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聖女を泣かせたと婚約破棄されましたが、精霊様が『※注釈』で嘘を暴いてますよ? ~元校閲ガールの公爵令嬢は、不実な二人の頭上に【真実】を強制表示させる~  作者: ちいもふ
第4章:【四校】偽りの聖域と、壊れた心の「再校」。――書き損じだらけの愛を、真実の筆跡で書き換えます。
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※反射:虚像の恋仲と、黒インクの再校閲

 港町を後にし、王宮へと続く一本道を往く。だが、その歩みは突如として現れた「光」にさえぎられた。


「……あら。随分と、趣味の悪い装飾ですわね」


 目の前に立ち塞がったのは、ドロスト王国が誇る『禁忌魔術師団まがつあやなすもの』。彼らが展開したのは、物理的な壁ではない。空高くそびえ立つ、世界を分断するほどの【広域鏡面魔術・真実の写し鏡】だった。


 巨大な銀盤には、王宮のバルコニーでくつろぐ二人の姿がリアルタイムで映し出されていた。


「あ……」


 私ののどが、小さな悲鳴を上げた。鏡の中、あふれる陽光に包まれたバルコニーで、カイル様がまどろんでいた。その頭を優しくひざに乗せているのは、見知らぬ女――聖女マリエラ。


 マリエラは鏡越しに私を認めると、勝利を確信したような、慈悲深い笑みを浮かべた。


『あら。物語の汚れをチマチマと探す、いやしい「赤入れ(添削者)」さん? 貴女がカイル様のために空けておいた「余白」……私が全て、愛の言葉で埋め尽くしてしまいましたわ』


 鏡の中で、カイル様がゆっくりと目を覚ます。期待と、そして恐怖で私の心臓がぜそうになる。けれど、目覚めた彼がその瞳に映したのは、私の姿ではなかった。


『マリエラ……。ああ、済まない。また「悪夢ノイズ」を見ていたようだ』


 カイル様が、マリエラの指先に愛おしそうに口づける。その仕草は、かつて私だけに向けられていたはずの、熱を帯びた執着そのもの。


『マリエラ、あんな「書き損じ」を見なくていい。俺の瞳には、君だけが映っていればいいんだ』


 鏡の向こうから放たれた、氷よりも冷たい拒絶。カイル様にとって、私はもう愛する校閲者ではなく、排除すべき「物語のシミ」に成り下がっていた。


「カイル、様……? 嘘、ですわ……」


 指先から力が抜け、愛用の万年筆が地面に転がり落ちる。黄金のインクが漏れ出し、私の心と同じように、ドロドロとした黒いよどみへと変わっていく。



【※緊急警告:対象カイルとの絆リンクが切断されました。現在、リリアーヌ様の「ヒロイン属性」に深刻な不備が発生中。……貴女のページは、これ以上存在しません】



 ひざが折れ、視界が涙で歪む。そんな私の肩を、小さな、けれど温かい手が抱きしめた。


『主よ……! 顔を上げてください! 貴女が筆を折ってしまえば、本当にこの物語はバッドエンドで完結エピローグしてしまいます!』


 現れたのは、原稿の精霊様。彼女の瞳からも、インクのような青い涙がこぼれ、私の手を強く握りしめた。


『あんなものは、ただの「書き換えられた虚像」です! カイルさまの魂が汚されているなら、貴女がその手で「再校閲」すればいい! 世界でただ一人、彼を正しく書き直せるのは、貴女だけですわ!!』


 精霊様の叫びが、私の冷え切った胸の奥に、黒く燃える火を灯した。  


……そうですわね。私としたことが、随分と感傷センチメンタルな誤字を犯してしまいましたわ。


 私は、地面に汚れた黒インクを、己の意志で万年筆へと吸い戻した。それは黄金の輝きではなく、すべてを塗り潰すような、深淵しんえんの黒。


「精霊様。力を貸してくださる? あのような『嘘のヒロイン設定』……」


 眼前に立ちはだかる厚い鏡の壁――その向こうで笑う聖女を見据え、万年筆を真っ直ぐに突き立てた。


「――設定資料集ごと、物理的にシュレッダーにかけて差し上げますわ」



【※仕様変更:校閲者・リリアーヌと原稿の精霊による『共著モード』に移行。これより、物語の編集権限を強制奪還します】



 私たちの放つ巨大な「赤ペン」が、怒りとともに眼前の鏡面を真っ向から貫いた。

 第24話、ご覧いただきありがとうございます。


 カイル様からの残酷な拒絶。そして、聖女マリエラの衝撃的な登場……。無敵だったリリアーヌ様が初めて膝をつく展開に、執筆しながら私の心もボロボロになりましたが、ここからが本当の「反撃」の始まりです。


 精霊様との絆、そして「黄金」から「黒」へと変じた執念のインク。果たしてリリアーヌ様は、他人の手に渡ったカイル様という「主役設定」をどう奪還していくのか。


 「リリアーヌ様、負けないで!」と思ってくださった方は、ぜひ【ブックマーク】や【評価(★★★★★)】で応援いただけると嬉しいです!


 次回も、どうぞお楽しみに!

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― 新着の感想 ―
リリアーヌがペンを変えた!
ショックな光景を観てしまったらそうなりますね。ここでペンを置いては「校閲ガール」の名折れです!ちゃんと「赤ペン」で修正してあげましょう! 聴くからに自己中心的な方のようですね。狙いは「逆ハーレムで女…
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