6 集められた勇者女子三人
「ここ、どこ」
「なにが起こってるの?」
「これ、夢?」
莉央、花音、おりかが呆然と立ちすくんでいた。
リフォアナは、三人の前に膝から崩れるように座りこむ。
なんとか十日以内に間に合った。人間の世界に放たれたギャロファーと、そのギャロファーを手にすることのできる者三人を連れてくることができた。その安心感で、リフォアナ今まではりつめていた気持ちが緩む。。
でも、これからこの三人に、どうやってギャロファーのことを説明すればいいんだろう。
そして、この持ち帰ったギャロファーをどうすればいいのかは、まだ私も聞いていない。とりあえず、彼女たちに、今の状況の説明をしなくては。
「急にこんな所に連れてきてしまってごめんなさい。驚いたでしょう。わけが分からないわよね」
そうたずねると、「見える」能力を持つ美しい黒髪の莉央という子が「これって現実? 私死んだんですか?」と聞いてくる。
「死んでない。死んでない。いろいろ事情があり、助けてもらいたくて、あなたたちに来てもらったの」
「助けるって、どうやって? なにを?」
深いブルーのショートボブの髪を揺らし、少しいらだった感じで聞いてきたのはおりか。「空間認知能力」を持つ。
三人目の「手にした物の背景見える能力」を持つ花音は、もうおおまかなことは分かってくれているようで、ポニーテールにまとめた頭を左右に振りあきらめたよう表情で、ほかの二人を見ていた。
「信じられないかもしれないけど、ここはカードゲームの世界『ラウラレ界』。仮想でなはなくて。この世界は、現し世、あなたたち世界では「現代」とか『人間界』というのが分かりやすいかしら。そことは別次元で存在してるの」
説明をしながらも、自分でも怪しい話だ、信じられないよねと思う。
ここカードゲームの世界は、ただのゲームじゃなくて、人間がゲームでカードを使えば使うほど、バトルの数が多くなればなるほど、熱狂すればするほど、この次元のエネルギーが膨らんで、「ワールド」として、拡張していく。なんて説明されても、そんなの信じられないと思う。現し世の人たちは、次元の多面的な思考を持っていないもの。
私がどう話そうか考えいるその時、おりかが言った。
「あ。私、あなたを知ってる。ビーナス・リフォアナ」
えっ。どうして? どうして私の名前を知ってるの?
「リフォアナは、私が表紙を描いている、小説の主人公だから……」
「えっっーー」
思わず声が出た。
「多分、その小説を書いた作家さんが、あなたの持ち主だと思う。七十歳ぐらいのおばあさま……」
「おばあさまが、私の持ち主? あの戦略的な戦い方で、私を頂点に育てた人が七十歳???」
まさか、だった。
このワールドからは、人間の世界は見えない。存在は分かっているけれど、自分の持ち主の顔や存在は実際に自分の目では見ることはできないのだ。
「おばあさま……だったんだ。あの容赦ない攻撃ができるのって、男の人かと思っていたわ」
「仕事でやり取りをしたおばあさまのメールに書いてありました。ゲームの時は、思考が変わるって。徹底的に相手をつぶす。パワーをできるだけ使わず。自滅させるようなやり方でやるって……」
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください」
一番状況を理解できていなさそうな莉央が、私とおりかの会話をさえぎる。
「ここはゲームの世界で、私たち三人はこの世界を救うために、人間界から連れてこられた。で、目の前のきれいな人は、あなたの知り合いのおばあちゃんが持つカードのキャラクター、ってことですか?」
「そうみたい。それで、このカードの世界の核となっている石? みたいなモノのの三つが何者からよって持ち出されて、人間界に隠された。その三つの石がないと、核の存在がなくなり、このゲームの世界は崩壊する。それをさせないために、石とその石を持てる人間? を探していた。ってことみたい」
事情をなんとなく理解している、花音が莉央に説明してくれる。
「でもどうして、私たちを連れてきたの?」
おりかが不思議そうに言う。
「石がみつかれば、それでいいんじゃないの?」
「石がみつかればいいってものではないの。石はギャロファーっていって。ギャロファーはなぜか、私たちゲームの世界の者は触れられないの。人間界とアルデウス王国の者しか触れることができない。そして、人間の中でも、スペシャルギフトっていう特別な能力がある人にしか、ギャロファーの核にエネルギーを戻すことはできない。だから、あなたたちじゃないと、この世界は救えないの。あなたたちに勇者になってもらいたい」
すると、どこからかグラダナスさまの声が降ってきた。
「間に合ったようだな。でも、もう時間がない。すぐに出発の準備をしよう」