第6話 出会い2
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「マリィ、落ち着いたか?」
まだ抱きしめ合った状態で優しく問いかける。
「はい、大好きですトール。」
「・・・落ち着けたのなら良かった」
トールの優しい声に未だ幸福の絶頂にあり、心此処に在らずといったような状態だ。一先ず落ち着けたのなら良かったと思うことにする。マリィを無理やり引き剥がすのは躊躇いがある為、腕に抱き着く様にしてもらう。これで、どうにか状況を進展させられるだろう。地面には未だに気絶している野盗が寝転がっているのだ。まずはこいつ等をどうにかしなければならない
「野盗・・・か、此処で殺してもいいが、金になるならこのまま捕縛して連れて行くのもありだな」
それに、野盗なら何処かにホームとなるアジトを構えている筈だ。其処にも金があるかもしれない。金はこれから必要になることが増えるだろうからな、なるべく手に入れておきたい。・・・一先ず捕縛するのが先か。
「マリィ、囚われている女性達のロープを切ってくれ。俺は野盗を捕縛しておく」
「・・・この人達はどうするの?」
「一先ず捕縛して、そこの囚われていた女性達に野盗を連れて行けば報奨金が貰えるか確認してから決める」
「報奨金って何?」
「簡単に言えば御礼金だな」
「う~~、この人達と一緒にいたくないよー。」
いつもならまた難しい言葉禁止って怒るところなんだが、まだ、あの視線の感じが残っているのだろう、微かに震えていた。
「そうだな、あそこに綺麗なローブがあるから、あれで身を隠すといい。大分違う筈だ」
「トールの服がいい」
マリィが、小さな声だったがはっきりと口にした。
「・・・何だって?」
「トールの服がいい」
小さな声で、だがしっかりとした声でそう言われてしまう。上目遣いのオマケ付きで。そこまで言われて、されたら断れる筈が無い。可愛すぎる。何でもしてあげたくなってしまう驚異的なお願いだった。こんなお願いをされたら全ての男が身悶え、悶絶し、保護してしまいたくなるだろう。その神秘的な容姿とあいまって、怖るべき破壊力だった。
トールもその驚異的なお願いに逆らえる筈も無く
「・・・わかった、だがローブはしっかり被っておくんだぞ」
「本当⁉やった‼ありがとうトール‼」
心底嬉しそうに飛び跳ねはしゃぐ姿を見せられたら、まぁいっかと思えてくる。
マリィがローブを着込んでいる時にトールもローブを着る。一張羅らをマリィに渡してしまった為、他に着るものが無かったのだ。
トールは野盗の荷物を漁りロープを探す。女性達を縛っている為、もっていない筈が無い。お目当てのロープを見つけ、一人一人キツク縛って行く。途中見つけたお金は全て有難く頂いておく。野盗を全員縛り上げマリィの所に向かうと女性達を縛っていたロープを全て斬り終わり此方の様子を伺っていた。どうやら野盗に近づきたくなかった為、此方の作業が終わるまで待っていたらしい。
「全員動けない様に縛ってくれた?」
「ああ、問題ない」
トールはマリィに答えながら、囚われていた女性達を観察する。当然だが全員武器を何も持っていない。持ち物検査を受けたのか、それとも、女性達にとって屈辱的な辱めを受けた後なのか、全員が何も着ていない裸の状態だった。
可哀想とは思う、だが同情はしない。この世界は元いた世界とは違い、力がものを言う世界だ。弱肉強食、強い物が貪り、弱い奴が貪られる。そんな世界で生きていながら自衛出来る手段を身に付けないのは罪だ。
トールはこの中で一番情報を持っていそうな女性に目をつけて身体を揺り起こす。
「おい、起きろ」
「・・・う、うーん・・・っ⁉い、いや‼離して‼」
目を覚ました女性は怯えながら悲鳴を上げ拒絶する。意識を失う前のことを思い出したのだろう。自身が裸なのにいっさいきにせず、必死に距離を取るべく後ず去る。
女性の行動に一切の表情の変化をさせずに相手を落ち着かせる為に穏やかな声で優しく話しかける。
「大丈夫。貴女達を襲った野盗は既に無力化してある。落ち着いて。大丈夫、貴女は助かったんだ」
怯えて理性の無かった瞳に理性の色が戻る。周りを見渡す余裕ができて縛られている野盗を見た途端に、何かを思い出したのか一瞬恐怖により身体を震わせる。だが、次第に助かったということを実感してきたのか、怯えていた瞳に安堵の色が宿り、涙腺が緩み瞳に涙が溜まる。
「う、ううう、うわ~ん!」
耐えられなくなったのか、涙を流しながら自分を助けてくれた男性に抱き付き不案を消しさるように強く強く抱きつく。
「大丈夫、大丈夫、大丈夫だ。」
トールは優しく女性を抱き留め優しく撫でて落ち着かせる。
「ううう」
「大丈夫だから」
何も無い荒野に女性の泣き声が長く長く響いていた。何かに耐えるように何かに喜ぶように女性は泣き続けた。トールは優しく女性を抱き留め頭を撫でて落ち着くのを待つことにした。
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