※完了通知:不要な案件(元婚約者)は廃棄済みです
私が冷たく告げると、アルフレッドは絶望に顔を歪ませ、さらに縋り付こうと手を伸ばした。だが、その指が私のドレスに触れるより早く。
「――衛兵。その『不備のあるゴミ』を今すぐ外へ」
カイル様の短く、冷徹な一言がホールに響く。近衛騎士たちが即座に動き、無様に喚き散らすアルフレッドと、最後まで「お金」と叫ぶミレーヌを会場の外へと引きずり出していった。
二人が去ったあとの静まり返った会場に、パサリ、と最後の一枚が舞い落ちた。
【※注釈:これにて、本件の校閲を終了いたします】
だが、私を抱きしめるカイル様の腕には、先ほどよりも強い力がこもっていた。
「……リリアーヌ。あんな男に視界を汚させてすまなかった。口直しと言ってはなんだが、庭園に冷たい飲み物を用意させてある。場所を移そう」
「ええ、喜んで。……でもカイル様、その前に」
私は、彼の頭上で今にも火を噴きそうなほど真っ赤に点滅している文字を指差した。
【※追記:もう限界だ。人前で紳士のふりをするのは飽きた。今すぐ二人きりになって、君を私の色に染め替えたい。愛している。愛している。愛している。愛し――】 (※備考:理性による強制中断)
(……最後、システムが無理やり止めたわね。危ないところだったわ)
「カイル様、注釈が『ゲシュタルト崩壊』を起こして、強制終了されておりますわ。そんなに連打しなくても、お気持ちは痛いほど伝わっておりますから」
私の指摘に、カイル様は一瞬だけ目を見開き、それから観念したようにふっと表情を緩めた。
「……これは失礼。精霊様は、どうやら私よりもせっかちなようだ」
彼は私の手を取り、エスコートのためにその手の甲へ深く、長く唇を寄せた。
「では、改めて。……校閲者。これからの私の人生を、君の好きなように訂正していってくれないか?」
その真っ直ぐな瞳は、頭上のどんな赤文字よりも熱く、私の胸を焦がした。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!
無事に「不備だらけの元婚約者」を廃棄(退場)させることができました!
リリアーヌの冷静な一言と、カイル王子の容赦ない「ゴミ」発言……皆さんにスッキリしていただけていれば幸いです。
それにしても、カイル王子の頭上の注釈、最後は強制終了されていましたね(笑)。
彼の「理性による強制中断」がいつまで持つのか、作者の私も楽しみながら書いています。
【更新について】
ここでプロローグとなるパーティー編が完結です。
次回からは、公爵家へ帰還したリリアーヌを待ち受ける、さらなる「クセ強」な注釈たちとの日々が始まります。
毎朝07:10に更新予定です。もし「面白かった!」「続きが読みたい!」と思っていただけましたら、広告の下にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援いただけると、リリアーヌの赤ペンのインクが補充されます!




