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落ちた橋

作者: 寒がり


 土手に茂る夏草は強い日差しを受けて青々と輝き、水面は蒼い空と白い雲とを映していた。

 見ると、洪水で落ちたコンクリートの沈下橋が修復されることも解体もされることもなく放置されていた。幅3メートルの欄干もない小さな橋の残骸は人々に見捨てられたらしい。もう何年も、橋だったコンクリートはそこにある。


 その残骸の上に、鳥が一羽、また一羽と降り立つ。

 鳥達は、羽を休めているようだ。


 そこだけ一足先に文明が滅んだみたいだった。

 コンクリートには草が生え、苔が覆い、鳥が憩っている。断絶した橋の出入り口は封鎖され、人間を拒否している。人間は何年も足を踏み入れていないし、二度と足を踏み入れないかもしれない。


 かつて人々が歩き、軽自動車や自転車が行き来した道の亡骸を自然が包み込み、同化しつつある。緑色の蠢きの中にコンクリートが沈んでゆく。それは、そこに人が存在したという記憶をこの星がゆっくりと消化するプロセスだ。

 

 その光景は、安らかだった。


 いつの日か、こういう光景があらゆる場所に広がるのだろう。私達の在った証がゆっくりと地球に溶けていくというなら、それはきっと幸福なことなのだ。

 

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