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料理嫌いの嫁を家で待ちながら、無職夫は今日も夕食を作る~幸せ手抜き料理  作者: だい


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第13話:鍋壊しと洋風ちらし

右半身麻痺で無職になった私は、

料理嫌いの妻のために、今日も家で夕食を作っている。


鍋は振れない。

包丁も危ない。


だから使うのは、IHとキッチンバサミ。


これは、そんな私と妻の、毎日のご飯の話だ。


冬にこの街を覆っていた寒さが、一度緩むこの時期。

足元が確かになり、何日かぶりに買い物に出た。


この時期は街がクリスマス一色だ。

嫁子は店内装飾に浮かれ、予約しているのにケーキをもう一つ買いたいと言ったり、焼けもしない丸鶏を買おうとする。


嫁子はカートを押し、私は自分で車いすを動かして店内を見ていく。

肉は牛、豚、鶏を数種類、野菜、調味料に飲み物。


私は男だが、昔からスーパーでの食品の買い物が好きだ。

今は「男だ」とかはないのだろうが、還暦近い私くらいの男性では、割と少ない。


私の世代だと、やはり料理をする男性は少数派で、高校生の時に自分で作った弁当を学校に持って行ったときはビックリされたものだ。


ああ、こうして売り場を見ると、どうしても目移りするなぁ。


魚売り場には「カスベ」がある。

北海道ではメジャーなのだが「エイ」のことだ。


食べたことない人は、エイの全体像を思い出して敬遠する人も多い。

でもキチンと切り身になった物は、エイに見えないし、なにより旨いのだ。

私だけじゃなく「煮魚ではカスベ」って人は多い。


ホロっと崩れる白身の身、そしてカスベは骨が軟骨なのでコリコリ食べられる。


あー食べたいなあ、唐揚げでも旨いしなあと思っていると、タイのあらやブリかまに混じって「鍋壊し」が売っていた。

カジカの事なのだが、この時期でる大きなカジカのことをこの辺りでは「鍋壊し」という。

これで汁を作ると、美味しすぎて鍋の底をつついて壊すから「鍋壊し」というらしい。


うん、今日の夕食は「鍋壊し汁」に決定。

一年中ある魚だけど、旬を外すと味が全然違うんだよね。


ふむ、汁が旨くて味が強いから、どんなオカズに合わせるか悩むなあ。

いっそ、漬物、飯、鍋壊し汁とかでいいとも思うんだけどね。


そうだ、ご飯をちらし寿司にしようかな。

ただ、普通のだと酢飯と鍋壊し汁は合わないと思うから、酢が少ない「洋風ちらし」にしよう。


洋風チラシは、子供が小さいころに酢飯が苦手で、酢ではなく代わりにドレッシング使って作ってみたら家族みんなの好物になったものだ。


具材はえび、いか、ミックスビーンズに錦糸卵、さやえんどう等、家にない具材をカートに入れていく。


「ねー、今日は鍋壊しと洋風チラシ?」


そりゃ一緒に買い物したらバレるよね。


「そうだよー、他のが良かった?」


「いやそんなこと無いんだけど、アレが食べたいなあって」


嫁子の視線の先には冷凍の「ホットク」が見えてる。

あー、そういや嫁子の好きなユーチューバーのカ〇ちゃん食べてたなあ。


私は黙ってカートにホットクと私の好物の今川焼を入れる。

これ以上いると、パンコーナーや総菜コーナーにも引っ掛かるので帰ろうか。


嫁子の目がキラキラしている。ここで粘れば惣菜もパンも増える。店内のクリスマスソングに背中を押され、私は黙ってレジへすぐに向かった。


よし、それじゃあご飯作ろうかな。

今日はチラシはさめてもいいし、鍋壊し汁も作って少し置いた方が美味しいしね。


まずは洋風チラシの仕込みしておく。

さやえんどう茹でて、残った湯で冷凍エビとささみを茹でていく、エビはカップ麺に入ってるような小さいのが美味い。


茹でたら、ささみをほぐしてエビと水を切ったミックスビーンズと一緒に白出汁の原液でつけて置いておく。

これで仕込みはお終い、あとは混ぜて盛り付けるだけ。


では次は「鍋壊し汁」だ。

昔は一匹買ってきて捌いたものだけど、今は夫婦二人なので食べきれない。


カジカは大きくても片手に乗ると思われるが、鍋壊しは両手で持つくらい大きいのだ。

今回は半身だけ買ったが、それでも家で一番大きな鍋で作らないといけない。


まずはぶつ切りにした切り身に塩を振り、5分ほど置いたら湯をかけて、霜降りに。

今回は、捌いてもらったのを購入してるので楽だ。


今日は嫁子がいるので、人参と大根をいちょう切りにしてもらう。

鍋に湯を沸かし、酒を入れカジカを入れて煮ていく、あくが出るので小まめに掬う。


大根、人参等を入れて煮ていきレンジで火を通したジャガイモも入れる。

鍋壊し汁は、出汁も家でよく使う化学調味料も必要ない。

アラと身からとても美味しい出汁が出るのだ。


野菜に火が通ったら味噌を入れる、北海道は白みそだ。

味噌が溶けたら、よけてた肝を荒く潰して沸騰寸前まで火を入れる。

あとは筒切りにしたネギを入れて出来上がりだ。


とても良い匂いがするなあ。

嫁子はすでにソワソワしてコチラをうかがって居る。


大鍋に作ったし、多少食べても大丈夫だよなあ。


「…味見する?」


「する!します!させて!」


二人で一杯だけ出来立てを味見してみる。


一口汁を啜る。

なんて滋味深くてコクのある味なんだろう。

私は魚系のアラ汁や石狩鍋、タラ鍋も好きで食べるけどこれに勝る物は知らない。


鍋壊しってルイベや煮付け、唐揚げも美味しいんだけど、ルイベならシャケ、煮付けならキンキ、唐揚げならカレイとか美味しい魚があるんだよね。

でも、汁ものにするとダントツで旨いのって、なぜか鍋壊しなんだよねえ。


身はホロっと柔らかくて嫌な匂いもない、あの怖い顔から想像もつかない上品な白身だ。

大根、人参もだが、ジャガイモが最高にいい仕事してる。

肝入れた味噌にジャガイモが溶けだして、そこにネギの香りがね。


私が飲み干した時、嫁子は大切に取っておいたらしい肝を食べたところだった。


「美味しかったねえ」


「美味しかったよパパ。あたしちょっと食べたら逆にお腹へっちゃったよ…」


では今日は早めにご飯にしよう。


ご飯も炊きあがったから、ボウルに入れて冷ます。

そこに玉葱ドレッシングを入れて薄めに味を付けていく。


そして漬けて置いたエビ、ささみ、ミックスビーンズを混ぜていき味を見る。

味が決まったら浅めの皿によそい、さやえんどうと錦糸卵を乗せる。

今時は錦糸卵も既製品あるから助かる。

端に紅ショウガと、シイタケの佃煮乗せたら「洋風チラシ」の完成だ。


「おーい嫁子出来たけど、食べちゃうかい?」


「食べるー、待ってたー」


とゲームを中止して嫁子は部屋から出てくる。


私は洋風チラシの皿を並べ、鍋壊し汁をよそう。

今日は三升漬と解凍しておいた秋田煮も並べる。


「では「「いただきます」」」


うん、久しぶりの洋風チラシも旨い。

この洋風チラシって実は食卓に乗った時点では完成形ではないのだ。

子供たちが自分が好きな味で食べれるように、薄味で自分でトッピングして完成するのだ。


まず玉葱ドレッシング足していく。

うん、酸味と玉葱の香りが立っていい、私はこれくらい酸味欲しいな。


次は三升漬を少量乗せる。

…おーこりゃ辛いけど合うねぇ、そしてここにマヨをいれてノリで巻くと。


そして、一息ついたら、鍋壊し汁。

こりゃいけん、無限だ、無限に喰えてしまう、どこかでやめないとダメだ。


そう思って嫁子見たら、すでに鍋壊し汁はお替りして洋風チラシも終わりそうだ。

そして嫁は私を見てこう言った。


「ねー、この汁にお餅か、焼きおにぎり入れたら美味しいんじゃない?」


そろそろダイエットメニューを真剣に考える私なのでした。

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