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聖女を泣かせたと婚約破棄されましたが、精霊様が『※注釈』で嘘を暴いてますよ? ~元校閲ガールの公爵令嬢は、不実な二人の頭上に【真実】を強制表示させる~  作者: ちいもふ
第4章:【四校】偽りの聖域と、壊れた心の「再校」。――書き損じだらけの愛を、真実の筆跡で書き換えます。
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※外部観測:娘の歩んだ後には、ペン先一つで書き換えられた「背景」が広がるのみ

 リリアーヌが黄金のゲートに消えた、その直後。物理的な距離を無視したかのような速度で届く戦況報告に、公爵領の監視塔は騒然としていた。


「報告します! ドロスト国境に……信じがたい『注釈』が出現しました!」


 アストレイド公爵が駆けつけ、水晶球をのぞき込む。そこに映っていたのは、空を覆い尽くすほど巨大な、リリアーヌの筆跡による「※」の記号だった。



【※範囲指定:軍勢のレイヤーを『背景』に移動。干渉権限を消失】



「……何だと? 『背景』だと……?」


 公爵の目の前で、水晶球の中の光景が変質していく。地響きを立てて突撃していたドロストの千騎士団が、次の瞬間、まるで古い壁画のように輪郭りんかくを失い、透けていったのだ。


「ドロスト騎士団、生存は確認できますが……物理的な接触が一切不可能です! 彼らの剣は地面を叩かず、彼らの足音は風に消えました! まるで、最初からそこに描かれていただけの『風景』に成り果てました!」


 アストレイド公爵は、水晶球に映るその光景に息を呑んだ。娘が行ったのは、魔法による殲滅せんめつではない。この世界の構成プロットから、彼らを「不要な記述」として除外したのだ。


「……あの子は、戦うことすら拒絶したのか」



 その頃、ドロスト王宮の玉座の間。ボリス王子の目の前には、リリアーヌが書き込んだであろう「不吉な進行状況ステータス」が、空中に固定されたまま浮かんでいた。



【※現在:ドロスト王宮という名の『ゴミ捨て場』へ向かい移動中。そろそろ添削の準備はよろしくて?】



「なんだ……この文字は! 誰だ、俺の目の前に勝手に書き込んでいるのは!! 消せ! 今すぐこの目障りな注釈を消せ!!」


その怒号に反応するように、空中の文字がひとりでに書き換わった。



【※注釈:ボリス王子の発言は、物語の品位を著しく下げるため、『鳴き声』として自動変換オートコレクトします】



「……ぎゃ、ぎゃう!? (な、なんだこの声は!?)」


 混乱し、自らののどをかきむしるボリス。しかし、リリアーヌの「注釈」は止まらない。彼の足元から、王宮の床がインクをこぼしたように真っ黒な「塗りつぶし(検閲)」に染まっていく。


 同じ頃。リリアーヌは、さえぎるもののない広大な草原を、ゆっくりと歩んでいた。王宮まではまだかなりの距離がある。だが、彼女がペン先を前方へ向け、空中に一線引くたびに、遥か彼方に見える王宮の威容が、まるで蜃気楼しんきろうのように揺らぎ、その質感を失っていく。


「さて。……カイル様。わたくしが辿たどり着く頃には、そのお城も随分と『風通し』が良くなっているはずですよ」

 最後までお読みいただき、ありがとうございます!


 ボリス王子、ついに人語を奪われてしまいました……。リリアーヌ様に「物語の品位を下げる」と判定されたら最後、王子だろうがなんだろうが『鳴き声』扱いです。


 一方で、草原を歩むリリアーヌ様は至ってマイペース。まだ王宮には着いていないのに、ペン先一つで遠くの城を「風通し良く(物理)」していくその姿は、まさに歩く天災……いえ、歩く最終校閲。


 仕事熱心なリリアーヌ様にとっては、世界そのものが原稿用紙に見えているのかもしれませんね。


 さて、カイル様が待つ(?)王宮は、彼女が辿り着くまでに原型を留めているのでしょうか? 次回の更新も、どうぞお楽しみに!

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― 新着の感想 ―
背景となってしまった軍隊。戦わずして勝つ光景は如何ですか?お父様♪ 声を奪った……後は「視る」と「聞く」ですね。これで完璧な三重殺です(筋肉漢に出ていた完璧超人様はこの内容で相手を落としていたそうで…
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