第18話:ケーキと半身揚げと変わらない風景
イブの街は、コンビニの入り口に飾ってある安っぽいリースですら、見ると浮かれた気分になれる。
この辺りは、毎年24日が終業式なので、寒いのに元気いっぱいの学生たちが、明日からの冬休みとクリスマスイブで、とてもウキウキしながら、パーティの買い出しに出ている。
若い恋人たちの為にも、ホワイトクリスマスにならないかと思ったが、今年も先週少しだけ降った雪が消えてしまった。
この辺は北海道なのに、根雪は年明けてからが殆どだ。
私にとっては外出のチャンスなので、ちょうど休みの嫁子とクリスマスの買い物に出てきた。
今日は私もお休みだ。
最近はケン〇ッキーの衣が重く感じてきて、今年は昔から食べている「半身揚げ」を買いに来てみた。
「4時間待ちだって…」
嫁子がハイライトの消えた目でそう告げる。
私はきっと今日は、半身揚げの店は忙しいんだろうなと思ってたので、プランBを発動した。
「予約のケーキはチョコだよね?小さいしもう一つイチゴのも買っちゃわないかい?」
「…マジすか、いいんすか!」
嫁子の、変なテンションの後輩ムーブ聞きながら予約していたケーキ店へ。
「うわー…、こりゃあ、もう一つは無理かもなあ」
店内は予約客と、予約なしで買いに来た客でごった返していた。
買いに行った嫁子がしょんぼりしている。
予約のは引き換えれたが、他に買うのは無理だったらしい。
「あう、残念だよ。」
フム、まだ時間はある。
「嫁子よ、買えるまでケーキ店回るぞ!」
「え、いいよいいよ、我慢するもん」
「大丈夫だよ」とは言わず、「我慢するもん」って子供か(笑)
私は、記憶にあるケーキ店を近場から回っていく。
シャト〇ーゼ、みつ〇し等のメジャー所は有るにはあったが、カットされていてホールはなかった。
小さなケーキ店はそもそも注文分しか作ってない。
「やっぱり今日はもう無理だし良いよ」
「もう一軒だけ行ってみるよ」
そこは、私が子供の頃は非常に栄えていてススキノの狸小路なみの人混みで埋もれ、石炭の積み出しが無くなり、人の流れが変わった後には寂れていて、今では昔日の面影がない商店街だ。
そこに何店舗かあるのに、ここが本店の洋菓子店がある。
知ってる人も少ない店だが味は確かだ。
私も嫁子と一緒に店に入る。
「すいません、イチゴのクリスマスケーキあったりしますか?」
「ありますよー、ちょうど一個余ってたんですよ。」
良し!
嫁子とグータッチしてケーキを買う。
予定外に大きいけど、私も嫁子もケーキなら大丈夫だ。
まだ一時間以上あるなあ。
そういえば、ここまで来たらあそこに行こうかな。
途中でコーヒーを買い、海を横断するつり橋が見える展望台へ。
ここは嫁子と初めてドライブした時に来た展望台だ。
コーヒーを飲みながら、嫁子と何ということもない話をする。
「ここも変わんないねぇ」
「でも、風車がいつの間にかいっぱいだよ!」
「あら、ほんとだね。今度根元に行ってみようか」
本当にとりとめない話を、嫁子とするのが大好きなのだ。
お、いつの間にか時間だ。
店で熱々の半身揚げを受け取り、家に帰る。
「ただいまー、おなか減ったー」
誰もいない家に、嫁子はいつもそう言う。
だから私もいつも言うのだ
「おかえりー、つくるねー」
今日は買ってきたオードブルや半身揚げなんだけども。
ああ、良い匂いだ。
さて、クリスマスパーティーを始めましょうかね。




