第十七話 新たなる危機?(3)
これは初めて一人称視点で書いてみたんだけど、ジルの視点からアイリを見た感じにしてみた。読んだ印象として、変に感じないかな……
姉御とサスが次の行動について真剣に話し合っているのを横目に、私はそっと考えた。
(……こういう難しい相談は、私にはちょっと無理だな。姉御が決めてくれたら、それに従えばいいや。)
どうやら議論はしばらく続きそうだったので、暇つぶしに荷物整理を始めることにした。
この一ヶ月の成果はなかなかのものだ。
前に拾った千枚以上の金貨もあって、私のショルダーバッグはほぼ満杯になっていた。
ひとつずつ《死の気配の結晶》を取り出し、きれいに並べる。
「いーち、にー、さーん……じゅうにっ!」
全部で十二個!
どれも手のひらサイズで、きらきら光っていて、見るからに高そうだ。
これらは全部、特殊な部屋で手に入れた戦利品。
サスと一緒に挑むときも、相手が強すぎたり数が多すぎたりしたらすぐ撤退したけど、それでも二層とは比べものにならないくらい良い結晶が集まった。
さすがは第三層、資源が豊富だ。
ただ、装備品は一つも見つからなかった。
やっぱりサジみたいなボス部屋じゃないと、装備は出ないのかもしれない。
(考えてみれば……昔は《チャージ》もまともに使えなくて、お堀に突っ込んで溺れ死んだのに。今じゃ上級アンデッド相手に戦えてるんだもんね……本当に、なんかもう前世の出来事みたいだよね……。
ていうか、一回死んでるし。
冷静に考えると、マジで一つ人生終わってるじゃん、私。)
全部、姉御のおかげだ。
サスもすごく頼りになったし、私は本当に恵まれてる。
ただ、符文結晶は一個も拾えなかった。
もしかして、この墓地では出ないのかな?
……まあ、そもそも符文はドロップ率が低いって聞くし、普通かも。
それにしても、骸骨やゾンビの素材は場所を取りすぎる。
全部集めてたら、今の三枠パックなんてすぐパンパンだ。
(まさか、三枠でも足りなくなる日が来るなんて……)
次に大きいバッグを買うなら、かなりお金が必要だなぁ。
あ、そういえば石棺から出てきた布もあったっけ。
数は少ないけど、ちょっとは換金できるかも?
「ジル、それがこの期間の成果?」
「わっ、姉御!話終わったんですか?」
振り向いたら、姉御がいつの間にか隣にしゃがんでいて、ちょっとびっくりした。
結晶を一つ手に取り、興味深そうに眺める。
「わー、これめっちゃ質良さそう。前のやつとは全然違うね。」
「ですよね!……いくらで売れるんだろ?」
「私も知らないなぁ、こんな上等なの初めて見たもん。ジル、頑張ったね。」
「えへへ〜、でもサスがいなかったら無理でした。」
この一ヶ月で、サスともだいぶ打ち解けた。
一人じゃ到底、こんな成果は出せなかった。
「バッグの空きは足りてる?」
「もうすぐいっぱいです!」
私は結晶を仕舞いながら聞いた。
「じゃあ、一回帰る?」
「本当は一回《安寧鎮》で休憩するつもりだったんだけど……さっきまで寝てたから、お腹ペコペコなんだよねぇ。もうちょっとだけここで狩りさせて。」
「大丈夫ですよ!ジルもまだ元気ですから!」
荷物を整理し終え、サスの先導で私たちはホールを出発した。
今回の目標ははっきりしている。
「お腹を満たしたら帰還」だ。
今回ここに来たときは色々甘くて、準備不足ばかりだったけど、次に挑むときはちゃんと装備も仲間も整えよう。
姉御も、回復ができる仲間をどうしても見つけたいらしい。
(……今まで生きてきて、回復魔法を使える人なんて見たことないや。どんな職業なんだろ?)
そんなことを考えながら歩いていると、すぐ先に二体のアンデッドが現れた。
ゾンビとスケルトン。
どちらも一目で分かる上位個体だった。
スケルトンは装備を纏い、ゾンビの肌は金属のように光っている。
私はすぐ盾を構え、いつでも《ヘイトスピン》を放てる態勢を取る。
だが――
その二体はこっちを見た途端、くるりと背を向けて逃げ出した。
「……え?」
「逃がすな!」
姉御の声が飛ぶ。
考える間もなく、私は全力で追いかけた。
後方から《シャドウアロー》が飛び、先に逃げるスケルトンに命中。
装甲が粉砕し、スケルトンは前のめりに倒れ込んだ。
次の瞬間、姉御が私を追い越し――
手にしたスコップをゾンビの顔面に叩きつける。
ゾンビの瞳が怯えに染まった。
(……くる!)
それは《魂の嵐》を発動する兆し。
咄嗟に盾を掲げて踏み込み、相手の攻撃を受け止めようとする。
けれど――
姉御の体から青い波紋が広がり、ゾンビの術は跡形もなく霧散した。
スコップが容赦なく振り下ろされ、ゾンビは地面に沈む。
倒れたスケルトンが必死で立ち上がろうとする。
だが次の瞬間には姉御が追いつき、頭を粉砕し、そのまましゃがんで魂を吸い上げた。
呻き声がこだまする。
私が一瞬呆けている間に、倒れていたゾンビはもう身体を起こして逃げ出そうとしていた。
私が剣を構えて前に出ようとしたその時――
振り返った姉御は、そのままゾンビにも《シャドウアロー》を撃ち込み――
頭を粉々にした。
全てが一瞬の出来事だった。
(あ、ああ……姉御って、やっぱりとんでもなく強い……!)




