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第七話 初めての取引?(1)

アイリとジルは、デルドとトピッドに別れを告げ、「安寧の町」へと足を踏み入れた。


しかし、目の前に広がった光景は、二人が想像していたものとはまるで違っていた。


陰鬱で不気味な雰囲気が漂う――そんな町を想像していたのに、そこは予想外にも賑やかで、どこか活気に満ちていたのだ。


道を行き交う数多の遺忘者たち、通り沿いには様々な露店が立ち並び、あちこちで品物が売られている。

中には、高度な知性を持つ骸骨や幽鬼のようなアンデッドたちの姿もあった。


「見てってよ! これは高級な裁縫スキルでしか作れない特製ローブだよ!」


「エンチャント付きの鋼鉄の盾だよ、そこのお客さん、ちょっと見ていかない?」


「できたてホヤホヤの強化ルーンだよ~! 通りすがりでも大歓迎っ!」


「高性能回復ドリンク、一瓶たったの一金貨だよ~! 今だけ大特価!」


アイリとジルが町の奥へと歩みを進めるにつれて、活気あふれる呼び声が次々と耳に飛び込んでくる。

売られているのは武器や防具だけでなく、奇妙な素材や、動物の骨、爪、牙といった珍品までさまざまだ。


この思いがけないにぎやかさに、ジルの橙色の瞳がぱあっと輝いた。彼女はあちこちを見回して、まるでお祭りに来た子供のように目を輝かせていた。


その一方で、若く可愛らしい二人の遺忘者――アイリとジルの姿もまた、多くの注目を集めていた。


そんな中、アイリの視線がふとある店舗に留まった。


その店の看板には「錬金素材販売」と書かれていた。


「ジル、あのお店……ちょっと入ってみない?」


「うんうんっ!」

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店の中に一歩足を踏み入れると、そこには一般の人間が見たら思わず顔をしかめるような品々がズラリと並んでいた。

奇妙な毛髪、眼球、骨、血の付いた牙や爪、さらには内臓らしき物まで――グロテスクな素材が所狭しと陳列されていたのだ。


だが、錬金術師にとっては……これこそが「普通の素材」なのだろう。


アイリは一部の実験器具には見覚えがあったが、素材そのものに関してはまったくの素人だった。


カウンターの隅では、店主がウトウトと居眠りしていたが、扉のベルの音に気づいてゆっくりと目を開けた。

そして目の前に立つ、若い二人の小さな死体少女を見て、のんびりと口を開いた。


「いらっしゃい……何かお探しかい?」


「素材を売りに来ました」

アイリは簡潔に答える。


安寧の町へと向かう途中、二人は幾つものスケルトンやゾンビを倒していた。

空間バックのような便利アイテムは持っていなかったため、使えそうな部位だけを小さな袋に詰めて持ち運んでいたのだ。


また、デルドと共に採取した錬金素材の草も、大半は《死息精製》で消費してしまったが、運良く二株だけ残っていた。


「ほぉ? どんな代物だい?」


アイリは小袋から、一株の死の気配を帯びた草を取り出す。


「これは……上物だな」


店主の目が細くなり、輝きを帯びた。


続けて、エリィは硬皮ゾンビの爪や、堅い骨の棒など――いわゆる「死体の残骸」も取り出して見せる。


「この草、なかなかの品質だ……」

草の葉をじっくり観察しながら、店主は続けた。


「葉の色と死気の純度からして……上級品だね。一株で金貨二枚出そう」


「目の付け所がいいな、嬢ちゃん」


店主は他の素材にも目を通し、満足そうにうなずいた。


「このパーツたちもなかなか死気が強くてね……錬金素材としては十分すぎるくらいさ」


「それじゃあ、全部でいくらになる?」

ジルが横から聞き込んだ。


「そうだな……少し待ってておくれ」


素材をひとつひとつ丁寧に確認した店主は、やがて結論を口にした。


「ぜんぶ合わせて……金貨五枚、銀貨三十六枚ってところだな」


アイリは静かにうなずくと、ふと思い出したように尋ねた。


「……空間バックって、置いてますか?」


「もちろんあるとも!」


店主はニッと笑みを浮かべ、カウンターの下から二つの小さなバックを取り出した。


「こっちが三マスのバックパック、こっちは六マス入り。お値段はそれぞれ金貨二枚と五枚ね。あと、別のデザインのショルダーバッグもあるけど、お値段は同じだよ。」


「た、高いっ!」

ジルが思わず声を上げた。


「物の出し入れを考えると、やっぱりショルダーバッグのほうが便利よね。じゃあ三マスのを二つ……これ、少し安くなったりしないかな?」

(六マスのは手が出ないし、二人で分けた方が効率的だし)


「うーん……」

初めての客との関係を良くしたい店主は、少し考え込んだ後、答えた。


「じゃあ……金貨三枚と銀貨六十枚でどうだい?」


「金貨三枚、銀貨十枚!」


「金貨三枚、銀貨三十! ……これが限界だっ!」


「うん、いいよ~! 交渉成立っ♪」

アイリは満足げに微笑みながら、手を差し出した。


「毎度あり――」



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