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8 少しだけ人とは違う能力を持っているだけで

急を要するといっても、さすがに今すぐ出発するわけには到底いかないので、三人を私の家に連れていき、今後について話すことにした。


あの後、グラダナスさまからアルデウス王国へ行く方法、行ってやるべきこと、注意点などをざっくりと聞かされた。


内容を整理すると

・エネルギーがほば枯渇しているギャロファーを、アルデウス王国へ持っていき、エネルギーを補充してくる

・ギャロファーのエネルギー補充場所は、三人の持っているギャロファーの色によって違う

・三人が現し世やアレクシアから来たことは知られてはならない

・アルデウス王国の通貨は持たせるので、必要なものはあちらでそろえられる

・宿泊は王国内の宿へ

・こちらと通信できるアイテムは持っていく

・ギャロファーのエネルギー補充までかかる時間は約72時間

・こちらに戻ってくる力と方法は、莉央に授ける


「リフォアナさんは一緒には行けないの?」

と不安そうにおりかが聞く。


「そうね。私は行けない。でも、通信ができるアイテムはあるから、それでやり取りはできるから。フォロスコープだけど姿も投影できる。そうすれば私も立体的にあちらの世界を見ることができるわ。なにかあったらこれから魔法を送るから大丈夫」


「送信アイテムってこれ? スマホ、だよね」


「現し世ではそういうの? アレクシアではこれをライフって呼んでいるわ。これがないと、ゲーム中の自分の残りのエネルギーとか分からないし。自分が使えるアイテムが全部このライフに格納されているの。さあ、詳しい話はこれぐらいにして、みんなとりあえず寝ましょう。体力がないとなにもできないし、ね」


そう言って、三人をベッドのある部屋に案内する。

突然知らない世界に連れてこられて、さらに異世界に行けと言われて、いろいろパンクしていると思う。


私も一緒に行けたらいいのだけれど、それはできないし。もどかしい。



寝室に案内された三人は、用意されていたパジャマらしきものに着替えて、それぞれが顔を合わせられるようにベッドの上に座った。


今日初めて会った三人だ。無言の時間が過ぎる。


気まずい空気が流れる中、おりか口を開く。


「……あの……。私、山城おりかです。二人の名前は……」


「私は、神崎莉央。高校三年生です」


「あ……私は、生川おいかわ花音。大学三年……」


「なんて言っていいのか……。よろしくお願いします、でいいのかな。私が一番年上かな。二十三歳イラストレーターやってます。あの……みんな、急にこの世界に来た、んですよね。さっき変な大魔王みたいな人が言ってた、能力? を持っているんだよね」

おりかがそう聞くと、莉央がこたえる。


「能力っていっても、普通の人間です。とびぬけた能力を持っているわけじゃない……。私は、いわゆる霊感みたいなものが少しあって、そういうものが見えるというか、感じるというか。そんな世界を救うみたいな能力なんて、ないです……」


「私は、ちょっと特殊かも。ものを触ると、なんていうか、そのものが持つ記憶というか、ものが見ていた状況? 景色っていうのかな、そういうのが見えるというか、分かる。うまく説明できないけど、そういう能力があるみたいで。でも日常生活には全然役に立たないし、今までこの能力を使ってなにかしたってこと、ない……」

と花音がとまどったように言った。


「私は、空間に絵を描けるっていうか。説明が難しいんだけど、VRって分かる? 仮想空間の中に、ゴーグルをつけて絵を描くの。能力っていうか、ゴーグルつければ誰でも絵は描ける。ただ、私はVR空間の感知能力が人より少し高いみたいで、普通の空間と同じようにVR空間も見えて、そこに自由に絵を描ける」

おりかがちょっと自慢気にそう話す。


「じゃあ三人とも、少しだけ人とは違う能力を持っているってことで、選ばれてしまったんですね……。でもこんな能力で世界なんて救えるのかな……」

莉央が心細げにつぶやくと、

「でも、もう選ばれてしまって、ここへ来てるんだから、やるしかないよ。もうやるしかない」

とおりかが自分にも言い聞かせるように言う。


「明日またリフォアナさんから、詳しい説明を聞こう。まずは寝よう。これ夢かもしれないし。朝起きたら元の世界に戻ってるかもしれないしね。ふふ」


そう言うおりかに、ほかの二人は静かにうなずいた。

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