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黒き拳帝と剣帝と剣精  作者: 金時
第2章 王都ウトガルド編
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第7話 出会い3

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






「あ、ありがとうございました」


先程まで泣き続けていた女性は落ち着き身体を離し御礼の言葉を述べてきた。もう、大丈夫なのだろう。


「どういたしまして。それより何か着た方がいいぞ。いろいろ丸見えだ。」


「・・・へ?・・・キャーー!」


初めは何を言われたのか分からずにキョトンとし、少しの間のあと自身が一糸纏わない裸であることを視覚で認識し高い悲鳴を上げた。慌てて両手で身体を隠そうとするが、既に手遅れな感が否めない。現状に到るまでの長い時間トールは女性を何度も見ていたのだから。


「あう、あう~~///」


顔をこれでもかというほど真っ赤にしながら再び涙目になる女性。余りにも恥ずかしかったのだろう顔も見れないと言う風に俯いてしまった。


トールは女性に気を使いながら静かに歩み寄り優しくローブを掛けてあげる。これで身体を隠すといい、と無言で優しくしてくれた。


「あ、ありがとうございました」


女性は恥ずかしがりながらもしっかりと御礼を口にした。


「いや、これくらいなんでもないさ」


「い、いえ‼このローブのことだけでは無くて、野盗に捕まっていたところを助けてくださったことをとても感謝しています。本当に有難うございました‼」


何でも無いというふうに口にした男性に再度しっかりと御礼の内容を伝えた。それでも男性の態度が変わることは無かった。


「気にしなくていい、貴女達の運が良かっただけさ」


そんなことを口にするのだ。野盗に捕まった後の末路は悲惨な物でしかない。野盗の慰み物になるか、売られて奴隷になるくらいしか無いのだ。命を救ってもらったといえるほどのことをしておきながら、何でもないと簡単に言ってのける。とても普通の反応ではない。彼女にとってまさしく彼は物語の中の勇者か、白馬に乗った王子様と言った感じに見えているのだ。


「貴女達が無事で良かった」


「・・・////////」


穏やかな微笑みと共に投げ掛けられた言葉に思いっきり赤面してしまう。人間ここまで赤くなるのかというほどだ間違いなく彼女の人生の中で一番赤面した日になるだろう。


「あ、あの///紹介が遅れました、私はフェルミ・ウォーター・シルミスといいます。」


「俺はトーマ。さっきから後ろで沈黙しているのがマリィだ」


「よろしく」


「あっはい、宜しくお願いします」


マリィがとてもおとなしく静かだが、今日初めて会ったフェルミは今の態度が彼女の普段の態度なのだろうと思った。


「嫌なことを聞くが、フェルミはどうして野盗に捕まったんだ?」


その言葉を聞いて彼女の表情が一気に暗くなる。相当嫌な思いをしたのだろう。震える声で静かに話していく。


「私はここから一番近い国ウトガルドの学生なんです。私はその学園の高等学部一年生で、私はそこで魔法での戦闘技術を教わっていました。私は将来戦うお仕事に着く気は無かったのですが、両親が家の家名に箔を付ける為に、私を学園に通わせました。幸いと言うべきなのか、私は高い魔力と珍しい治癒魔法の使い手だった為、直ぐに学園で有名になりました。学園始まって以来の治癒魔術の使い手だと。」


フェルミは一度そこで、言葉を区切る。今日までのことを思い出すように。


「私はSクラスで同じ教室の仲間達と楽しく過ごしていました。私達の学園は社会勉強として高等学部一年生になると、冒険者として登録するのが義務付けられています。ですが、それには何の問題もありません。私達はそれを承知して、または望んでこの学園に入ったのですから。毎日の授業で戦いに関する知識と技術を何年間も学び私達は少なくない自信がついていました。」


再び一拍置いてトールに貰った水を口に含む。おそらく、ここからが彼女が野盗に捕まる話しになるのだろう。フェルミは深呼吸をして落ち着いてから話し始めた。


「冒険者登録をしたその日に当然の流れで仕事を受けることになりました。私達Sクラスは将来を有望視される人達の集まりで私がチームを組んでいた他の四人もとても優秀な人達でした。仕事の内容は近くの村の警邏で、特に危ないと言う情報も無く全員一致でその仕事を受けることになりました。一日目の警邏が終わり、一人を外の警戒として残し他の皆は部屋を借りて休んでいました。・・・暗い夜の中になんの前触れも無く赤い火が灯りました。私は次の警戒の準備で起きていたからその灯りの不審さに気づきました。それは火の攻撃魔法の光でした。近くの馬小屋が破壊され、私達が泊まっていた警備小屋が真っ先に襲われました。私は皆と合流する為に部屋の外に出ました。・・・でも、私が見たのは野盗に殺されたチームの皆の姿でした。私は何も出来ずそのまま野盗に捕まって、あとはご存知の通りです。」


そこで、彼女は自嘲の笑みを浮かべた。


「笑ってしまいますよね、Sクラスって持て囃され、将来を有望視されていた私達が野盗一人も倒せずに呆気なく負けちゃうんですから。・・・そして、私はそのあと、その後・・・うわ~ん‼」


フェルミはあの辛かった時の事を思い出して再び泣き崩れてしまった。トールもまたフェルミを優しく抱きしめて上げていた。






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