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妖精王女と呼ばれ隣の大帝国から嫁いだ美貌の王妃は王国を策謀から救う

作者: 有栖 多于佳

異世界と現代日本と行き来します。謎解きはしません。

暗い暗い中を進んでいた。すごく遠くにある一転の光に向かって。


たすけて、、、、おね、、、おねがい、、、


突然遠くに見えた光が目の前に現れるとその光に吸い込まれた



「・・・さま、・・・さま、わかりますか、王妃様」


!!!!!!!!!

王妃様!


自分の手を握る手に強い力がこもる。

耳元で女性が呼んでいる声が聞こえる。


うっすらと瞼を開けると、メイドのお仕着せを着た栗毛の女性が涙を浮かべて手を握っていた。


「王妃様が目をさまされた!すぐオランド先生をこちらに!」

メイド姿の女性の後ろに立つ男が振り返って声をはった。


私は、回りを見回して自分の知っている場所ではないことはうっすら悟った。


オランドという老齢の医師がすぐにやってきて、診察をうける。

そこで自分が毒によって半年間昏睡状態であった王妃であると知る。


知る・・・知る・・・


へ?王妃?王妃って王さまの奥さんのこと?誰が?


ビックリして声に出てしまったようで、診察していたオランドも付き添っていたメイドも驚愕の表情である。


いや、私が驚愕だが。


私は高校生のサッカー部の息子と中学生の美術部の娘を持つ母真紀子である。

夫は王さまではなく、サラリーマンの忠夫である。

どうなっているのか。



私が寝ている場所はどこぞのホテルのスウィートルームかのような広く豪華なものであり、

その調度品も高級感がすごい。鑑定できる目利きでないから詳しくわからないけど。


お仕着せの女性は、侍女のマリーと言うらしい。

そのマリーが恐る恐る聞いてくる。


「王妃様は、ご記憶が曖昧になってらっしゃいます?」

「曖昧というか、私は誰?ここはどこ?って感じなんだけど・・・」


いや、私は真紀子であるのだが。王妃というワタシは誰なんだろう・・・


「オランド先生、これって」

「な、な、なんと!毒の後遺症による記憶喪失だろうか。なんということじゃ・・・。

セバスチャンにも伝えねば。私は暫し失礼する。」


そう言うと部屋を出ていってしまった。


私はワタシのことを残ったマリーに聞くことにする。

自分のことがわからないって困るよね、情報収集は必要不可欠、てかこんなことあるのねー漫画みたい。

娘が読んでた小説とか漫画によくあるやつ、異世界転生だっけ?流行ってたよね。アニメもたくさんあったし。

それ、なのかしら・・・

・・・

・・・

・・・

主婦真紀子(42)異世界転生したら王妃でした(ハート)・・・だった件とか?


マリーの話によると、ワタシはサルバニア王国の王妃で隣国から嫁いできたらしい。

隣国は広大な土地を持つ北の大国ルシーア帝国である。

この小さな王国は自国との境界近くにある不凍港を略取しようと無謀にも戦争をしかけたが、

瞬殺され、王族も当時の第三王子以外は処刑され、当然戦後賠償金を約束させられた。


残った第三王子が王となり約束の履行のため、また両国和解のシンボルとしての婚姻だったとか。


当時、第三王子は公爵家に婿入りが決まっていたが、大国の要求を飲む形で婚約を破棄しワタシを正妃として迎えたと。

なかなかの悲恋だ。だいたい何で大国に戦争を仕掛けたのだろう。臣下とか止めなかったのかな?

略取してもずっと防衛して保持し続けるのがまた大変だし。そこら辺詳しく・・・


この国に現れた少女が強い魔力を持ち、人間兵器並みの爆裂魔法を放てることを知った魔法騎士団が

この機に領土拡大を進言し、王家も宰相他の高位貴族もその意見を採用したと。

そこで、少女の爆裂魔法頼みの戦略で大国に宣戦布告と同時に不凍港を奪取したが

数時間で取り返されて、敗戦。


へー・・・先王とか無能すぎない?

ちょっと詳細はわからないけど、娘の読んでいた小説か漫画の世界としても、無能過ぎない?

ここら辺はプロローグだから雑でも良かったのかな?


それに巻き込まれたその少女も多くの国民も不憫すぎる。


「その少女はどうなったの?」


「はい。爆裂魔法を最大出力で放つと、港湾が使用できなくなるため実力を発揮できず、

しかも兵器と呼ばれていても普通の少女です。もたもたしている内に帝国兵に捕まり

現在は帝国におります。」


「そりゃそうよね。爆風に巻き込まれたくない王国側はどうせ離れたとこに居たんでしょ?

たった一人の少女を敵の中に置き去りにして。お粗末ね。その子はいくつなの?」

「当時は十三、四と聞きましたが。」


私の娘と同じくらいの子供になんと非道な!っえ、何て国なの?と感情が高ぶる。


その結果第三王子以外の王族と今回の戦争首謀者が処刑され、

帝国との和平のための婚姻をワタシと結んだのか。

なのに和平のシンボルのワタシを王宮から離宮へ追い出した後毒殺未遂(昏睡半年)。

第三王子改め現王(ワタシの夫)クソなのかしら?

和解を破棄したいの?和平のシンボルにそういう扱いって無能なの?


「ねえマリー、ワタシはこの離宮で何をして過ごしていたの?王妃としての仕事はあったの?」

「仕事も何も、嫁いできた初夜の翌朝自室に倒れて居られたのですから。」

ええー、じゃあ和平もすっ飛んでっちゃってるじゃん。

「王は捕縛され、その他容疑のあるものも次々に捕まえておりますが全員否認し、

無人の部屋で毒が見つからず膠着状態でした。」

「なぜ毒殺と?」

「呪いや魔法は王妃様には加護があるため聞きません。毒といっても特定できず。

落ちていた小瓶に付着していたのははちみつでしたし。」

「私がハチミツを自分で食べてアレルギー症状がでたとかじゃない?」

色々聞いたが違うらしい。毒による昏睡ってのは間違いないそう。

魔法捜査でハッキリしているって。

魔法の世界なんだね、ここ。

いよいよ、物語の世界にきた感じするわ。


「王様も捕まっているんじゃ、この国の政治って誰がやってるの?」

「帝国から派遣された統合司令部が行ってますよ。

王妃様の意識が戻ったことで属州化による帝国統治が進むでしょうね」


壮大な国取りの物語なのか・・・

私(主婦真紀子42才)の手には負えないよー

夢の中で助けてっていっていた、どなたか、ごめんね。

お役に立てる感じがしない、なぜ私がここに呼ばれたのか?



マリーもオランド先生もセバスチャン(執事)も帝国から一緒に連れてきた家臣で、

何ならこの別邸を警護している騎士団も全員そうらしい。

もともと戦後に王国の騎士団の多くは粛清されたため、

帝国から治安維持の意味からも帝国騎士団が駐留していると。



「失礼します。」

オランドがセバスチャンと共に現れた。

「王妃様、意識が戻られて安心しました。ですが記憶喪失とは。」

セバスチャンは眉を下げた顔で言った。

この三人は赤子の頃からワタシに使えているだとさっきほどマリーから聞いた。

半年も昏睡だったワタシを長く心配してくれていたのだろう。


「そうね、ワタシのことも含め色々と教えて欲しいのよ。

ワタシは自国では虐げられた妾腹の王女だったのかしら?」


確か異世界ものにはこういう設定が多かったはず。厄介払いで隣国に嫁入りさせられるやつ。



「「「「とんでもない!!!」」」

「「「王女様は陛下と正妃殿下の娘であり、国民には妖精王女と呼ばれ慕われておいででした。」


三人が声を揃えて答えた。


あれ?違うの?ワタシは正妃の娘で、王である父親にも王太子の兄にも溺愛されていたと。

なんなら誰からも愛される属性の王女だったみたい。


「ではなぜ?この国に嫁ぐことに?」

普通、溺愛の王女は手元に置くのでは?私が不思議に思って聞くと


「「「!!!!王女様が強く強く希望されたからではないですか!!!」」」

また三人が声を揃えて答えた。王妃様から王女様に呼び方変わっちゃってるよ。



ワタシこと、オフィリア・フォン・ルシーア(20)はルシーア帝国の第一王女。

ミルクティーブラウンの紙、薄い蒼の瞳を持つ美しい王女、国民からは帝国に伝わる妖精伝説から妖精王女と呼ばれていた。

確かに、鏡をみて納得である。人形のような美しい容姿。彼女の記憶を辿れば誰彼と分け隔てなく接していたことが思い出される。


「心配させてごめんなさいね。なにか少し思い出してきたわ。完全ではないけど。」

私は体を起こすと三人の方を向いていった。


「それは、そうですな。半年も昏睡だったのです。混乱もしておりましょう。まだゆっくりとお過ごしください。」

オランドがそういいながら、もう一度脈をとり、うんうんとうなずきながら下がった。

その後はドアの側にマリーだけが控えて、ワタシはまた横になるよう則された。



とにかく、記憶を呼び覚まさなくては。

目を閉じてワタシの記憶を遡っていった。


異世界転生って前の人生終わって生まれ変わるんだよね?

え?私死んじゃったの?

真紀子の記憶って前世ってやつ?

でも。オフィリアの記憶の中には私の面影無いよ?

じゃあ、あれかな、転移?勇者召喚とかいうやつ。

私召喚されたのかな?魂だけ?誰に?

でも思い起こせば「助けて」って声が聞こえてこっち側に引っ張られたような感じがある。

じゃああっちの私の中にオフィリア居るのかな?

それはそれで大変そう、妖精王女が日本の庶民の生活できそうにないもの。

みんなどうしてるかな?子供達はちゃんと食べてるかな?学校行ってるかな?

忠夫さん、心配しているよね。

ただおさーーーーーーーーーーーん、忠夫さんに会いたいよーーーーー


一気にやって来たホームシック。

しかし、一方でオフィリアの記憶を冷静に見返す。

その中に元の世界に帰るヒントがあるんじゃないかと。

こっちに来た理由がわかるんじゃないかと。


で、ありました。ヒント。

なるほど、なんか二時間ドラマみたい。

でも一刻も早く元の世界に帰りたい私は謎解きとかすっ飛ばして答えまで最短でたどり着く所存!




そこは、王宮の貴族牢

中には王の元婚約者だった公爵令嬢が座っている。

私はマリーだけを連れて翌朝早くやってきた。


「ごきげんよう、フランシーヌ様。お聞きしたいことがあるのですがよろしくて?」

私は精一杯王女らしい口調で声をかける。

「オフィリア様、ご無事だったんですね。なんなりと。」

その女性は長い牢暮らしでやつれてはいたけど、麗しの顔立ちは見惚れるほど。

彼女はワタシの毒殺(未遂)の嫌疑によって突然捕縛され貴族牢に習慣されていた。

帝国の騎士による取り調べは長時間に渡り、彼女の無実の訴えは聞いてもらえていなかった。


「フランシーヌ様、単刀直入に伺いますわ。陛下とまだ恋仲ですの?」

私は鉄格子をはさんだ彼女の前の椅子に腰掛け、静かな声で話しかけた。

「まず、訂正をよろしいですか?」

彼女も冷静な声で軽く挙手して発言の許可を求める。

「もちろん。どうぞ」

「では、王妃様。わたくしと陛下の間に今もかつても、恋仲という状況がございません。

どちらかといえば、私たちは政略結婚する貴族の関係性の中でも冷え冷えとしていた方だと

思っております。」

「では、あなたは陛下に恋い焦がれて、ワタシに嫉妬したりはしたことがないと?」

「もちろんです。当時我が父も戦争犯罪人となっている状況で、婚約破棄も当然と納得しておりましたし、

家門の女子供は見逃していただけるということに感謝しておりました。

誓って王妃様に怨み辛みの感情を持ったことはございませんし、

陛下に恋慕したこともございません。」


そうよねー、彼女の父親公爵も先王や王太子と共に戦争推進派として処刑されている。


ワタシが第三王子と結婚するにあたって、一門の女子供は存命を父皇帝に嘆願した。

それによってフランシーヌは命を助けられ、縮小された領地の隅に引き込もっていた。

納得し、彼女を牢から出してワタシの離宮に保護することにした。



また別の貴族牢

先ほどの牢より少し広めのそこに、金髪碧眼のほっそりとした見目麗しい

現王カルロス3世がひどく疲れた様子でそこにいた。


「リア!意識が戻ったのか!!」

立ち上がると牢の鉄格子までかけよってくる。

「カルロス様!つい昨日意識が戻りました。迎えに来るのが遅れてごめんなさい。」

私は急いで門兵に牢を開けさせると中に入っていく。


「リア!そんなよそよそしい!!ああ、あなたまで私を疑っているのか」

王は手で顔を覆うと力なく項垂れた。


実はカルロスとオフィリアは相思相愛だった。

サルバニア王国の王はそれこそ和平のため、第三王子を私と婚姻させたかったため幼少から度々彼を連れて帝国を訪れていた。


それには王国の地政学的状況がある。

サルバニア王国は大陸の真ん中にあり、北と西側(例の不凍港のある唯一の港がある湾)を帝国に、

東と南を別の国に隣接している。

しかも商業ルートは各国から直接帝国に引かれているため、商業の要所としても利用できない。

各国からは緩衝地帯ともならない。


王国はそんな場所にある平野が広がる農業国であった。

王国は西側の湾を得ることで南の国と帝国の商業ルートを分断することができる。

関税も払わず、豊かな食料を大陸外に輸出できる。

ただし、帝国との関係が悪化することは当然であるが。


そんな状況で、先王は自分の王子と帝国の王女の婚姻によって帝国の後援を得て

東と南の隣国を牽制しようとしていた。

よくある定番の外交戦略である。

そんな訳でカルロスとオフィリアは幼馴染みとして仲良く幼少期をすごした。

お互い初恋同士である。


婚約も間近という時に、待ったがかかりカルロスは王国の公爵令嬢と婚約してしまう。

初恋の君の心変わりに嘆き悲しんだ王女をみて、帝国に王国に対して悪感情を持つ者が増えていった。

父皇帝や家族だけでなく、家臣も国民も。

すると突然の港湾略取を目論んだ先制攻撃である。

帝国は王国に対し完膚なき反撃をする。王国はあっという間の敗戦決定であった。


私は王の手首に付いている魔封じの枷を外した。


「カルロス様、すぐに転移魔法でワタシの離宮へ飛んでください。マリーも。

あと、兵の記憶を消してください。急いで」


言われるまま、魔法を駆使して離宮に三人は転移した。


離宮のオフィリアの部屋には、公爵令嬢のフランシーヌとオランド医師、執事のセバスチャンが待っていた。


「さて、まずは申し訳ないけれでカルロス様ここに結界を張ってください。聞かれたくない話があります。」

両手を広げると魔方陣が表れ、部屋全体に広がった。

魔法の世界である。便利。

オフィリアはそんなに魔法が使えるわけではないが、カルロスは王になる前、

魔術騎士団に入っていたくらい魔法に長けていた。


「手短にお話しますね。マリーには先に伝えてしまったから重複になってしまうけど許してね。」

回りの人の顔を見回して言った。


「ワタシはオフィリアではありません。伊東真紀子というこの世界ではないところからオフィリアに魂が呼ばれてやってきました。」


え?

と戸惑う一同を気にせず話続ける。


「王国と帝国を仲たがいさせて、漁夫の利を得ようとしている勢力がいます。

私はその排除をするために呼ばれました。どうか力を貸してください。」


「リア!!!」

カルロスはワタシの目を見つめて呪文を唱える。

すると、ワタシの見た目が黒髪黒目のぽっちゃりおばちゃん真紀子になった。


「なんと!これは魔術真実の目!申していることは本当なのだな!」

オランド医師が声を挙げる。

「だから、牢で会った時の様子がおかしかったのか!」

カルロスが言う。


そこで彼らにことの顛末を語った。




「お母さん!」

帝国の端深い森の中にそびえ立つ堅牢な塔の中、

黒髪黒目の少女が魔封じの枷を手足につけられて椅子に座っていた。

「久美!大丈夫?」

駆け寄ると急ぎ枷をはずす。

帝国の不凍港奪取のため人間兵器として一人戦地に送られた少女は、私の中学生の娘だった。


この世界は久美が好んでいた小説『不条理な世界全てを燃やし尽くす紅蓮の炎』という

中二が好みそうな題名の世界だった。

帝国主義の末、国民は疲弊していた。

親の愛を知らないサイコパスな紅蓮の炎を操る少女が表れて、王国も帝国も全土を灰にするという。

小説で読んでいる時はよかったが、いざその少女に転生したと知るや、

帝国を手中に納めるまで全て燃やして殺し続けるなんてできないと恐れ戦いたと。

孤児であったけど孤児院の仲間は家族で助け合い、シスターは慈しみ育ててくれた。

盗み、殺生はいけないとシスターは常にいっていた。

日本でもお母さんが、自分の命も他の命も等しく尊いといっていた。

人殺しなんてできないよ、助けておかーさーん。


しかし無情にも力に目をつけられ、孤児院の子供とシスターを人質にされ脅されて

戦地に向かわされてしまった。

久美は、実力の1%位の爆裂で古い倉庫をぶち飛ばすと、帝国軍に投降した。

久美の爆裂の影響を受けたくない王国軍は境界に陣を張って火の手が上がるのを見ているだけなのだから。


「怖かった」

泣きながらすがり付く娘を抱きしめ、人んち子に何してくれてんじゃバカ王国軍!と憤る。


「そもそも帝国の妖精王女が王国の王子と結婚しなかったことが物語の一因なんだよ。

だから、王女に頑張ってもらおうと思ったの。」


もうすぐ婚約という時に、横やりをいれていたのは南の隣国だった。

帝国との短い境界線を王国に変わってもらったら、戦力の低い王国の方が自国に有利だからと、

間者を使って働きかけていたようだ。

もちろんお約束の魅了魔法も使って。

つまりハニートラップに国の要人も王族も引っ掛かったのだと。


その結果、爆裂少女が全てを任せたが、久美は戦わず、あっという間の敗戦である。

帝国につれていかれ、塔に監禁されながら物語を思いだし、打開策を考えていた。

小説でオフィリアと少女は二人で一度邂逅する。

もうここしかない!とその機会に、オフィリアに自分の境遇を打ち明けた。


自分は日本というここではない世界の人間で、ここは物語の世界。

王国も帝国も自分の手によって燃やし続けられ破滅してしまう。

それの糸を引いてるのは南の隣国なのだと。

心優しいオフィリアは父皇帝に王国の存続と第三王子の存命を嘆願し、婚姻する。

そして帝国の秘術を用いて、魂呼びを行った。

自分の魂を贄として。

そして、この状況を打破すべく召喚されたのが、母真紀子である。

なぜなら、王女のオフィリアも久美も幼かった。知恵がない。

こんな話を回りにしても信じてもらえないと思っていた。

どうしよう、どうしよう・・・

そんな時久美が漏らした一言

「お母さんが居てくれたら。」

「お母さんとは久美さんのお母様ですの?」

「そう。お母さんに会いたいよ、おかあさーん。」

現実逃避である。

しかしオフィリアは違う。

爆裂魔法を使う希代の魔術師で異世界からきた少女が言うのである。

きっとそこに突破口があるはずだと思い至る。

「わかりました、ワタクシが必ずやお母様をお呼びいたします。

ですのでどうぞ王国と帝国を平和にお導きください。」


そして、オフィリアは帝国の禁忌秘匿の場所から禁術の術式を得る。

魂呼びの薬を作り初夜の翌日使用したのである。

なぜ翌朝かというと、初夜の夜カルロスが訪れなかったから。

オフィリアはカルロスが元恋人に操を立てていると思い込み、禁術の秘薬を飲み干すのである。

カルロスが来てもそれを思い出として薬と飲む予定だったのだけど。

気持ちがね、違う、やけくそである。


カルロスは初夜の晩、帝国統治軍総帥(当時は全権大使)のマッカランとの

会談の席で薬を盛られ寝てしまった。

マッカランは軍ナンバー2だったが、野心家である。

王国を帝国の属州とし南、東と攻めて帝国の大陸統一を夢見ていた。

なのでカルロスとオフィリアの婚姻による和平など端から必要としていなかったのである。

間違って王家の血が入った子供でもできたら大変と初夜を邪魔したのだ。


魂が呼ばれた異世界に呼ばれた真紀子、大事なことに気づく。

「久美はいつどうやってこちらの世界に来たの?

お母さん覚えている限り久美は久美として暮らしていたよ。病気も事故もしてない。」

「それはね、あの喧嘩した晩・・・」


ある晩、久美と真紀子は母娘ケンカをした。

中間テストが近いのに、勉強していると思っていた久美が部屋でノートに幾何学模様の図面を書いていた。

いたずら書きをしてサボっているのかと、真紀子はガツンと娘にいってやった。

「あんた、テストが近いのになにやってんの!」

ノートを取り上げて叱ると、久美は憤怒の表情でノートを取り返し怒鳴った。

「うるさいな、クソババー。勝手に部屋に入ってくるな!」

真紀子を部屋から追い出すと、親指をカッターで傷つけノートの図面に血を垂らす。

「我が身を贄として、異世界の扉よ開けーーー!!」

実に中二である。中二病拗らせ厨である。

小説に載っていた挿し絵の術式を模写し、儀式の真似をする。

思い込みの激しい年頃なのである。

しかし、たまたま開いてしまった異世界の扉、そこにいた少女と入れ替わってしまった。

そして、扉は閉じる。

「そんなたまたまある?え?じゃあうちにいたのはこちら側の子?」


次の日なかなか起きてこない娘の部屋へ行き無理矢理起こしたところで

真紀子の記憶が終わっている。

きっとあの時に召喚されたんだろう。



私はあの後、カルロスに薬を盛った罪でマッカランを捕縛し全権を自身に一時的に掌握。

カルロスには王として帝国軍を指揮できるように代理権を与え、王国内の間者を駆逐させている。

急ぎ帝国に戻り皇帝に戦争の影に南の隣国ありとマッカランの身柄と共に告げた。

どうせマッカランもハニトラにかかってんじゃない?と魔術師団に自白魔法をかけさせたら大当たり。

帝国内にも蔓延っていた南の間者を一掃できた。



王国と帝国の真の和平会談が行われ、賠償金の支払いが免除されることになった。

その分南の隣国から取り立てるからね。


帝国軍の引き締めも再度行われ、各国の自治に不介入、内政不干渉を宣言した。

ここまでしたらお役御免?だよね。

帝国に戻る際、皇帝にはことの顛末を語った。

カルロスや三人の臣下からの進言もあり、魔術師団長の真実の目を持って証明した。

見た目はオフィリアだが、真紀子である。娘の仕出かした責任は親が取るものだと、謝罪に謝罪を重ねた。

平伏である。打ち首とか痛い思いはしたくない。謝罪で許していただきたい。

しかし、久美が攻撃せず投降したことで帝国が破滅する未来が変わったのだと、

帝国側が理解してくれた。

そして、贄となったオフィリアと孤児の少女と私達が元に戻るよう手配してくれた。

禁術を用いて。魔術師団全面協力により元の世界へ還る。




光に包まれ、目を開けると白い部屋だった。

ピピっピピっ

電子音がする。

身体中に管や線がついている。病院のようだ。

ふいに手を握られ、そこには丸い顔に涙を浮かべた懐かしい顔があった。

「忠夫さん、会いたかった。」

「真紀子、まきこ、まきこー良かった。よく戻って来てくれたー。」

忠夫さんは泣き笑いですがり付いていた。

「心配かけてごめんね。あとあの日のケンカもごめんなさい。」

私も泣き笑いで言った。




あの朝、いつまでも起きてこない久美に苛立っていた。

「ねえ、お父さん。ちょっと久美にいってよ。テスト前に勉強もせず変な絵描いて。

注意すればクソババーって!」

「クソババーはだめだなー女の子がクソはいけないよなー」

「そこじゃない!もう。」

のんびりコーヒーを飲みながら特に共感した様子もなく、いつも通り。

ちょっととぼけた感じ。いつもはふふふって笑っちゃうんだけど、その時はカッカしてるから八つ当たり。

怒鳴っちゃって。

ドスドス足音立てて、久美の部屋の扉開けて中入っていって、布団めくった瞬間、

猛烈な頭痛がして私はそのまま倒れたらしい。

「真紀子、おい真紀子、大丈夫か、しっかりしろ、真紀子ー」


必死で声をかけて、息子もやって来て救急車で病院に運んで。

軽い脳梗塞ということで検査から部屋に帰ってきた直後、意識が戻ったらしい。

半日くらいの時間経過だった。

「智史と久美は?」

「二人とも家にいると思う。今日は学校休ませた。」

「久美はどう?変わりない?」

「ああ、お母さんゴメンって泣いてたよ。夕べのこと後悔してるみたい。」


ああ、そうなんだ。

行ったルートが違うから、久美はあの直前に戻れたんだ。無事で良かった。


「大丈夫か?処置が早かったから後遺症も心配ないだろうって先生がいってたけど。」

「大丈夫よ。忠夫さん、ただおさん会いたかった。」

「どうしたの?あのとき、ふざけないでも久美の部屋に自分が行けば良かったと後悔していた。

俺を置いていかないでくれよ」


ごめんね、忠夫さん。大好きよ。

黒髪に白いのが混じっても。知り合った時から20キロも太っても。

ワイシャツの首のとこに臭いシミがつくようになっても。

誰よりも私を愛してくれる私の王子様は忠夫さんだよ。


ごめんね、私も白髪増えてきて染めてるの。結婚してから15キロ太っちゃって。二の腕もたくましくなっちゃって。

今後子供たちも大きくなって、また二人暮らしになってもずっと一緒にいてね。



王に愛されてないと拗らせてる王妃と初恋の王妃を愛してやまない王の溺愛はまた別の話



《完》


お読みくださいましてありがとうございました。

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