第23話:エビピラフとスコッチエッグ
今日は嫁子は仕事だ。
元々、私の通院の都合もあり、
嫁子は土日はシフトに入っていることが多い。
今日は本来、休みの予定だった。
だが、年末で店の人手が足りず、
急遽、仕事に出ることになった。
通院や入院の際も気を使ってくれる職場なので、
休日出勤でも、私も嫁子も不満はない。
「じゃあ行ってくるね。
今日は残業かも」
「了解。
じゃあ、ゴハン作って待ってるよ」
嫁子が仕事に出て、
コーヒーを飲み終えたところで動き始める。
さて、今日は何を作ろうか。
まずは冷蔵庫の中を確認する。
肉類は揃っている。
野菜も大体あるし、常備菜も問題なし。
……ん?
これは何だろう。
ゆで卵だ。
これは嫁子の仕業だな。
嫁子はゆで卵が大好きで、
自分で作っては、ちょこちょこ食べている。
四つ残っているということは、
七個茹でて三個は食べた計算だ。
殻が剥いてある卵を触ると、
半熟で、かなり美味しそうだった。
そういえば少し前に、
テレビでスコッチエッグの専門店をやっていたな。
今は出す店が少なくなったから、
自分で店を始めたという話だった。
スコッチエッグが減ったことなんて、
今まで気にしたことはなかった。
確かに材料はハンバーグとほぼ同じだが、
手間は少し増える。
その割に値段を上げると、
なかなか頼まれない料理でもある。
小さい頃、
家の周り三百メートル四方に、
洋食屋が三軒もあった。
よく通っていたし、
今作る料理も洋食が多い。
それでもスコッチエッグは、
数えるほどしか食べた記憶がない。
……よし。
今日はスコッチエッグを作ってみよう。
作り方は、
他の料理の知識でだいたい想像がつく。
味も知っているし、問題ない。
あとは、もう一品だな。
冷凍庫を開ける。
お、冷凍エビがある。
そうだ。
エビピラフにしよう。
スコッチエッグとエビピラフ。
小さなサラダとポタージュを添えれば十分だ。
まずはピラフの仕込みから。
今日は干しエビも使って、
エビ感の強いピラフにする。
干しエビといっても、
サクラエビではない。
インスタントラーメンに入っている、
あの小さなエビに近いものだ。
さっと洗って、水で戻しておく。
冷凍エビは解凍して洗い、
水気をしっかり取る。
玉ねぎと人参はみじん切り。
ピーマンは細かく刻む。
ザクッ、シャクシャク。
スクレーパーを手に入れてから、
作れる料理が増えた。
みじん切りも、
冷凍野菜に頼らず出来るのが嬉しい。
ザルに上げた米に、
干しエビの戻し汁と水を加える。
水は少なめにして、
コンソメと塩コショウで味を調える。
米を均して、
バターをひとかけ入れる。
エビ、玉ねぎ、人参を乗せて広げ、
そのまま通常炊飯だ。
エビピラフは、
簡単で美味しいのがいい。
次はスコッチエッグ。
要は、
ゆで卵にハンバーグのタネを巻けばいい。
細かいことは後で考える。
合い挽き肉に塩コショウ。
粘りが出るまで練る。
そこに玉ねぎ、卵、パン粉を加える。
冷蔵庫から半熟の卵を出す。
冷たいままの方が、
揚げたときに程よく火が通りそうだ。
……待てよ。
ベーコンやチーズを巻くのはどうだろう。
やってみるか。
卵にチーズ巻きとベーコン巻きを、
二個ずつ作る。
剥がれないよう、
小麦粉をしっかり付ける。
ラップを広げ、
タネを叩きつけて広げる。
卵を乗せて包んでいくが、
なかなかうまくいかない。
……よし。
やっと、いい感じに包めた。
小麦粉、溶き卵、パン粉の順で衣を付け、
ミルクパンに油を入れて、
一個ずつ揚げていく。
肉の層は厚くない。
百七十度で五分も揚げれば十分だ。
うん、いい色だ。
次は盛り付けとソース。
……デミグラスだ。
皿にソースを敷き、
マッシュポテトを乗せ、
その上にスコッチエッグ。
これは、なかなかいい。
市販のデミグラスソースに、
ウスターとビーフシチューの素を加える。
味を見ながら塩コショウで調整。
ポテトフレークに温めた牛乳とお湯。
塩コショウとコンソメを加えて、
マッシュポテトを作る。
サラダを用意し、
ポタージュ用のお湯を沸かしていると、
玄関の音がした。
「ただいまー。
おなかすいたー」
「おかえり。
頑張ったね。
着替えて、ゴハンにしよう」
食卓に料理を並べて、
嫁子を待つ。
「この丸い料理、なに?」
「スコッチエッグ。
中に玉子が入ってるよ」
「おー!
じゃあ食べよう。
いただきます」
まずはエビピラフから。
一口食べる。
干しエビが、かなり効いている。
冷凍エビのプリッとした食感に、
干しエビの旨味が重なる。
次はスコッチエッグ……
あ、しまった。
片手ではナイフが使えない。
盛り付けに気を取られて、
完全に忘れていた。
「嫁子、
悪いけど切ってくれる?」
「はーい。
四等分でいい?」
ナイフを入れると、
中から半熟の黄身が出てきた。
これは、間違いない。
マッシュポテトとデミグラスが合う。
スコッチエッグも、
黄身とソースを絡めると美味しい。
チーズもちゃんと溶けている。
ベーコン巻きは、
蒸し焼き状態になって、
これも悪くない。
「初めて作ったけど、
なかなか上手く出来たでしょ?」
「うん!
ピラフも美味しいし、
お店みたいだね」
確かに、
スコッチエッグは
ハンバーグよりご馳走感がある。
これは、
たまに作るメニューにしよう。
「今日はスコッチエッグで玉子食べられて、
後で、ゆで卵もあるから嬉しいよ」
「……あの冷蔵庫の?」
「うん!
昨日、茹でておいたの」
「その卵は、
スコッチエッグになりました」
「……ガーン」
その顔が可愛かったので、
ゆで卵の代わりに、
食後にパンケーキを焼く私でした。




