表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/28

※脱稿:王宮の悪文(陰謀)はすべて、シュレッダー行きですわ

 レオナール様がみじめに敗走した後、テラスには心地よい静寂――そして、それを上書きするようなカイル様のすさまじい「愛の圧力」が満ちていた。


「リリアーヌ、怪我はないか? あんな『下書き』に触れられて、指先が汚れていないか? 今すぐ聖水で清めて……」


「カイル様、落ち着いてくださいませ。……清める前に、まだ少し『お掃除』が残っておりますの」


 私はれるカイル様をハーブティーでなだめ、テーブルに白紙の報告書を広げた。万年筆を軽く振ると、黄金のインクが空中に魔法陣のような、あるいは複雑な校正記号のような軌跡を描き出す。


(さあ、この国をむしばんでいた『教皇派という名の悪文』の出番ですわ)


 私の瞳には、教皇庁の奥底に隠された「汚れたプロット」が透けて見えていた。



【※事実確認:教皇派の資金源】


 その大半が『公金横領』および『聖遺物の横流し』によるものです。


【※構成変更オール・リライト


 彼らが掲げる『聖なる予言』を『卑劣ひれつ捏造ねつぞう』へ置換。関連するすべての公文書から『正当性』を削除し、『反逆の証拠』として再定義します。



 万年筆を一振りするたびに、教皇庁で、絶望に満ちた悲鳴が上がるのが聞こえるようだった。物理的な暴力など必要ない。存在の根拠――すなわち「設定」そのものを書き換えれば、彼らには消滅以外の道は残されていないのだから。


「……終わりましたわ。これで『悪文』はすべて、シュレッダー行きです」


「一瞬だったな。君がペンを動かすたびに、奴らが数十年かけて積み上げた砂の城が崩れていく」


 カイル様は感心したように、それでいて酷く独占欲のにじむ瞳で私を見つめた。


「明日になれば、教皇派が一人残らず騎士団に連行されたというしらせが届くでしょう。ですが、既に「推敲」を終えた物語の結末など、私にとってはどうでもいいことですわ」


「さて、リリアーヌ。仕事は終わりだ。……次は、私の番だな?」


 カイル様が私の指から、そっと、だが拒絶を許さない力で万年筆を取り上げた。空いた私の手を、彼は自分の胸元――高鳴る鼓動こどうが伝わる場所へと導く。


 視界が、黄金の光に埋め尽くされた。


【※カイルの本音:ようやく二人きりだ。もう校閲も仕事もさせない。明日の朝まで、私の愛だけを全身で『受理うけいれ』てもらおう。一文字も、一滴の愛も、漏らさず君に刻み込むために――】


「……カイル様。その本音、文字数が多すぎて目がチカチカいたしますわ」


「ならば目をつぶっていればいい。……続きは、耳元でたっぷりとつづってやる」


 熱い吐息が耳に触れ、私は観念して目を閉じた。カイル様からあふれるこの情熱だけは、私の万年筆でも、どんな校正記号でも、一生書き換える(おさえる)ことはできそうにない。


 ――第3章【三校】:王宮の悪文、すべて廃棄デリート完了。続きのページは、校閲の必要がないほど、甘く、熱い物語になりそうですわ。

 最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。


 筆一本で国を掃除してしまうリリアーヌ様ですが、やはり隣にいる「重すぎる愛」の持ち主だけは、赤ペンを入れる隙がないようです。


 次回からは第4章に突入します。リリアーヌ様の次なる添削対象は誰になるのか……。 続きも楽しみにしていただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
この協会はトンデモナイコトをしていたのですね。権威の象徴の「聖遺物」を売り払ってしまうなんて。預言書とかの解釈違いはよくある事だけど、捏造とは……ホントに神を恐れぬ所存です(・・;) 甘くて重い………
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ