第十六話 つい寝ちゃった?(1)
「やったね、姉御!魔法使いの装備一式だよ!」
「本当だ……」
アイリは魔法の杖を手に取った。飾り気のないシンプルな短杖で、魔石やルーンの刻印も見当たらない。
杖を握ってみても、何か特別な力を感じるわけでもなかった。
――通常、入手した装備の性能はすぐには分からない。
もし魔法でエンチャントされた装備なら、刻まれたルーンである程度の効果が読み取れる。
現在アイリが持つエンチャント装備:
《染血のエンチャントスコップ》(効果:クリティカル率+5%)
《骸骨ペンダント付きローブアクセサリ》(効果:レベル2以下の魔法を2回防ぐ/使用後に破損)
ジルの装備:
《五角形大盾》(効果:物理ダメージ-30%、魔法ダメージ-10%)
《白銀の小盾》(効果:5%の確率でダメージ30%を反射)
《記念指輪(試作品)》(効果:魂力回復速度+5%)
基本的に、品質の低い装備には1つのルーンしか付けられない。
同じルーン効果は重ねがけできるが、重ねるたびに装備が壊れるリスクも増す。
例として、《クリティカル率+5%》のルーン結晶を複数使えば、より強力な効果に強化できる。
ただし一度5%を超えると、下位のルーンでは強化できなくなる。
また、より高品質な装備であれば、付加できるルーンの数や強化上限も高くなる。
装備の正確な性能や隠された効果を調べるには「鑑定スキル」が必要だが――
アイリもジルも初心者ゆえ、そんなスキルの存在すら考えていなかった。
過去の装備情報も、他人から教わったか、資料で確認したものばかりだ。
「ルーン、どこにもないね……」
アイリは他の装備も調べてみたが、やはり刻印は見当たらなかった。
「ただの装備なのかなぁ?」
ジルは長靴を高く掲げて、片目をつぶって中を覗き込んだ。
「とりあえず持って帰って、安寧町で誰かに聞いてみよう。」
宝箱がこんなに豪華なのに中身が普通の装備とは考えにくい。
まずはパックにしまって、あとで判断することにした。
装備を回収し終えた一行は、周囲の石棺にも目を向ける。
不死者たる者、死者を冒涜するなどという概念はまったく無い。
堂々と棺を開けていくと、中からは古びた書物、巻物、絹や錦の布……
そしてその下に――大量の金貨が現れた!
あまりの金色の輝きに、アイリとジルはしばし目を細めた。
「姉、姉御っ!き、金貨がいっぱいあるよぉ!」
テンションが爆上がりのジルは、目がまるで「¥」マークになっていた。
「これ……しばらくは生活できそうね……」
ざっと数えたところ、石棺内の金貨は1000枚を超えていた。
ジルは一枚手に取り、不思議そうに眺める。
そこに刻まれていたのは、見慣れた“魂の炎”ではなく、まったく別の意匠だった。
「姉御、これって使えるの?」
「……たぶん使えるとは思うけど。」
アイリも同じく金貨を手に取り、しげしげと見つめながら首をかしげる。
「ちょっと価値は低いかもしれないけど……」
「ジル、全部バッグに入れて。」
「うんっ!」
嬉々として金貨を詰め込むジルの横で、サスも黙々と作業を手伝う。
一方、アイリはサジと一緒に、布地や書物の整理へ。
保存状態の良い布は選別し、書物や巻物も目を通すが……内容は伝記や歴史ばかり。
「……役に立つのは金貨だけか。」
少しだけ落胆しながらも、大儲けには違いない。
すべての整理が終わったところで、念のためアイリは尋ねた。
「ねぇ、サジ。他に隠し通路とか、宝物とか、ないの?」
「うん、外みたいな道とかあったら教えてほしいなー」
『ありません。』
サジは首を横に振る。
それもそうか。
千枚以上の金貨に、魔法使いの装備一式――これだけで十分すぎる。
「じゃ、ここでちょっと休憩しよう。元気になったら、また冒険再開ね!」




