表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女を泣かせたと婚約破棄されましたが、精霊様が『※注釈』で嘘を暴いてますよ? ~元校閲ガールの公爵令嬢は、不実な二人の頭上に【真実】を強制表示させる~  作者: ちいもふ
第4章:【四校】偽りの聖域と、壊れた心の「再校」。――書き損じだらけの愛を、真実の筆跡で書き換えます。
27/28

※乱入:未完の原稿に、招かれざる『朱(あか)』が入る

 鏡面世界の瓦礫がれきの中で、カイル様を抱きしめた体温が、まだ腕の中に残っていた。彼の流した悔恨の涙が、私のドレスに「真実」という名の染みを残している。けれど、物語の神様は、再会の余韻よいんに浸る時間すら与えてはくれない。


 二人の「正解」を祝福していた黄金の残光が、外側から巨大な『×(バツ)』印で塗りつぶされるように、赤黒く染まっていく。


 ――パキン、と。  


 美しい硝子ガラスが弾ける音がする。


「リリアーヌ。……あとは、現実で会おう」


 カイル様の震える声が遠ざかり、代わりに肌を刺したのは、冬の夜のような冷たい空気。  


 次にまぶたを開けた時、私の鼻を突いたのは、鉄さびのような魔力の残り香と、マリエラがき染めていた甘ったるい香料の匂い。


 そこは、現実リアル――王宮にあるマリエラの私室だった。


「あ……、あ、あああぁ……ッ!!」


 床に伏したマリエラの体が、不気味な黒い魔力に焼かれ、すすけた紙屑かみくずのように崩れ落ちていく。彼女がすがり付いていた「偽りの聖女」という設定がインク漏れを起こし、彼女自身の存在を汚染しているのだ。


「そんな……私の、私の愛の物語が、こんな……ボツになるなんて……!」


 折れた羽ペンを握りしめ、のたうち回る彼女。その無様な姿を、冷ややかに見下ろす影があった。寝台の傍ら、まだ意識の戻らぬカイル様の肉体のすぐ後ろに、ボリス王子が立っていた。


「――ふむ。マリエラ、君の『記述』では、やはりこの程度が限界だったか」


 その声を聞いた瞬間、私は言いようのない不快感に襲われた。声そのものはボリス様のものだ。けれど、そこには一切の「感情インク」が乗っていない。


 それは、怒りや侮蔑ぶべつですらない。まるで、あらかじめ決められた台詞プロットを、見えない誰かに言わされているだけの、空虚な響き。


(……ボリス様? いいえ、違いますわ。この違和感、まるで――)


 その時、ボリス様の背後の空間が、ひどく歪んだ。校閲者の眼にだけ見える、空間に直接書き込まれた異常な赤いノイズ。それはボリス様の魔力などではない。もっと上位の、この世界のルールを無理やりじ曲げようとする、暴力的な『あか』の気配。


 ボリス様が、ゆっくりとこちらへ視線を向ける。


「リリアーヌ。君の存在は、今のプロットには『不要な一筆』だ」


「……勝手に私の人生に、赤を入れないでくださる?」


 私は、カイル様の無事を瞳に焼き付け、ボリス様へと万年筆を突き付けた。


「たとえ世界が完結を望もうとも、私のペン先が、その傲慢ごうまんな脚本を却下ボツにして差し上げますわ」

 最後までお読みいただき、ありがとうございます。


 魂を救った直後、リリアーヌ様を待ち受けていたのは、ボリス様を操る不気味なノイズ。二人の歩みを「誤植」として消し去ろうとするこの世界の理に対し、リリアーヌ様は校閲者として真っ向から対峙します。


 次回もどうぞお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ボスキャラを倒したところで、「ラスボス」の登場!は、お約束ですね♪歴代のゲームでもそうですし。演出の仕方は様々でしたけど。……「奴は四天王でも最弱。こんなヤツを倒しただけで我らが怯えるとでも……片腹痛…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ