第二十一話 ギルド任務を受ける?(2)
ちょうどアイリがココリを説得している最中、リーナが三人のそばにやって来た。
その顔には、申し訳なさそうでありながらも、どうしようもないといった複雑な表情が浮かんでいる。
「お邪魔してごめんなさい、ココリちゃん。ギルドから、ちょっとお願いできないかな?」
一瞬にして三人の視線がリーナに向けられる。
「どうしたの?」
顔の大半を布で覆っているココリだったが、その声色にははっきりとした疑問がにじむ。
「本当に急に来ちゃってごめんなさい。」リーナは困ったように眉を下げた。
「でも、この依頼は少し急ぎで、すぐに返事をしないといけないんです。」
「気にしないね、話して。」
「実は――古戦場から連絡が入りまして、ネクロプリーストか、ネクロプリーストを含む小隊の支援を求めているんです。」
「古戦場?」
アイリとココリがほぼ同時に声を上げ、互いに訝しげな顔をする。
「ここで少し説明させてください。もう秘密というほどのことでもありませんから。」
リーナは胸の前で軽く両手を振った。
「実は、安寧の町が襲撃される前に、すでに一隊の冒険者が古戦場で不審な兆候を発見していたんです。その報告を受けて、聖火の都は安寧の町に支援を送る計画を立てていました。
本来ならもっと綿密に準備をして“逆手に取る”つもりだったんですが……まさか聖裁教会が急に奇襲を仕掛けてくるとは。
おかげで聖火の都の計画は完全に狂わされましたが、その分、相手も慌てたようで、聖火の都の救援が間に合い、安寧の町の被害は最小限で済んだんです。」
そこまで聞いて、アイリは妙な顔になる。
(……もしかして、あのせい!?
あの時、タイタンの魂の炎に妙な刻印があったから、考えなしに消しちゃったけど……あれが聖裁教会を早まらせた理由じゃないよね!?)
「アイリ、どうかした?」ココリが表情の変化を見逃さない。
「なんでもな~い。」
タイタン巨人の件を口に出すつもりはないアイリは、ひらひらと手を振ってリーナに向き直る。
「続けて、リーナ。」
「はい。」リーナは頷き、言葉を続けた。
「聖火の都の援軍で、聖裁教会は慌てて撤退しました。その際、古戦場にこっそり作っていた隠し通路が見つかり、救援隊はそこから反撃を開始。拉致された同胞の奪還と、通路の封鎖を進めています。」
「うまくいったの!?」ジルが食い気味に尋ねる。
「ええ、前線からの朗報です。全員というわけにはいきませんでしたが、二十名以上の同胞を救出できました。」
その言葉に、ココリも嬉し。
「それで、手伝いというのは?」
「救出された同胞を安寧の町まで送り届けることです。」
「送り届ける?」アイリが問い返す。
「はい。救出者の中には重傷で治療を必要とする方が多く、回復はネクロプリーストの力に頼るしかありません。ですが、救援隊はまだ前線で教会と交戦中で、隊のネクロプリーストも安全確保のため離れられない。そこで、こちらから迎えに行ってもらう必要があるんです。」
「でも、それだと運んでいる間に治療が遅れるんじゃ……?」
「だからこそ、安寧の町からネクロプリーストを派遣したいんです。正直、無理を承知で連絡を入れました。本当に人が見つからなければ、そのまま後送するしかないところでしたが……ちょうどココリちゃんがいると聞いて、お願いできればと。」
「危険度は?」
アイリが先に口を挟む。
彼女にとってココリは、ようやく見つけた“自分の小隊の生命線”であり、簡単に危険に晒すつもりはない。
「危険度は高くありません。古戦場での主戦場はもっと奥で、救出者は後方の臨時拠点にいます。そこへ行き、治療を施せば、あとは拠点の護衛と共に戻ってくるだけです。」
「でも、もし前線からまた救出者が増えたら、長く古戦場に留まることになるのでは?」アイリは食い下がる。
「その可能性はありますが、その場合はこちらでも追加でネクロプリーストを募ります。今はすぐに動ける人員がいないため、どうしてもお願いに来ました。引き継ぎの者が到着すれば、任務を終えて戻るか、そのまま支援を続けるかは自由です。もちろん、ギルドからは十分な報酬をお支払いします。」
「……もっと救えるなら、断る理由はないわね。」
ココリは力強く頷いた。
今回の襲撃で命を落とした者や連れ去られた者の中には、顔見知りも少なくない。深い仲ではなくても、無関心ではいられない。
一方のアイリは、本能的に“二大勢力の戦場”には予想外のトラブルが付き物だと感じており、「自分の仲間」を守るため、そう簡単にココリを危険地帯に送る気はなかった。
ジルは……というと、三人のやり取りを聞きながら、いつの間にかぼんやりと上の空になっていた。




