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第十六話 つい寝ちゃった?(2)

補給用のドリンクを併用し、まる一日たっぷり休んだことで、アイリとジルはすっかり元気を取り戻した。


サジはその間に、質の良い骨を見つけて自分の損傷を修復していた。ただし、スケルトンにとって「魂の炎」の損傷はドリンクでは回復できず、眠るか大量の魂の炎を吸収するしかない。


そう考えたアイリは、サジをこの部屋に残して眠らせ、しばらくしてから第二層のアンデッドが増えたら自力で狩りに行くように指示した。今のサジは確かに弱っていて、とても頼りになる戦力とは言えないのだ。


しかも、第二層のアンデッドは一気に殲滅されてしまい、いつ新たな敵が現れるかも分からない。これ以上ここに留まる意味も薄れていた。


少し考えた末、アイリは口を開いた。


「いっそ、第三層に行って狩りしようか! お宝も手に入ったし、次は魂の炎を強化するのが目標。眠気で限界になったら、今回の冒険はそこで終わりにしよう!」


『承知しました、ご主人。命にかえてもお守りいたします。』


「よろしくね!」


「ジルもタンク役、ちゃんとがんばるからねっ!」

ジルは五角形の大盾を掲げながら元気よく答えた。


サスの案内で、一行はすぐに第三層へと続く階段に到達した。前回、大量のアンデッドが掃討されたせいか、道中で敵に遭遇することはほとんどなかった。いても、ちらほらと低級アンデッドがうろついている程度だった。


階段を抜けて第三層に足を踏み入れると、最初に現れたのはまたしても広いホールだった。どうやら各層の構造は似ているようで、迷宮のレイアウトは層ごとに異なり、しかも階層が深くなるほど広くなる。


サスの案内がなければ、第三層への階段を探すのに何ヶ月かかったか分からない。


安全確認のため、アイリはわざと第三層のスケルトンを一体引き寄せてみた。するとそのスケルトンはホールに近づくと、すぐに向きを変えて去っていった。


「やっぱりね。」

試しに《シャドウアロー》を放ってみたが、弾はホール出口の手前でふっと消えてしまった。


何度も試してみた結果、不死者たちはこのホールを本能的に避けるよう設定されており、さらにアイリがホール内からどんな攻撃をしても、目には見えない結界に阻まれて届かないことが判明した。


「……なんで?」

アイリは不思議そうに呟いた。


おそらく、このホールは建築時に空間遮断の魔法陣が埋め込まれていて、視界上では繋がっているように見えても、実際は空間的に隔絶されているのだろう。さらに、アンデッドたちには強力な幻術によって「ここは見えないもの」と認識させられているに違いない。


いずれにせよ、安全地帯が確認できたのは大きな収穫だ。いざというときの逃げ場所があるのは心強い。


準備を整えたアイリたちは、いよいよ第三層の冒険を開始した。


第三層には、第二層よりも明らかに多く、しかも強力なアンデッドが徘徊していた。《魂装武鎧》や《魂の嵐》を覚醒したスケルトンや、下級魔法を使ってくるリッチのような存在も見かけるようになった。


さすがにザジほどの強さを持つアンデッドは現れなかったが、それでも油断できない相手ばかりだった。


だが、今回はサスというボス級の護衛がついている。

アイリはすっかり「部下を酷使するブラックご主人様」と化し、ジルだけが多少の良心を持って一緒に戦っていた。


サジクラスのスケルトンは第二層ではほぼ現れない、まさにレアBOSSだった。アイリが最初の探索で彼に出会ったのは、ある意味では運が悪かったと言える。だが、だからこそ隠し部屋に辿り着けたのだから、運の良し悪しは表裏一体だ。


サスのようなBOSS級の護衛がいる今、第三層の探索はまさに無双状態。現れるアンデッドはすべて経験値へと変わっていき、どんな特性持ちの敵も時間さえかければ討伐できた。


もちろん、いつまた妙な強敵に出会うか分からないという警戒心は忘れていなかった。逃走の準備は常に万端だった。


だが今回は、幸運にもそういった「事故」は起こらなかった。


魂の炎の吸収は交代で行い、四日目にはアイリとジルの両者ともに、魂の炎の吸収限界に達し、強制的な「睡眠期」に突入しそうになった。


「そろそろ帰ろうか。」


事前の方針どおり、一行は《安寧鎮》へ戻ることを決めた。


とはいえ、レベルは上がっても収穫は少なめ。貴重なアイテムも見つからず、補給ドリンクもかなり消費してしまった。


現在地は第三層ホールから少し離れていたが、サスがいれば帰路もそれほど苦労しない。一行は全員で《アンデッドホース》にまたがり、ホールへと向かった。


ただし、魂の炎が限界を迎えたときの眠気は、単なる疲労とは違い、強い本能に近い。

アイリも今までになく強烈な眠気に襲われていた。


「まだ……まだ寝ちゃダメ……」

心の中で自分に言い聞かせながら、アイリは必死に瞼を引っ張った。


しかし、ホールの扉が見えてきたところで――

ふわりと手を離したアイリは、そのまま目を閉じ、静かに眠りへと落ちていった。

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