第一話 私は遺忘者?(1)
これは、めちゃくちゃ高くて、外見がちょっとボロボロな、めっちゃ年季の入った尖った塔――そう、まさに「尖塔」だった。
で、その塔の中のとある密室。
ぽつんとひとつだけ、手提げランプがチラチラと弱い光を灯してる。
そのランプの灯りで、なんとか持ち主の姿が見える……が。
人、というより――いや、ぜんっぜん人じゃない。
どう見ても「人型をしたなにか」って感じの、モンスターだった。
顔はカッサカサで、肌の色はドス黒い緑。
頭のてっぺんには、まばらな銀髪が残ってるけど、もうすぐ全部抜け落ちそう。
でもその顔の中心――目のあたりには、本来あるはずの瞳じゃなくて、ギラッと光る黄色とオレンジの炎みたいな光があった。
その目――というか、光は、干からびたその体とは真逆の印象だった。
まるで生きた火。ピチピチ動いてて、やたら元気!
「また新しい“遺忘者”が生まれたか……」
ランプを持ったモンスター(?)は、ちょっとダミ声でつぶやいた。
「……転生、失敗っぽいな。まあ、珍しくもないけどさ」
目の前には、灰色の石のベッドがいくつか並んでて、
そのうちの一つに――めっちゃ簡素なインナーとショートパンツだけを着た女の子が寝てた。
その子、顔立ちはやたら整ってて、シュッとしたエルフ耳がぴょこん。
髪はちょっとボサボサだけど、深い青色のロングヘアが印象的だ。
……でも、普通の人間とは明らかに違う。
彼女の肌の色――それはまるで水のように淡い、透き通った青。
「これは……薪代わりにでもするか」
ランプの男がそう呟いた、その瞬間――!
バッ!
石のベッドの上のエルフ少女が、いきなり目を開けた。
しかも、その目もまた……ランプの男と同じ、ピカピカ動くオレンジ色の目!
「な、なんだと!? 起きた……だとっ!?」
ランプの男が思わず叫ぶ。
「うっさいなぁ!」
少女はガバッと起き上がると、手元にあった何かをつかみ――
ブンッ!
ガツン!
その「何か」、まさかのサビだらけのスコップで、しかもそれが直撃。
ランプ男の頭にズブッと突き刺さって、ドクドクと緑色の血が……え、こわ。
「……なぁんだ、夢かぁ」
少女はランプ男を一瞥すると、ふつーに石ベッドに戻ってゴロリ。
「10分後に起こして~……」
「最近の新生魂って、こんなに図々しいのかっ!?」
ランプ男、激おこ。
「え、夢じゃないの?」
「夢なわけあるかぁぁぁ!!」
「だって、あんたみたいな変なやつ、夢じゃなきゃ出てこないよ?」
「……たしかに、新人の転生者は記憶がぐちゃぐちゃだが、
おまえみたいなのは初めて見たわ!」
ランプ男は、頭に刺さったスコップをうんしょと引っこ抜くと、
ふぅとため息をついて言った。
「……オレたちは、“遺忘者”だ」
「“たち”っていうか……あんた一人じゃないの?」
「いいから現実を受け入れろ! おまえは、もう“死んでる”んだ!」
「冗談でしょ? わたし、さっきまでぐっすり寝てたんだけど?」
「はぁ……いいから、自分の体をよ~く見て、思い出せ」
「んー?」
少女はようやく、自分の肌の色に気づいて――
「ええっ!? なにこれ!? なんでわたし死んでるのっ!? うそ、うそでしょ!?」
そして、頭の中がグチャグチャになって、震えながらつぶやいた。
「なにこれ……なにも思い出せない……っ」
さらに、自分の指先とつま先が、やたら鋭くなってることにも気づく。
「……これで、信じたか?」
ランプ男は、驚いた表情の少女にうなずきながら言う。
「“遺忘者”になった者は、名前と、生前の生活の知識以外、ほとんどの記憶を失うんだ」
――それが、“遺忘者”と呼ばれるゆえんである。
「で、名前は?」
「わ、わたし……アイリ……アイリ・ネコテ……です……」
私は日本人ではなく台湾人なので、文章の表現や言葉の使い方が正確かどうか少し不安です。もし何か気になる点があれば、教えていただけると嬉しいです~!よろしくお願いします~!
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