T字路交差点6
相変わらずラミアは佇んでいた、変化の起こらない世界で。
「どうすればいいんだろ、いろいろ考えてみたけど何も変わらないよ……」
独り言をつぶやいたその時、右腕に痛みを感じる。
「痛っ」
右腕を見ると、うっすらと血が流れている、鋭利な刃物で切られたような傷が出来ていた、幸い深い傷ではないが、その傷を見ていると、今度は左腕に同じような痛み。
「なによこれ、痛い、痛いってば」
周りを見渡しても何も飛んでは来ていない、だが、体のあちこちにどんどん傷が増えていく。
「やめてよ」
だが、さらに勢いを増した見えない刃物は、ラミアの体を切り刻もうと、切りつける。
「やだ、もういやぁ――」
服はすでに切り裂かれ、身体があらわになっていた、状況を変えようと地の文を遮ろうとするが、恥ずかしさが集中を阻害し、遮ることができない。
「恥ずかしい……見ないでぇ……見ないでよぉ!」
誰もいるはずのない世界に向かって叫ぶラミア、全身は真っ赤に染まり、真っ白なはずの世界に赤い色を染み渡らせてゆく。
「どうして、こうなるの……どうして」
意識が薄くなっていく、それだけの血をラミアは流していた、意識をつなごうと体を動かそうとするが、もう手足の感覚は既になくなってきていて、ピクリとも動こうとしない。
「あたし、ここで――」
ふと、あの『T字路交差点』の風景が蘇る。
光球を撒き散らしているとき、作者に邪魔されて怒っている自分。
作者に踊らされて自己紹介している自分。
走馬灯のように次々と浮かんでは消えてゆく。
(帰りたいよ)
帰りたいのかい?
(うん、帰りたい、死にたくない)
本当にそう思うのかい?
(うん)
それならきちんと言葉にしようか。
「あたしは……あそこに、帰りたい」
掠れた声で、なんとかつぶやくラミア、それに応えるかのように心に言葉が響く。
お前さんは素直すぎるんだよ、いい意味でも悪い意味でもな。
だからこそ言霊が素直に働く、なぁラミア、忌み語って知っているか?
お前の降り立った日本っていう国は使ってはいけない言葉があるだよ、状況に応じてな。
それじゃ次は、あの時お前以外が喋った言葉、思い出してごらん。
『as for the kind which summons self, a shield name turns down all the calamities, as for the Aegis effect -- it can appear and protect』
(我は召喚する種類は盾名前はイージス効能は全ての災厄を退けるもの現れて守れ)
その瞬間、ラミアの前に巨大な盾が現れ、見えない刃が甲高い音を立てて弾き返される。
(うそ……)
上出来だよ、そしてこれが最後だ、どこに帰りたい?
「T字路交差点……」
その言葉に反応するかのように、一瞬にしてラミアの姿はこの世界から消えた。
えっと、波乱を起こせませんでした^^;
回収すべきものを回収しただけですね~
読んでいただいてありがとうございました。