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第13話 ようやく見つけた『犯人』の姿(前編)

「川野様もなかなか隅に置けませんね」


 宝石売り場の応接室に通された陽介に赤坂が微笑みながらそう言った。

 すべてお見通しですよ。

 その笑顔がそう語っているように陽介には思えた。


「……え?」


 どうにか陽介が口にすることができたのは、その一文字だけだった。


 ……なかなか隅に置けない?……。


 陽介は困惑の表情を浮かべた。



 その表情を見ながら、赤坂がゆっくりとこう言った。


「この前、こちらに来ていただいて以来、ずっと考えておりました。

 それで今日ようやく結論がでました。

 今回の一連の出来事には『女性の影』があるのではないか? と」


 それを聞いた陽介はすぐに二人の女性のことを思い浮かべた。


 ……妹の蘭か……それとも同僚の内藤飛鳥か……。


 この数日陽介を悩ませていた『()()()()』が同時に浮かびあがってきた。



「その女性は——」赤坂がそこまで言うと、小さくうなずいた。「どうしても川野様のご結婚を阻止したかったようですね」


 それを聞いた陽介はすぐにこう考えた。


 ……僕の結婚を阻止したい?……それじゃあ、やはりストーカーじみた内藤飛鳥が指輪を盗んだ、ということか?……。


 そう心の中でつぶやくと、もうひとりの女性である妹の蘭を候補からはずそうとした。だが、


 ……いや、待てよ……万が一ということがある……。


 そこまで考えた陽介は頭の中に浮かんできた考えに、恐れに近い混乱を感じた。


 ……蘭はもしかして、僕のことが?……小さいときから僕の持っているものをすぐに欲しがった。それはもしかして愛情の裏返し?……『ヨウスケのものはわたしのもの』という口癖がその心理を表しているとは考えらえないだろうか?……すると、蘭も僕の結婚を阻止しようと動いたとも考えられる……。


 当惑した陽介は何度か首を振った。



 その様子を見ていた赤坂が口を開いた。


「かなり頭のよい女性ですね。

 川野様がプロポーズするということを知って計画した作戦はみごとです」



 陽介は心の中で二人のことを考えた。


 ……頭がいい?……たしか、内藤飛鳥は有名私立大学の出身だったはず。仕事ぶりもしっかりしているし、頭がいいことは間違いない……じゃあ、蘭はどうだ?……いや、真面目にしようとしなかったから、学校の成績はイマイチだったが、あいつはかなり頭がいい。僕とは違う……。


「あ、それと。言い忘れていましたが、消えた指輪はどこにも売却されていないと思われます。

 ある場所に大切に保管されていることは間違いないでしょう。

 ()()()()()()()()()()()()()()()』だった、ということになります」


「す、すり替え?」


「はい。まったく同じ、赤の手提げ袋とジュエリーケースを『彼女』は事前に準備していたのです」


 それを聞いた陽介はまだどちらの『犯行』なのか、理解できなかった。


 ……事前に手提げ袋とジュエリーケースを用意したのはどちらだ?……『付き合って欲しい』と迫ってきた内藤飛鳥か、それとも蘭か?……。


 そう悩んでいると、赤坂がこうたずねた。


「あれ? 川野様……もしかして、誰が『すり替え』たのか、まだわからないのですか?」


「え? そ、それは……」


「ずいぶんじゃないですか、川野様。

 ずっと一緒にいたい、という彼女の思いを理解していない証拠ですよ」


「そう……そう言われても……」


「少し、思い出してみてください。

 頭がよくて、川野様のことを心の底から愛し、ずっと隣にいたいと考えている『女性』のことを。

 川野様と一生離れたくないと願うあまり、なんと赤の手提げ袋とジュエリーケースまで用意したんですよ」


 そこまで話すと、赤坂は意味ありげな笑みを浮かべた。



 だが、いくら考えても陽介には答えが出なかった。

 頭の中で蘭と内藤飛鳥が不敵な笑みを浮かべていた。


「まだ、わからないようですね。では、最後のヒントですよ。

 川野様はプロポーズの件を相談したのは幼なじみのトオルさんだけ、と言っていましたね? でも、本当にそうですか? 

 あとひとり、結婚の話をした相手がいたんじゃないですか?」


 そう言われた陽介はゆっくりと自問自答した。


 ……え? トオル以外に結婚の話をした相手がいた?……そんなはずはない。フラれたら恥ずかしいから、誰にも相談なんかしてないはずだ……。


 ほとほと困った陽介が赤坂にたずねた。


「あの、赤坂さん……本当に誰がやったのか、わかっているんですか?」




「はい。よく考えればすぐにわかることです。『()()()()()()()()()——」

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