をしている家族が見えた。疑うほどリアルで、現実に近い世界。何だか、家族と離れて迷子になった気分だ。

(早く帰りたい)

祐太にとっては、こんなに長く孤独に感じる夢は初めてだった。足を進めるほど寂しさが増し、歩くスピードが少しずつ遅くなっていく。気が付けば、家電販売店の前で1人、ポツンと立ち止まっていた。店では、薄型テレビが売られている。電源が入っていて、音声が右耳から入ってくる。

``ワンドリーム星に4年ぶりに地球人が訪れた、ということですが´´

``ええ。とても嬉しいですね´´

祐太はビクっとして、テレビに顔を近づけた。

``今日は、4年前に我が星にやって来た、地球人の稲葉一さんに来てもらっています´´

``どうも、こんにちは´´

(僕の他にも、たった4年前に地球人が...?しかも、まだワンドリームに居るって…)

テレビに釘付けになっていると、後ろからいきなり、女性に声をかけられた。


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