第六話 初めての街?(1)
アイリが放ったこの一撃――《シャドウアロー》は、まさに規格外だった。
デスナイトの頭蓋骨を完全に貫通し、その周囲の骨までも粉々に砕け散った。
そしてその瞬間――
その場にいた全員の魂の炎に、ぞくりとするような恐怖の悲鳴が響き渡った。
一番近くにいたエリィは、意識がぐらりと揺らぐのを感じた。
デルドは三人の中で最も魂が強いため、なんとか耐えることができたが……
三度目の魂衝撃を受けたジルの顔色は蒼白に近く(遺忘者の正常な肌色は水色)、その瞳のオレンジの光は今にも消えそうに揺れていた。
それに気づいたエリィは、すかさず叫ぶ。
「ジル! ドリンク飲んで!」
「……うん」
倒れていたジルはすぐに懐から回復ドリンクを取り出し、口にした。
――だがその隙を逃すことなく、不死の戦馬が衝撃から回復し、ジルを気にすることもなく、主人を救おうとエリィめがけて突進してくる。
……しかし、アイリは今回は頭を投げなかった。
彼女の口元が、ゆっくりと不敵な笑みに歪む。
彼女が試そうとしていたのは――
そう、《ソウル・ブランディング》。
アイリは自らの魂を延ばし始めた。
知性あるアンデッドにとって、それは手足を伸ばすのと同じく自然な動作。
その魂は、デスナイトの頭蓋に宿る魂の炎へと伸びていく。
そこにあったのは――
怒りと恐怖の渦。
《お前……何をするつもりだ……!?》
すぐさま激しい抵抗が返ってくる。
だが、今のデスナイトの魂の炎はあまりにも弱っていた。
アイリはかすかな反動を感じただけで、傷ひとつ負わなかった。
迷うことなく、彼女は魂を拳のように凝縮し――
魂の炎に、渾身の力でぶつけた!
「グアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
凄絶な咆哮があたりに響き渡る。
魂と魂の直接戦闘――
アイリはすぐに魂の奥へと潜り込む。
弱り切ったデスナイトには、もはや抗う力も残されていない。
そして、彼女の魂はついにたどり着いた――
デスナイトの魂の核へと。
意念ひとつ。
エリィは奇妙な文字列で構成された魔印を、強制的に刻み込んだ。
《やめろ! この私を支配する気か!? 貴様のような下等な……うわああああああ!!》
怒りに満ちたデスナイトの絶叫。
しかし、その叫びも、魂の奥底からの灼熱の苦痛にかき消された。
《ソウル・ブランディング》。
それは、刻まれた者に絶対服従を強いる、アンデッドの支配契約。ほんの僅かな抵抗でも、魂は炎に焼かれ、刻印者が死ねば、刻まれた者は即座に灰となる。
それは極めて一方的で、非道な主従関係。
……だが、すべては一瞬の出来事だった。
魂の戦いを終え、自身に魂を戻したとき――
不死の戦馬は、ようやく一歩を踏み出したばかりだった。
「止まりなさい」
アイリの声は、冷たく鋭かった。
ジルを吹き飛ばしたその馬に対し、彼女は明らかに怒っていた。