※用途変更:その『不可侵の聖域』、今日からただの公道ですわ
黄金のゲートを抜けた先は、ドロスト国との国境。本来なら騎士団が数日かけて進軍する距離を、私は一瞬で「スキップ」したことになる。
「……あら。あちらに見える禍々しい光の壁は、何かしら?」
『主よ。あれはドロスト国が予言書の記述を用いて展開した「絶対不可侵の結界 (プロット・アーマー)」です。物理的な攻撃は一切通用せず、触れる者の存在を消去します』
国境を覆う、幾重もの魔法障壁。
――なるほど。私の瞳には、その結界にびっしりと書き込まれた「独りよがりな設定」が丸見えだった。
【※設定:ここより先はドロスト王国の聖域なり。許可なき者は歴史の泡と消えるべし】
(……まあ。ご大層な名前を付けていますが、要するに「他人の立ち入りを禁ずる」というだけの、センスのない拒絶文ですわね)
私は歩みを止めず、愛用の万年筆を軽く横に一閃させた。
「――【※一括置換:聖域を『公道』に】」
パリン、と。
世界が砕けるような音と共に、絶対不可侵のはずの結界が「なかったこと」に書き換えられ、ただの何もない平原へと姿を変えた。
『……素晴らしい。主様、今の結界、本来なら数千人の魔導師が一生をかけて維持する「確定事項」でしたのに。空間の文脈を、ペン先一つで書き換えてしまわれるとは』
「ただの『プロット上の欠陥』を正しただけですわ。……さあ、次はドロスト王宮という名の『ゴミ捨て場』へ向かいましょうか」
第20話、ご覧いただきありがとうございます!
どれほど強固な「設定」で守られた壁であっても、リリアーヌ様の赤ペン一振りの前では、ただの「公道」にすぎませんでした。
次回、第21話。
「※時間短縮:千の軍勢を相手にするほど、私の恋心は暇ではありませんの」
恋も仕事も「最短ルート」で片付けるリリアーヌ様の進撃。
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