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聖女を泣かせたと婚約破棄されましたが、精霊様が『※注釈』で嘘を暴いてますよ? ~元校閲ガールの公爵令嬢は、不実な二人の頭上に【真実】を強制表示させる~  作者: ちいもふ
第4章:【四校】偽りの聖域と、壊れた心の「再校」。――書き損じだらけの愛を、真実の筆跡で書き換えます。
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※補足:盛りメイクを「校閲(物理)」したら、令嬢の顔がドロドロに溶けました

 詐欺師を「全自動で」衛兵所に送り届けた後。カイル様が予約してくれたというティーサロンへ向かった。


「リリアーヌ、これを見てくれ。今日の午後の行程をまとめた『校正刷り』だ」


 そう言ってカイル様が差し出してきたのは、公文書並みの羊皮紙につづられた冊子。……いいえ、もはや「しおり」というレベルを超えた分厚い資料だった。


(……嫌な予感がいたしますわね)


 私がその表紙をめくった瞬間、視界が黄金の文字で埋め尽くされた。



【※注釈:デート行程表(カイル自筆)】


 分単位の移動スケジュールに加え、リリアーヌが風に吹かれた際の髪のなびき、および摂取する糖分の理論値を算出済み。



【※校閲結果:過剰演出オーバー・スペック


 14時15分の項目に『リリアーヌの瞬きが1回増えるごとに、私の愛の言葉を100文字追加する』という、物理的な時間軸を無視した設定があります。



「……カイル様。この、2ページ目にある『リリアーヌの呼吸数予測グラフ』は何かしら?」


「ああ。君がリラックスしているか、あるいは私の愛に動悸どうきを覚えているかを把握するための、極めて真面目な推測(下書き)だ」


 彼は大真面目な顔で、独占欲のにじむ瞳を私に向けている。……どうやらこの方は、私の生命活動そのものを「読了」したいらしい。


「カイル様、これはデートプランではなく『監視記録』の書き損じですわ。……すべて、赤ペン(ボツ)にさせていただきます」


 私が万年筆を一振りすると、黄金の資料に鮮やかな赤い斜線が引かれた。


「なっ、完璧な布陣だと思ったのだが……!」


「デートに布陣は必要ありません。……もっと、校閲なおしようのない『白紙の余白』を楽しみましょう?」


 私が微笑むと、カイル様は一瞬だけ虚を突かれたような顔をし、すぐに耳まで真っ赤にして顔を覆った。



【※本音:……『白紙の余白』。つまり、二人きりで何が起きてもいいということか? リリアーヌ、君は自覚があるのか? そんな誘い文句をつづれば、私の理性が『完結』してしまうということに……!】



(……してませんわよ。極論にリライトしないでくださいませ)



 ようやく辿たどり着いたティーサロン。しかし、そこには招かれざる「ノイズ」が待ち構えていた。


「あら、カイル様! こんなところで、その……『元・婚約破棄された方』とご一緒なんて」


 扇子を広げて現れたのは、派手なドレスに身を包んだ伯爵令嬢だった。カイル様の「婚約者候補」を自称し、何度も公爵家に突撃(凸)してくる困った方だ。


 彼女は私のドレスを値踏みすると、勝利を確信したように笑った。


「カイル様に相応しいのは、教養と美貌びぼうを兼ね備えた私ですわ。リリアーヌ様、王太子殿下に捨てられた古新聞は、大人しく古紙回収リサイクルにお出になっては?」


 ……古紙回収。校閲者わたしに対して、なかなかに面白いあおりですわね。ですが、彼女の「教養と美貌」という設定に隠された膨大な誤字が見えていました。



【※事実確認:伯爵令嬢のスペック】


 教養:昨日の試験でカンニング。

 美貌:最新の『形状記憶魔法』による盛りメイク。水に濡れると本来の顔(設定)に戻ります。



【※本音:カイルの資産で借金を返したい(切実)】



「あら、素敵なメイクですわね。……ただ、少し『塗り』が厚すぎて、真実が透けて見えておりますわよ?」



「なっ、なんですって……!?」


 私は優雅に万年筆を回し、彼女の足元に置かれた花瓶かびんの水を軽く指さした。



「――【※一括置換:虚飾をぎ、事実に】」



 パチン、と指を鳴らした瞬間。魔法の効果か、あるいは運命の校閲か。窓から吹き込んだ風が花瓶の水を彼女の顔に叩きつけ――次の瞬間、彼女の「盛りメイク」は、まるでインクがにじむように流れ落ちた。


「ぎゃああああ!? 私の顔、私の顔がドロドロに溶けてるわぁぁ!?」


「まあ。……事実とは、時に残酷なものですわね」


 素顔(という名の落書き)をさらした彼女が逃げ出すのを見送り、私は平然とハーブティーを口にした。


「リリアーヌ。……君の筆捌ふでさばきは、今日も一段と容赦ようしゃがないな」


 カイル様が、呆れと愛おしさが混ざったような溜息をつく。



【※本音:他人の『設定』をぎ取った後の、君のその冷ややかな瞳。……ああ、たまらない。いっそ私のことも、隅々まで脱がすように校閲してくれないだろうか】



「……カイル様。お茶が美味しくなくなりますので、そのエロすぎる本音、今すぐシュレッダーに放り込んでくださる?」


 私の休日。カイル様の情熱バグを修正するだけでも、なかなかに骨が折れそうです。

 第17話、ご覧いただきありがとうございます!  宣言通り、カイル様渾身(空回り気味)のデート回をお届けいたしました。


 校閲者相手に「古紙回収」なんて言葉を使う不届きなノイズ(令嬢)も現れましたが、リリアーヌ様の赤ペン……もとい、愛用の万年筆の前では、厚化粧(嘘の設定)もひとたまりもありませんでしたね。


 次回、第18話。休む間もなく、今度は公爵家に「不穏な悪文」を抱えた来客が……?

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― 新着の感想 ―
リリアーヌの前では無力.....!
いたんですね、自称婚約(予定の)者が。水でドロドロになるメイク……のっぺらぼうさんより凄い光景です。そして本音にある「切実」。そんな理由ですか~。実務能力とか色々なモノが無いからそうなっただけでしょ。…
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