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第十話 アルバイト任務、完了した?(3)

「……ますます厄介なことになったな」


アガートは半ば諦めたように呟いた。


この瞬間、統領級スケルトンは完全にタイタン巨人の骨骸の制御を掌握していた。巨人の《魂の火》を喰らい、さらなる力を得たその姿は、まさに圧倒的だった。


もともと統領級さえ倒せば勝てるはずだった。だが今や、相手にすべきはその巨大な骸骨そのものとなったのだ。


確かに火力は集中できる。しかし、強化された巨人のスピードとパワーが、アガート小隊の優位性をあっという間に打ち消してしまった。


アガートの破壊力は強い。だが、あの拳がある限り自由には動けない。


サイモンの牽制も効果薄で、ヨールの魔法は巨人の頭蓋を貫くことができず、魂の火にも効果が見られない。


防御に秀でたエグが全力で攻撃を受け止めてはいるが、周囲では他の不死者たちが獲物を狙って蠢いていた。


──もう限界だ。


何度も死線をくぐり抜けたアガートは、ついに決断した。


『アイリ、撤退する! まず君が戦場を離脱しろ!』


小柄で戦力も控えめなアイリを、安全な場所へ退避させるのが最優先だ。


(サスには、もう間に合わないか……)


アイリは静かにうなずき、戦場を離れようとした──そのときだった。


戦場の一角に、異様なほど強烈な《魂の火》が出現したのを感じた。


それに最初に気づいたのは、戦況を注視していた死霊祭祀のアンナだった。


『マズい……デスナイト!』


『あれは……〈魂装武鎧ソウル・アーマメント〉を覚醒させたデスナイトか!?』


アガートが驚愕の声を上げる。


だが、そのデスナイトは次の瞬間、アガートの脇を疾風のごとく駆け抜け──タイタン巨人へ一直線に突撃した。


そして──誰もが目を疑う光景が広がる。


突進してくるデスナイトに対し、タイタン巨人は拳を振り下ろす。大地が砕け、砂塵が舞い上がった。


だが、デスナイトはその巨腕を駆け上がり──


「ギィン!」


長槍が巨人の頭部に突き刺さった。その一点から、蜘蛛の巣のように亀裂が広がっていく。


怒りに震える咆哮が響き渡り、凄まじい魂の嵐が戦場を包み込んだ。


タイタン巨人は左手を高く上げ、デスナイトを掴もうとした。


だが、デスナイトはその嵐を意に介さず、馬の後脚が地を蹴ると同時に、ひらりとその手をかわしてみせた。


──もちろん、それだけで終わるわけがない。


巨人の第二の拳が、凄まじい勢いで振り下ろされる。


だが、全力を解放したデスナイトは規格外だった。


彼の騎乗する不死戦馬の機動力は、加速した巨人ですら捉えきれない。どんなに強大な力も、当たらなければ意味がない。


そして、デスナイトの一撃一撃は着実にダメージを重ねていた。


その姿を見て、アガートたちは即座に判断を下した。


──撤退だ。


アイリは当初、デスナイトと連携して再戦するつもりだった。だがアガートたちの行動はあまりにも素早く、声をかける暇もなく、仕方なく彼女も後を追った。


……とはいえ、出だしは良くても、デスナイトが本当に勝てるかどうかは未知数だ。


もし倒せなければ──逃げるしかない。


戦場の中央にいる統領級は、もはや誰も手出しできない存在となっていた。その他の不死者にとっても、アガート隊の撤退を止める術はなかった。


こうして、アガート小隊とエリーは無事に古戦場の外縁へと脱出した。


安全を確認した彼らは、魂のリンクを解除する。魂力を使い続けるには、皆あまりにも疲弊していた。


「……ここまで来れば、もう安心だろう。」


サイモンが辺りを見回しながら言った。


戦場を離れたことで、ようやく皆に安堵の表情が戻る。


「アイリ……どうやら、君のバイトは失敗だったみたいだな」


アガートが苦笑すると、エグが言った。


「さっきの《シャドウアロー》、すごかったぜ。ほんとに新人なのか?」


「偶然覚えた魔法なの。発動時に威力が上がるけど……少し時間がかかるんだ。」


「なるほどな。」ヨールが頷く。あれが即撃ちだったら、ちょっと反則だ。


「みんな、今日はもう限界だろう。いったん《安寧鎮》に戻って、休養を取ろう?」


「賛成だな。」


そのとき、エグが尋ねた。


「アイリ、うちの小隊に入らないか?」


彼女のポテンシャルは、誰の目にも明らかだった。


「ごめんなさい……仲間が待ってるの」


「そうか……残念だな。じゃあ、《安寧鎮》まで一緒に戻らないか?」


「ううん、まだやることがあるから」


「そうか……じゃあ、ここでお別れだ」


「また《聖火城》に来ることがあったら、絶対に立ち寄ってね!」


アンナが笑顔で手を振る。


「うん、必ず行くよ」


別れの言葉を交わし、アガートたちはその場を後にした。


アイリはちょうどいい岩を見つけて腰を下ろし、彼らの遠ざかっていく背中を静かに見つめていた。

よく考えてみたら、このシーンってアイリがあまり活躍できてないかもね(笑)

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