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10 できる莉央

莉央はリフォアナに広場に連れてこられていた。広場には多くの人が行きかっている。


「莉央。いい、この広場にいる人の中で、魂のない人を見つけてみて」


莉央はリフォアナの言葉にうなずくと、広場にいる人たちの霊視を始めた。


精神を集中させる。

目線を宙に漂わせる。

そうするといつもは、ふっと音が聞こえなくなって、霊体の動きが見えるのだ。

でも、今回は霊体は魂だから、魂のない人は、そもそも見えないのでは……、そう思っていると。


「見える。あの木の横のベンチに座っている人。頭の上に糸みたいなものが見える。あ。あそこの歩いている人の頭の上にも糸。分かりました。糸がついている人は、魂がない人なんですね」


「驚いたわ。莉央すごい。見え方も完璧。そう正解。私が人形を糸で操っているの。見え方も完璧」


リフォアナがそう言いながら右手を上げると、糸のついている人たちはすっと消えてしまった


「あなたには、私の魔法を織り込むことはしなくていいかな。その代わり、莉央自身が魔法を使えるようなるかもしれない」


「私が、魔法、を? 無理です。ただのちょっと霊感が強い女子高生なだけです。魔法なんて無理無理」


頭をぶんぶんとふる莉央の肩に、リフォアナが手をおいた。


「大丈夫よ。あなた、魔法使いの血を受け継いでいるわ。お母さまかおばあさまとか、もっと前の誰かは、魔女よ」


「え。そんなこと……」


そう言いかけて、莉央はふっと思い出したことがあった。小さいころに母親が言っていた言葉。


莉央が幽霊は見えると言って、友達から嘘つきと言われ、泣きながら家に帰ってきた時のこと。

莉央を自分のひざにのせてぎゅっと抱きして背中を優しくさすりながら言っていた言葉。


「困ったわねえ、莉央は嘘ついてないし、本当に見えるだもんねえ。

でもね、莉央。莉央が見えるものが、みんなが見えるっていうわけじゃないの。ママにはちょーっとだけ見える。でも莉央みたいにはっきりといっぱいは見えないの。


もう亡くなってしまったんだけど、ずっーと前に生きていた、ママのおばあちゃんはいろんなものが見えたり、魔法が使えてたってママ聞いたことがあるわ。莉央はそのおばあちゃんの血を引いたのかもね。それはいいことよ。よかったねえ。


でもね、この力のことはあまり人には言わないほうがいいみたいね。いつか必要になった時に使えるよう、大事にしまっておきましょう」


そう言ってた。


小学校に入ってからは、見えても見えないフリをしていたし、怖い話ブームの時は、実は少し見えるっていうと、みんなが「すごい、霊感あるんじゃない!」とか言ってくれたりもした。

そのあたりは自分で調整して話をしながら生活していた。

でもこのリフォアナのひと言に、あの時の母親の言葉を思い出した。


「ママのおばあちゃん、魔法使いだったのか……」


思わずそうつぶやいた。

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