4 現し世の世界/おりか「空間をつくれる」-気を失う-
だめだ。だめだ。だめだ。何度描いても、うまくいかない。
電子書籍の表紙。
せっかく私のイラストが編集者さんの目にとまり、表紙デビューを飾れるはずなのに。
作家さんからOKの返事がもらえない。
『主人公のビーナスは、もっと透明な清らかさがあって、目には見えないけど、ピンクががった水色のオーラをまとっていて、とにかく圧倒的な強さがあるんです』
って作家さんに言われても、その情報だけで、作家さんが想像しているゲーム界のヒロインの姿が、分からない……。
作品は読ませてもらったけど、最後は、数々の戦いに勝ち抜き、最高峰のビーナスとなってゲーム界の覇王と結ばれるハッピーエンド。
強さっていわれても、ピンとこないよ……。
目には見えないオーラってどう描けばいいのか……。
私は、実は平面に絵を描くのは苦手。
得意なのは、VRアート。
両手に、コントローラーを持って、ゴーグルをつけて、空間に絵を描くっていうか、なにもない空間に、新しい空間や世界を立体的に描くのが好きで、得意。
人からはよく言われる。
「VRアートのほうが得意ってめずらしいよ。奥行のある空間で360度全面の画を描けるって、それ特殊な『空間認知能力』だよ」
って。
でも、VRアートはまだまだマイナーで、「描く」ことだけで生きていくことは難しい。
生活のため平面に描くの仕事をコンスタントにこなすことが、VRを描き続けるには重要になる。
だから、今回の表紙の仕事は、平面のイラストレーターとして知名度を上げ、仕事の幅を広げるビッグチャンスなのだ。
でも。
あー。
全然描けない。
くぅ。気晴らしに、お気に入りの漫画でも読もうと思い、パパの部屋にある本棚をあさる。
この本棚、好きなんだ。
もともとは、パパの行きつけの古いBarにあったお酒やグラスを並べていた食器棚を、Barが閉店する時にゆずってもらって、それをパパが改造して本棚にしたもの。
渋くてかっこいい。
なんか、見ていると、棚の中に引きまれそうになる時があるけど。
本棚には、家族のそれぞれ好きな本や漫画がぎゅーぎゅーに並べられている。
落ちた気分を上げるには、どの漫画を読もうかなーって思って、本棚の前に立った時、
コトリと、なにかが転がるような音がした。
音がしたほうを見ると、紫色の石みたいなものが落ちていた。
こんな石、あったっけ?
あれ、なんかだんだん光ってきてない?
本棚に置いてあった?
それを拾って見てみると、自分の手から石が浮き上がる。
なに?
はっ。これ夢?
すると、声がした。
「手に持ったな」
はっ?
思わず「持ったよ……」ってつぶやくように答えると、その声は「持った!」とうれしそうに言った。
すると、目の前に大きな光が表れた。
なに? なに? なに?
その光は私を包みこみ……。
そこで私、山城おりかは気を失った。