第十五話 お宝発見?(2)
今のアイリには、ユニークスケルトンのことなんてどうでもよかった。
彼女は真っ先にジルのそばへ駆け寄った。
魂のリンクから伝わる気配。
ジルの魂の炎は、まるで今にも消えてしまいそうなほど微弱になっていた。
──ダメ、ダメだよ……ジル……!
完全に意識を失っているジルには、自力でポーションを飲むことすらできない。
回復魔法を使える職業は……パーティにいない。
祭祀職がいないこの状況じゃ、どうしようもない……!
「どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしようっ!!」
頭を抱えながら、アイリの全身が震える。
どうにかならないの!? 何か……何か、手は……!
──私の魂の力を……ジルに分けるって、どう?あの時、タイタンに分けた時みたいに……
「……っ!」
アイリの目が見開かれる。
どれだけ危ない賭けかなんて分からない。でも、何もしないなんて……絶対に嫌だ。
『ご主人様!』
『できるの!? 方法あるの!?』
『ご主人様、ダメです! 魂力を直接分けるなんて……ジルの魂が消滅してしまいます!!』
その言葉に、アイリの動きがピタリと止まる。
魂同士は本来、互いに混ざることを拒む存在。
個体としての魂は本能的に他を排斥し、もしも意識のある魂に他者の魂力を強制的に流し込めば――
激しい拒絶反応が起きる。最悪、魂ごと壊れてしまう。
……だからこそ、アンデッドのパーティには、亡霊祭祀の存在が必須なのだ。
危険性を理解した瞬間、アイリの背中に冷や汗がつうっと伝う。
でも、それでも……ジルの魂の炎は、今にも消えそうなんだ……!
『お願い、お願い……サス! 何か、何か方法はないの!?』
アイリの声は震えていて、どこか泣きそうな響きがあった。
その時、デスナイトはすでに現場に到着していた。
穴に叩き込まれた骸骨の残骸に一瞥をくれた後、彼は言った。
『……《ソウル・ブランディング》を試すのは、どうでしょう。』
『え……ジルに、私が……!?』
『烙印さえ刻めば、ジルはご主人様の魂力を受け入れられるはずです。
ご主人様の魂操作の精度なら……可能です。』
『でも……ジルを傷つけたりしない……?』
『彼女が拒絶しなければ、大丈夫です。
……今、他に手段はありません。』
(……やるしかない)
アイリは静かに目を閉じ、己の魂を伸ばし――ジルの魂の炎へと触れようとした。
細心の注意を払い、少しでも負荷をかけないように、まるで繊細なガラス細工に触れるように。
そして──触れた瞬間。
(……あれ?)
拍子抜けするほど、すぅっと。
まるで最初から、アイリの魂がそこにあるべきだったかのように。
ジルの魂は、なんの抵抗も見せず、むしろ優しく受け入れてくれた。
その温かさに、アイリの胸がじんわりと熱くなる。
《ソウル・ブランディング》発動。
今までで一番緊張した。
誰よりも大切な存在を壊してしまうかもしれない……そんな不安に手が震える。
でも、ジルは一度も拒まなかった。
むしろ、どこか嬉しそうな……安心したような気配さえ感じられた。
(……刻めた!)
静かに、優しく、それでいて確かな印。
ジルの魂に刻まれた印によって、アイリは一瞬で彼女との魂の繋がりが深まったのを感じた。
この瞬間を待っていた。今なら──!
「お願い……ジル、お願い……目を覚まして……っ!」
アイリは魂力を込めて、全力でジルへと送り込む。
もう、祈るしかない。だって、彼女の希望は全部、このたった一つの方法に託されてるんだから。




