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嫦娥は悪女を夢見るか  作者: 皆見アリー
番外編

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番外編3  ヤンと幼馴染と日常と5

困ったことに話し足りないと言った彼らが子工房にもついてくることになった。

器具を台車に乗せて、子工房に行く道すがら彼らは屋台で色々と買い込むといって市場に揃っていってしまった。

先に工房に戻って、箱を開け、そこにあった組み立て手順書に基づいて器具を組み立てることにした。

金属でできたその器具を2人では組み立てきれず、幼馴染が来てくれるのを待つことになった。

すっかり宴会気分でやってきた彼らは、「なんだなんだ」と言いながら、1人が説明書を読み、1人が部品を確認し、1人が部品を手渡し、1人が部品を押さえ、1人が結合部に油を塗り、1人が部品をはめ、1人がネジを回し、1人が確認すると言った形で組み立てて行った。

人手が8人の男性、しかも職人で幼馴染となれば、阿吽の呼吸であっという間に仕上がった。

仕上がった器具は一抱えくらいの大きさで、作業台にドンとその場所を陣取った。

仕上がった器具を見て全員で首を傾げた。

「何これ?」

「研磨機」

丁寧に箱に入れてあった説明書にはどこにガラスを置き、どのようにヤスリをかける、どのように磨き上げるかと書いてあった。

「ここにガラスを置いて…」

「ここを回すと磨きができるんだ」

「へぇ…磨ける径はどんなもん?」

「径は調整できるみたいだぞ」

「ああ、この部分で固定するのか!?」

「ヤスリや磨き布の交換頻度って?」

「て言うか、どっから手に入れたんだよ!!」

おもしれーと言いながらヤンよりも先に研磨機を触り動かしてみる彼らは羨ましそうにヤンを見やった。

「いや…依頼があって…」

誤魔化すヤンに幼馴染たちは一様に納得したようだった。

「ああ、トラン兄さんは先見の明がすげぇな」

「新規技術にも投資できる判断もな」

「考え方も柔軟なんだよ」

「俺たちも見習いたいよなぁ」

「小さいとは言え二十歳ちょっとであの人工房長やってんだぞ」

「資金繰りも納品計画も全部自分でやってるんだろ」

「次期工房長って兄さんじゃね?」

それから幼馴染たちはヤンに向かって「しっかりしろよ、お前も」と言いたげな視線を送ってきた。


それからは思い思いにアレコレ話し、戯れあった。

敷布を床に敷き、その上に食べ物を並べ、飲み物を注ぎ合い、話は終わらなかった。

リァンは距離をとって彼らの様子を見ていた。

ヤンの雰囲気は自分がいる時とも、家族がいる時とも違って、彼らにはすっかり気を許している様子だった。

じゃれあって、心から笑って、時にはケンカして、仲直りしてって、同じ釜の飯を食った誰よりも信頼できる仲間なのだろう。

この先、ヤンが影の任務で傷ついた時には真っ先に飛んできて、泣きながら心配し、何も言えないヤンに怒るのは彼らに違いない。


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